歯列矯正装置をどうしても取り外したい状況の際に「一時的な取り外しが可能なのか」が気になる方も多いでしょう。
結論からいうと歯列矯正装置の一時的な取り外しは可能です。
しかし、取り外すことにより歯列矯正治療に影響が出る可能性があるため、歯列矯正専門の医師に相談のうえ、取り外しを行うことがおすすめです。
本記事では、歯列矯正装置の一時的な取り外しの可否・ワイヤー矯正を外す際の注意点などを解説します。
「歯列矯正治療中だがイベントを控えている」「一時的な取り外しができる矯正装置を選びたい」という方は、この記事を参考にしてください。
歯列矯正装置は一時的に取り外しができる?
歯列矯正装置は、一時的に取り外すことが可能です。ただし、装置の種類によって取り外しの際に注意点があります。
例えば、マウスピース型矯正の場合は自分で装着を行うため、一時的な取り外しは容易です。 しかし、ワイヤー矯正の場合は計画的に取り外しを行わないと歯並びに影響が出る可能性があるでしょう。
ワイヤー矯正の場合
ワイヤー矯正の場合は、一時的な取り外しが可能です。
しかし、取り外すだけで費用がかかったり後戻り防止のマウスピース型が必要になったりします。
基本的に、ワイヤー矯正は矯正治療期間中は「つけっぱなし」にするものです。一時的に取り外しを行うことを想定していないため、どうしても費用や手間がかかります。
取り外しが必要な理由が前もってわかっている場合は、それに合わせて矯正治療の計画を立てるとよいでしょう。
ワイヤー矯正は噛み合わせの改善に大きく貢献できるメリットがありますが、むし歯になりやすいデメリットもあります。費用相場も80~120万円(税込)と高額のため、開始時期の計画は慎重に立てましょう。
ただし、ワイヤー矯正の中でも「インシグニア」のような完全オーダーメイドの装置だと話は変わってきます。 インシグニアは個人に合わせて作られるのが特徴で、無駄な動きを少なく矯正治療を行えるメリットがありますが、代わりに一時的な取り外しが難しいというデメリットがあります。
一時的な取り外しによって、計画通りの矯正ができなくなってしまう事態は避けたいものです。 ワイヤー矯正を行う際は、事前に「一時的な取り外しができるものなのか」を確認するようにしましょう。
なお、インシグニアの費用相場は80~90万円程度とされています。検討される方は参考にしてみてください。
マウスピース型矯正の場合
マウスピース型矯正の場合は、一時的な取り外しが容易にできます。そもそも自分で取り外しを行う装置のためです。
1日20時間程度の装着が必要ですが、取り外したい場合は自由に取り外しできるという他にはないメリットがあります。
しかし、装着していない期間は「矯正していない」ため歯の動きが止まっている状態です。さらに、後戻りするリスクもあるでしょう。
また、マウスピース型矯正は歯の動きに合わせてマウスピース型を取り替えるシステムです。一時的な取り外しにより、予定していたマウスピース型が合わない可能性があります。
このようにマウスピース型矯正は、容易に取り外しができるからといって自分の判断で装着時間を減らしてしまうと、予定通りに治療を進められないデメリットがあります。
一時的な取り外しを行う際は、担当の歯科医師に相談のうえ行うようにしましょう。 なおマウスピース型矯正の費用相場は30~100万円程度です。検討される方は参考にしてみてください。
ワイヤー矯正の取り外しの特徴
ワイヤー矯正を一時的に取り外す際の特徴は、次の3つが挙げられます。
- 取り外す際に費用がかかる
- 後戻り防止用マウスピースの装着が必要
- 早めに再装着する必要がある
先ほど述べたようにワイヤー矯正装置の一時的な取り外しは、余分な費用がかかったり歯科医師に相談する必要があったりするため計画的に行う必要があります。 しかしながら、どうしても外さなければならない場面が訪れた際に、対応できないと困ってしまうためワイヤー矯正の一時的な取り外しの特徴を把握しておきましょう。
取り外す際に費用がかかる
ワイヤー矯正装置を一時的に取り外す際は、費用がかかります。ワイヤー矯正装置を取り外す際に手間がかかるためです。
