歯列矯正治療で使用される器具には、どのようなものがあるのでしょうか? 本記事では、歯列矯正治療で使用される器具について、以下の点を中心にご紹介します!
- マウスピース型矯正とワイヤー矯正について
- ブラケット、アーチワイヤーとは
- マルチブラケットとは
歯列矯正治療で使用される器具について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
矯正装置の種類について
- そもそもどうやって歯を動かすのですか?
- 歯列矯正治療では、ワイヤーやマウスピースなどを用いて、少しずつ歯を動かし歯並びを整えていきます。 歯の周囲には歯を支えるための骨があり、その骨と歯根の間には歯根膜という薄い膜があります。 歯根膜は、噛む力が加わるときに歯への衝撃を和らげる役割を担うため、矯正装置により歯に力が加わると、この力が歯根膜に伝わり、歯が動く側の歯根膜は縮まり、歯が動くのと反対側の歯根膜が引き伸ばされます。 歯根膜は、一定の厚さを保つ性質があるため、歯根膜の厚さが変動すると、歯根膜に接している骨に働きかけます。 これにより、縮んだ歯根膜は元の厚さに伸びようとするため、骨を溶かす細胞の働きが活発になり、一方で伸びた歯根膜は元の厚さに縮まろうとするため、骨を作る細胞の働きが活発になります。 両者の細胞の働きによって、歯根膜が元の厚さに戻り、この仕組みが繰り返されることで、歯が動いていきます。 また、歯列矯正治療によって歯を動かすときは、水平移動・傾斜移動・回転・引っ込める(圧下移動)・引っ張り出す(廷出)どの手法をとります。
- マウスピース型矯正とはなんですか?
- マウスピース型矯正は、従来のワイヤー矯正で使用されてきたワイヤーやプラケットを使わずに、透明なマウスピース型の装置を装着して歯を動かしていく矯正方法です。 マウスピースが透明であるため、目立たず、矯正中であることを周りから気づかれにくいという特徴があります。 またマウスピース型矯正では、使用される矯正装置にはいくつか種類があり、それぞれ製作方法や装着したときの感覚、適応できる症例などが異なります。 一般的にはアライナーといい、下記の名称は商品名です。
- インビザライン: マウスピース型矯正に用いられる矯正装置の1つであるインビザラインは、アメリカで開発され、日本でも多く使用されています。 インビザラインは、治療前に歯の移動を三次元的にシミュレーションし、その移動計画に沿って、歯を少しずつ移動させた状態のマウスピースを初診時にすべて製作します。 そしてマウスピースを1日20時間以上装着し、約1週間ごとにマウスピースを交換することで、歯並びを調整していきます。
- エシックス: エシックスは、治療前にとった歯型からマウスピースを製作し、そこに細工を手作業で加えて調整していく矯正装置です。 エシックスは、歯並びの状態によってゴムなどを併用して矯正していく必要があります。
- クリアアライナー: クリアアライナーは、模型の歯型をコンピュータで測定し、歯を少し移動させた状態のマウスピースを製作したのち、その後毎回歯型をとって現状にあったマウスピースを製作します。 クリアアライナーは、1〜3週間ごとに交換していき、矯正中の痛みはほとんどありませんが、現在は供給が停止されています。
- アソアライナー: クリアアライナーの供給停止に伴って開発されたのが、アソアライナーです。 アソアライナーは、マウスピースの厚みなどが改良されたため、クリアアライナーよりも正確に歯を移動させられる矯正装置となっています。
- ワイヤー矯正とはなんですか?
- ワイヤー矯正とは、歯にブラケットという器具を装着してそこにワイヤーを通し、ワイヤーを調節することで歯を移動させていく矯正方法です。 ワイヤー矯正には、表側矯正、裏側(舌側)矯正、ハーフリンガル矯正があります。
- 表側矯正: 唇側矯正とも呼ばれ、歯の表側に矯正装置を装着します。 表側矯正は、他の矯正方法と比べて比較的費用が安い、滑舌への影響が少ないなどのメリットがある一方、矯正装置が目立つ、矯正装置が頬などにあたり口内炎ができるなどのデメリットがあります。
- 舌側矯正(裏側矯正): 歯の裏側に矯正装置を装着します。 歯の裏側に矯正装置を装着するため目立ちにくいというメリットがある一方、滑舌に影響が出やすい、治療期間が長くなることがあるなどのデメリットがあります。
- ハーフリンガル矯正: 上の歯を舌側矯正(裏側矯正)、下の歯を表側矯正で行う矯正方法です。 ハーフリンガル矯正は、上の歯には矯正装置が裏側に装着するため目立ちにくいというメリットがある一方、歯の見え方や噛み合わせの状態によっては対応できないというデメリットがあります。
マウスピース型矯正とは
- マウスピース型矯正の特徴を教えてください
- マウスピース型矯正は、透明のマウスピースを装着するため、矯正装置が目立たないというメリットがあります。 また、食事中は外せるため普段通りに食事ができ、歯磨きも通常通りできるため、むし歯や歯周病になるリスクが低いと言われています。 さらに、ワイヤー矯正のような金属は使用されないため金属アレルギーの心配はなく、尖った矯正装置も装着しないため、マウスピースを装着したままスポーツしても問題ないとされています。 しかし、マウスピースは取り外しができるものの、1日20時間以上装着しなければ効果が得られないとされており、本人の装着努力によって矯正治療の効果が左右されてしまうというデメリットもあります。 また、マウスピース型矯正では治療できない症例もあり、自身の歯並びの状態がマウスピース型矯正可能かどうか、歯科医師に相談する必要があります。
- マウスピース型矯正型にかかる費用はどのくらいですか?
