歯列矯正は、歯に外部から圧力を加えるため痛みが生じることがあります。痛みの感じ方は人それぞれですが、痛みがひどく口腔内のケアができない方や方法がわからないという方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、歯列矯正中の歯磨きの方法や痛みが生じる理由などを解説していきます。すでに歯列矯正中の方や、これから歯列矯正をはじめようと考えている方への参考になれば幸いです。
歯列矯正中の歯磨きが痛いときの対処法

- 痛みがある部分を避けて磨いても大丈夫ですか?
- 歯列矯正中は、むし歯になるリスクが高まります。そのため、痛みがある部分もなるべく磨くようにしましょう。痛みがひどく辛い場合は、いつものように力を入れて磨くことはせず、優しい力加減で擦るように磨くことで痛みを軽減することができます。また、鏡を見ながら磨いてみましょう。痛みの強い部分を鏡で見ながら磨くことで、より丁寧に磨くことができ、磨き残しが防げます。
- 力を入れずに磨いても問題はありませんか?
- 歯列矯正中も適切な力で磨くことがポイントです。無理に力を入れることはせずに、歯列矯正装置と歯の間を細かく丁寧に磨くようにしましょう。歯垢は必ずしも力を入れなくても落とすことができます。
- 適切な歯磨きのタイミングと頻度を教えてください。
- 食後には歯磨きをする習慣をつけましょう。頻度としては朝昼晩の食事後の3回です。食事をした後は、歯列矯正器具や歯の間に食べ物が残りやすくなっています。そのままにしておくと、むし歯や着色の原因になります。間食をした後も可能であれば歯を磨くよう心がけましょう。どうしても歯磨きができない場合は、お口を水でゆすぐことも効果的です。また、矯正器具の種類によっては、食後すぐに歯磨きをしないと食べ物の色が移ってしまうことがあります。可能であれば、食後すぐに歯磨きをする時間を取るようにしましょう。
- 歯ブラシ以外に効果的なアイテムがあれば教えてください。
- 普通の歯ブラシ以外に効果的な歯磨きアイテムは以下のものがあります。
- 歯間ブラシ
- デンタルフロス
- タフトブラシ
- 電動歯ブラシ
- マウスウォッシュ
歯間ブラシは、歯と歯の間の汚れを取り除くのに効果的なアイテムです。歯の表側から歯とはの間に入れて数回往復運動をします。このとき、少しずつ角度を変えながら動かすとより効果的に汚れを落とすことができます。歯と歯の隙間が大きい場合に使用しましょう。デンタルフロスは、繊維を歯と歯の間に入れて歯垢を巻きつけるように取り除く細い糸です。歯に合わせてノコギリのように前後に動かしながら、歯肉のなかに糸が隠れるくらいまで入れましょう。手前側と奥側の歯の表面についた汚れを順番に掻き出し、ノコギリのように前後に動かしながら糸を外します。タフトブラシは、毛束が小さく一つにまとまった歯ブラシです。通常の歯ブラシでは届きにくい奥歯や歯列矯正装置の周りを細かく磨くことができます。歯ブラシで磨いた後に使用することで、磨き残しを防ぐことができるでしょう。電動歯ブラシは、名前のとおり電気で自動的に動く歯ブラシです。振動、あるいは回転によって歯面に付着した汚れや着色を除去します。マウスウォッシュは、口腔内の洗浄や消毒をする液体で、口の中をゆすぐために用いられるものです。うがいをすることによって口臭予防や歯面への細菌の付着抑制などが期待できます。歯磨きの後の仕上げのほか一時的に爽快感が欲しいとき、口臭を抑えたいときなどに使用しましょう。
歯列矯正中の歯磨きで痛みが生じる原因
- 歯列矯正中の歯磨きで痛みがあるのはなぜですか?