ワイヤー矯正は、動かしたい歯の1本1本にブラケットと呼ばれるワイヤーを通す装置を取り付けます。
1本1本取り付けるため手間がかかりますが、取り外す際も同じように手間がかかるでしょう。
また一時的に取り外すと、再度取り付ける作業が必要になります。その分も含めて、33,000〜55,000円(税込)程度の費用がかかるでしょう。
後戻り防止用マウスピース型の装着が必要
ワイヤー矯正装置の一時的な取り外しは、後戻り防止用マウスピース型の装着が必要になります。ワイヤー矯正装置を一時的に取り外すと、歯並びが後戻りを始めてしまうためです。
実際に動かした歯は、元の位置に戻ろうとする力がかかります。歯列矯正治療を行う際は、矯正装置の取り外し後に「リテーナー(保定装置)」を装着することが一般的です。
このような後戻りを防ぐために、後戻り防止用マウスピース型の装着が必要になるでしょう。
一時的な取り外しや後戻り防止用マウスピース型の作成には時間がかかるため、担当の歯科医師に早めに相談することが大切です。
早めに再装着する必要がある
ワイヤー矯正装置を一時的に取り外した際は、早めに装着する必要があります。取り外しの期間は歯の動きが止まっているためです。
矯正治療では理想の歯並びにするため、矯正装置により歯を強制的に動かしています。矯正装置を取り外している状態では、歯は動いてくれません。
取り外しの期間は矯正できていない状態になるため、予定していた矯正治療期間が伸びてしまうでしょう。 一時的な取り外しを行う際は、担当の歯科医師に相談のうえ計画的に行うことが大切です。
ワイヤー矯正の一時的な取り外しを行いたい状況は?
ワイヤー矯正の一時的な取り外しを行いたい状況は、次のようなイベントが挙げられます。
- 結婚式
- 卒業式・入学式
- 成人式
ワイヤー矯正は、どうしても見た目が目立ってしまいます。そのことが理由で矯正治療を躊躇する方もいることでしょう。
特に、結婚式は多くの方に見られるイベントのため、審美性が気になる方が多いです。また、卒業式・入学式では記念に写真撮影をすることが多いため自身の見た目が気になります。
さらに、成人式は多くの友人と再会する可能性があるため、その際だけでも矯正装置を外したいと思う方が多いでしょう。
上記で挙げたイベントはすべて事前に予定を立てられるイベントです。イベントの日時に合わせて取り外し期間の調整が可能だといえます。
矯正治療の担当の歯科医師に相談のうえ、ワイヤー矯正装置の取り外しは計画的に行いましょう。
結婚式
一時的にワイヤー矯正装置を外したいと考えるイベントの代表格は「結婚式」です。
結婚式は多くの方に見られるイベントであり、来場者と会話したり写真撮影をしたりする機会が多く、どうしても口の中を見られてしまいます。
「結婚式くらいはワイヤー矯正装置を外したい」と思う方が多いでしょう。
結婚式で矯正装置を一時的に取り外す際の注意点は、取り外しの期間です。結婚式後に新婚旅行を計画していると、その間は矯正装置の再装着が難しい場合があります。
そのような場合は、後戻り防止用マウスピース型を作成し、矯正治療に影響が出ないように心がけましょう。
卒業式・入学式
卒業式・入学式では、ワイヤー矯正装置を外したいと考える方が多いでしょう。記念撮影があり、見られる機会が多いためです。
また、式当日だけではなく、卒業アルバムの撮影時も気になることでしょう。
卒業式・入学式は、基本的に1日で終わるイベントです。卒業アルバムの撮影も何日もかかるものではないため、一時的な取り外しに大きく影響はしないでしょう。
いずれも計画的に行えるイベントのため、担当の歯科医師に相談して事前に取り外しの計画を立てるとよいでしょう。
成人式
ワイヤー矯正を一時的に外したいイベントとして、成人式を忘れてはいけません。成人式は一生に一度しかないイベントで、多くの友人と再会できる機会です。 普段から交流のある友人の場合はそれほど気にならないと思いますが、久しぶりに再会する友人の場合は自身の見た目が気になるでしょう。
「上下の前歯12本分だけ取り外す」「下はワイヤーだけ・上はすべて外す」といった、すべての装置は外さなくても、できるだけ目立ちにくくしたい方が多いようです。