- マウスピース型矯正における矯正治療費の相場は、ブランドや種類によって異なりますが、一般的には約20万円〜100万円程度と言われています。 その他、カウンセリング料や診察料、精密検査料、装置調整料、保定装置料、保定観察料などがあり、それぞれ歯科医院や地域によって異なります。 また、計画通りに歯が動かなかったり、矯正途中でむし歯治療をしたりすると、マウスピースを製作し直す必要があるため、追加費用が発生することもあります。
ワイヤー矯正とは
- ブラケットやアーチワイヤーとはなんですか?
- ブラケットやアーチワイヤーとは、ワイヤー矯正において用いられる矯正装置のことであり、歯に直接とりつける四角い装置をブラケット、その中に通す針金をアーチワイヤーと呼びます。 ブラケットは、1本1本の歯に矯正用接着剤でとりつけます。 ブラケットには、金属で作られる耐久性の高い銀色のメタルブラケットや、金属アレルギーに配慮したチタン製のブラケット、目立ちにくさを重視したセラミックやブラスチックのブラケットなどがあります。 ブラケットには、スロットと呼ばれるアーチワイヤーを通すレールがあり、ここにアーチワイヤーを通して歯に力を加えます。 アーチワイヤーは、矯正中の段階に応じて使用するワイヤーが異なります。 矯正初期では、超弾性と形状記憶の特徴を持つニッケルチタンワイヤーが使用されます。 矯正初期はまだ歯が動く準備が整っていないため、あまり強い力は加えず、非常に柔らかいニッケルチタンワイヤーを使い、弱い力を少しずつ加えていきます。 矯正中期になると、歯の隙間を埋めるために、ワイヤーがたわまないよう、ある程度の硬さがあるワイヤーが必要とされ、ステンレス製のステンレススチールワイヤーを使用します。 矯正終盤では、正しい歯並びとなった歯を固定しつつ、細かな位置の調整が必要となるため、硬さと弾性を持つβチタンワイヤーが使用されます。 βチタンワイヤーは、ニッケルチタンワイヤーとステンレススチールワイヤーの中間の硬さと弾性を持ち、複雑な形に曲げることもできます。
- マルチブラケット装置とはなんですか?
- マルチブラケット装置とは、歯の表面にブラケットを装着し、その中にアーチワイヤーを通して歯を移動させていく矯正装置のことです。 マルチブラケット装置を装着するときは、まず研磨剤を使って歯をクリーニングし、表面の汚れを落とします。次に、エッチング剤を塗って歯の表面を酸処理することで、ブラケットの接着力を高めます。 そして、乾燥した1本1本の歯にブラケットを装着させ、接着後は接着剤が硬化するまで5分程度待ちます。 このブラケットにアーチワイヤーを通して締めていくことで、歯に力を加え、歯並びを整えていきます。
- リンガルブラケット装置とはなんですか?
- リンガルブラケット装置とは、歯の裏側(舌側)に矯正装置をつけて歯並びを整える矯正装置のことです。 歯の表側に矯正装置をとりつける矯正方法であるブラケットタイプに比べて、リンガルブラケット装置は矯正装置が目立ちにくく、治療中もあまり見た目を気にせず生活できる点がメリットです。 また、無意識に舌で歯を押す癖によって歯並びが悪くなることがあると言われていますが、リンガルブラケット治療中は、装置が舌側についているため、あまり舌で歯を押さずに治療を進められるとされています。 さらに、装置が目立たないという点ではマウスピース型矯正も同じメリットがありますが、マウスピース型矯正の場合は歯並びが著しく悪い場合などは対応が難しいと言われています。 そのため、リンガルブラケット装置は、難易度の高い症例の場合でも目立たずに矯正できるという点にも、メリットがあると言えます。
- ワイヤー矯正にかかる費用はどのくらいですか?
- ワイヤー矯正における費用は、どの矯正方法を選ぶか、どの種類のワイヤーで矯正するかなどによって異なります。 一般的には、表側矯正の費用相場は、60万円〜130万円前後、舌側矯正(裏側矯正)は100万円〜170万円前後、ハーフリンガル矯正は80万円〜150万円前後とされています。 カウンセリング料や診察料、精密検査料、装置調整料、保定装置料、保定観察料などは、歯科医院や地域によって異なるため、自身が検討する歯科医院ではどのくらいの費用がかかるか事前に確認することが重要です。
編集部まとめ
まここまで、歯列矯正治療で使用される器具についてお伝えしてきました。 歯列矯正治療で使用される器具の要点をまとめると、以下の通りです。
- マウスピース型矯正は透明なマウスピースを装着して歯を動かす矯正方法であり、ワイヤー矯正はブラケットにワイヤーを通し調節して歯を動かす矯正方法である
- ブラケットは歯にとりつける四角い装置であり、その中に通す針金がアーチワイヤーである
- マルチブラケット装置とは、歯の表面にブラケットを装着し、その中にアーチワイヤーを通して歯を移動させる矯正装置のことである
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。