- 歯列矯正の仕組みから説明すると、歯は骨との間に歯根膜を介して固定されており、この歯根膜が噛む力に対してクッションのような役割をしています。歯列矯正器具により圧力が加わると、歯根膜が骨に働きかけます。骨は日々古い細胞から新しい細胞へと作り替えられているので、歯に圧力が加わると歯根膜によって圧迫された骨が吸収されて、その場所へ歯は移動する仕組みです。移動することによってできた空隙には新しい骨が作られ、結果として歯が移動していくのが歯列矯正治療の仕組みです。歯列矯正器具による圧力で口腔内に痛みが生じている際に、歯磨きによる刺激が加わることによってさらに痛みが生じることがあります。
- 歯磨きの痛みは短期間でおさまりますか?
- 歯列矯正中の痛みは、はじめて装置を装着してから1週間以内に収まる場合がほとんどです。痛みが引いていくのに伴い、歯磨き中の痛みも軽減していくでしょう。痛みがおさまらない場合は、痛み止めの服用も検討するとよいでしょう。また、ワイヤーでの歯列矯正では矯正ワックス(歯科用粘膜保護剤)を使用する方法もあります。いずれも歯科医師に相談のうえ、使用するようにしましょう。
- 歯磨きの痛みがおさまらない原因は何が考えられますか?
- 歯列矯正器具が舌や口腔内の粘膜に当たり炎症を起こしている可能性もあります。出血や口内炎などの症状が出ていたり、痛みが長く続いたりする場合は、担当の歯科医師に相談しましょう。ほかにも、知覚過敏や歯周病、むし歯などの歯列矯正以外の原因も考えられるため早めの受診を心がけましょう。また、歯磨きのアイテムが合っていない可能性も考えられます。歯ブラシの硬さを変えたり、他の効果的なアイテムを試したりしてみましょう。
- 歯列矯正中に知覚過敏が起こりやすいというのは本当ですか?
- 歯列矯正中に知覚過敏は起こりやすいといわれています。
知覚過敏とは、刺激によって歯がしみる状態です。むし歯がなくても、冷たいものや温かいものをお口に含んだときや、歯ブラシや硬いものが歯肉に当たったときにしみます。歯列矯正は歯に圧力を加えて、少しずつ動かすことで歯並びを整える方法です。そのとき、歯と歯肉の間にわずかな隙間が一時的にできます。その隙間に刺激が伝わることで、しみる場合があります。知覚過敏の症状で歯磨きが辛い場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を使用するのも有効です。また、力を入れなくても歯垢は除去できるので、敏感な箇所は特に優しく磨きましょう。
歯列矯正中の歯磨き・口腔ケアの重要性
- 歯列矯正中に歯磨きを怠るとどうなりますか?
- 適切な歯磨きを怠ると、むし歯や歯周病といった口腔疾患が生じる可能性が高くなるほか、口臭の原因になったり着色が顕著に現れたりします。口腔内トラブルがひどい場合には、歯列矯正を一時中断し、トラブルの治療に専念しなければならない場合もあります。矯正器具周辺は食べ物の残りや歯垢がつきやすい箇所なので、念入りに磨くよう心がけましょう。
- どのくらいの間隔で歯科医院でクリーニングを受ければよいですか?
- 歯科医院によって異なりますが、口腔内環境がよい場合には3ヶ月に1度の間隔でのクリーニングでよいとされています。汚れが溜まりやすい方は頻度が上がり、1〜2ヶ月に1度のクリーニングを推奨しています。自分では磨けていると感じていても、歯科医師や歯科衛生士の目視によるメンテナンスで見つかる汚れは少なくありません。定期的にクリーニングを受けましょう。
編集部まとめ
歯列矯正中の歯磨きは痛みが生じる場合があります。痛みは一時的で、1週間以内に収まる場合がほとんどです。
歯列矯正中に歯を磨くときは、いつもより丁寧に優しく磨くように心がけましょう。
矯正装置周辺は食べ物の残りや歯垢が溜まりやすくなっているため、歯ブラシ以外にもデンタルフロスや歯間ブラシなどを使用して、磨き残しがないようにすることが大切です。
食事の後は、毎回歯磨きをすることが理想的ですが、どうしてもできない場合はうがいやマウスウォッシュを利用しましょう。
歯列矯正を計画的に進めるためにも、口腔内のケアは怠らず、異常時はかかりつけの歯科医師へ相談することが大切です。
参考文献