成人式は、式当日も前撮り撮影も1日で終わることが多いため、ワイヤー矯正装置を取り外しても影響を受けにくいでしょう。 また、成人式は予定を立てやすいイベントのため、矯正治療期間を成人式に合わせる方法もあります。
ワイヤー矯正の取り外しにかかる費用
ワイヤー矯正装置を一時的に取り外す際は、費用が発生します。考えられる費用は次のとおりです。
- 取り外し時にかかる費用
- 後戻り防止用マウスピース型の作成にかかる費用
- 再装着にかかる費用
ワイヤー矯正装置を取り外す際は、費用が発生するクリニックが多いです。また、後戻り防止用マウスピース型の作成費用・再装着費用もかかります。
どれくらいの費用が必要なのか把握したうえで、ワイヤー矯正装置の取り外し計画を立てましょう。
取り外し時にかかる費用
ワイヤー矯正装置を取り外す際にかかる費用は、50,000〜80,000円(税込)程度が想定されます。
ワイヤー矯正装置の取り外しでは、ワイヤーを外すことはそれほど難しくはないですがブラケットを外す際に手間がかかります。
そのため、ブラケットの取り外しの本数に対して費用を設定しているクリニックも少なくありません。
一般的に、ブラケット1本あたり2,000〜3,000円(税込)が相場です。
人間の歯は28〜32本あるため、すべての歯を矯正治療しており、すべてのブラケットを外す際は50,000円以上(税込)は必要になるでしょう。
また、歯の本数は関係なく一律で費用が決まっているクリニックもあります。
後戻り防止用マウスピース型の作成にかかる費用
後戻り防止用マウスピース型を作成する際の費用は、上下合わせて10,000円(税込)程度が必要になります。
ワイヤー矯正装置を取り外す際は後戻りのリスクがあるため、後戻り防止用マウスピース型を作成する場合が多いです。
取り外しの期間によっては必要ない場合もあるため、担当の歯科医師と相談のうえ作成しましょう。
再装着にかかる費用
再装着にかかる費用は、60,000〜100,000円(税込)が相場といわれています。ワイヤー矯正装置を一時的に取り外すと再装着が必須です。
さらに、ワイヤー矯正のブラケットは歯1本1本に取り付けが必要なため、取り外しよりも再装着のほうが手間がかかります。
そのため費用を高額に設定しているクリニックが多く、取り外しから再装着までの費用を考えると、想像以上の金額が必要になるでしょう。
治療面でも影響が出る可能性があるため、一時的な取り外しは慎重に検討することをおすすめします。
ワイヤー矯正の取り外しの注意点
ワイヤー矯正装置の一時的な取り外しについて、次のような注意点が挙げられます。
- 早めに歯列矯正専門の医師に相談する
- 治療の進行が遅れる可能性がある
- 必ず再度装着する
- 装着した歯科医院で取り外しを行う
ワイヤー矯正装置の取り外しを行う際は、取り外しを行いたい時期が決まったら早めに相談しましょう。
ワイヤー矯正装置は、急なお願いで取り外しができるものではありません。歯列矯正専門の医師と相談のうえ、適切に行う必要があります。
また取り外しを適切に行わないと、矯正治療が計画通りに進まない可能性があります。取り外しの際の注意点を確認して、計画を立てましょう。
早めに歯列矯正専門の医師に相談する
ワイヤー矯正装置を取り外すタイミングが決まったら、早めに歯列矯正専門の医師に相談しましょう。ワイヤー矯正装置の取り外しには、時間がかかるためです。
実際に取り外したい日に外せなければ意味がありません。まずは、希望通り取り外しが行えるかを確認しましょう。
また、後戻り防止用マウスピース型の作成にも時間が必要になります。
矯正治療は計画通りに進めていく治療です。一時的な取り外しはイレギュラーな事例となるため、早めに相談して再計画を練り直す必要があるでしょう。
治療の進行が遅れる可能性がある
ワイヤー矯正装置の取り外しは、治療の進行が遅れる可能性があります。矯正装置を外すことで歯の動きを止めてしまい、場合によっては後戻りする可能性があるためです。 また、取り外し期間中は歯を動かせないため、その分の治療期間が延びることになります。 取り外しの計画を立てる際は、再開後にどれくらいの影響を及ぼすのかを確認するとよいでしょう。
必ず再度装着する
ワイヤー矯正装置を取り外した際は、必ず再装着する必要があります。
途中で矯正治療をやめてしまうと、思うような歯並びにならないばかりか、噛み合わせに影響が出る可能性があるためです。
実際にワイヤー矯正装置を外すと、開放感があり非常に楽になるため再度装着することが億劫になる方もいます。
しかし、そのまま放置すると中途半端な歯並びになったり噛み合わせに影響が出たりするため、これまで努力したことが無駄になってしまう可能性が高くなります。
ワイヤー矯正装置を取り外す際は、再装着の時期や段取りの計画も一緒に立てるとよいでしょう。
装着した歯科医院で取り外しを行う
ワイヤー矯正装置の取り外しは、基本的に取り付けた歯科医院で行うことがおすすめです。他院の場合は、頼みにくく、費用が高額になる可能性があるためです。
しかし、事情によりどうしても取り付けた歯科医院に通えない場合は、他院に連絡して「取り外し・再装着」が可能か相談してみましょう。
ワイヤー矯正の一時的な取り外しを避ける方法
ワイヤー矯正装置の一時的な取り外しを避ける方法は、次のとおりです。
- 矯正開始時期をよく検討する
- 矯正期間が短い方法を検討する
- マウスピース型矯正を検討する
ワイヤー矯正装置の取り外しは、費用がかかったり後戻りのリスクがあったりするため、なるべく避けたほうがよいといえます。 一時的な取り外しを避けるために必要なポイントを把握して、リスクの少ない歯列矯正治療を進めましょう。
矯正開始時期をよく検討する
ワイヤー矯正装置の一時的な取り外しを避けるには、矯正開始時期をよく検討する必要があります。取り外したいイベントを避けるような治療計画が望ましいためです。
この記事で紹介しましたが、ワイヤー矯正装置を一時的に外したいイベントは事前に決まっている可能性があります。
例えば卒業式・入学式・成人式は該当する年齢がほぼ決まっているため、計画を立てやすいでしょう。
矯正治療を行う際に、どれくらいの期間がかかるのか・取り外したいイベントはいつなのかなど想定できる問題を洗い出してから治療計画を立てるようにしましょう。
矯正期間が短い方法を検討する
矯正治療を行う際は、矯正期間が短い治療方法を検討しましょう。部分矯正であれば、全顎矯正よりも期間を抑えられるためです。
先ほど述べた「マウスピース型矯正を検討する」は、矯正治療期間とイベントまでの期間を照らし合わせて計画を立てる方法でした。
しかし、イベントが確定した時点で「この部分だけでも歯並びを整えたい」という要望に答えられる可能性もあります。 短期間でもできる限り治療したいと考える場合は、歯列矯正専門の医師に相談し、どのような治療が行えるのか確認するとよいでしょう。
マウスピース型矯正を検討する
そもそも矯正治療期間に一時的に取り外したいイベントが決まっている場合は、マウスピース型矯正を検討しましょう。
マウスピース型矯正は審美性に優れており、取り外しを自分で行えるためです。
マウスピース型矯正は透明なマウスピース型を歯に嵌め込みます。そのため、他人からはよく確認しないと装着していることがわかりにくいです。
また、食事や歯磨きの際は自分で取り外す仕様のため、取り外し・再装着が難しくありません。
ただし、マウスピース型矯正は歯並びや噛み合わせの症状によって治療できない可能性があります。 歯列矯正専門の医師に相談のうえ、状況に応じた適切な治療を選択しましょう。
まとめ
歯列矯正装置は、ワイヤー矯正もマウスピース型矯正も一時的な取り外しが可能です。
しかしワイヤー矯正の場合は、取り外し費用がかかる・後戻り防止用マウスピース型が必要になる・矯正治療計画が遅れるなどの特徴があります。
ワイヤー矯正装置の取り外しを行いたいイベントがある場合は、事前に歯列矯正専門の医師に相談して適切な方法で行いましょう。
また、ワイヤー矯正は途中で中断すると予定通りに進まないばかりか、歯並びが整わない・噛み合わせが悪くなるなどの問題が発生する可能性があります。
歯列矯正治療を受ける時点で取り外したいイベントが決まっている場合は、その旨を歯科医師に伝え、適切な方法で歯列矯正治療を行いましょう。
参考文献
参考サイト