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歯列矯正は抜歯なしで行える?抜歯しない歯列矯正のメリット・デメリットや抜歯が必要なケースも併せて解説!

歯列矯正は抜歯なしで行える?抜歯しない歯列矯正のメリット・デメリットや抜歯が必要なケースも併せて解説!

歯列矯正は、美しい笑顔と健康な歯並びを得るために有効とされる手段です。しかし、歯列矯正を考える際に、気になるのが抜歯が必要かどうかという点です。近年では、抜歯を避ける歯列矯正方法も増えてきており、それぞれにメリットとデメリットがあります。 本記事では抜歯なしの歯列矯正について以下の点を中心にご紹介します。

  • 歯列矯正は抜歯なしでも行えるのか
  • 非抜歯の歯列矯正のメリット・デメリット
  • 非抜歯の歯列矯正の治療方法

抜歯しない歯列矯正について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

歯科矯正は抜歯なしで行える?

歯科矯正は抜歯なしで行える?

すべての歯列矯正治療で抜歯が必要なわけではありません。近年、技術の進歩により、抜歯を避ける歯列矯正が増えてきました。歯並びや噛み合わせが軽度の不正の場合、歯を抜かずに歯列矯正できることが多いようです。インビザラインなどの透明なマウスピース型矯正装置が使われることが多く、見た目を気にせず治療を進めることが可能とされています。

しかし、重度の不正咬合や歯の過剰な密集がある場合には、抜歯が必要になることもあります。歯のスペースを確保し、正しい位置に移動させるためには、抜歯による一定のスペースが必要です。歯列矯正の治療方針は、個々の口腔内の状態によって異なるので、歯科医師の診断を受けることが重要です。

歯列矯正を抜歯なしで行うメリット

歯列矯正を抜歯なしで行うメリット

非抜歯の歯列矯正にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

健康な歯を残せる

非抜歯の歯列矯正治療は、健康な歯を残すことで将来的な歯の健康維持に役立ち、むし歯や怪我で歯を失った際の治療方法の選択肢も広がります。小臼歯は噛み合わせを安定させる重要な役割があり、健康な歯を残すことは長期的な口腔内の健康にとって大変重要です。

さらに、抜歯をしないことで痛みや回復期間の増加を避け、治療のストレスを軽減できます。ただし、非抜歯の治療にはデメリットもあり、スペース不足が深刻な場合や拡大装置の使用、歯を削るストリッピングによるリスクがあります。個々の症例に応じた慎重な判断が求められるため、歯科医師と十分に相談し、適切な治療方法を選ぶことが大切です。

治療期間が短く済む

治療期間の長さは歯列矯正治療の重要な要素です。抜歯を伴う歯列矯正治療は、歯を並べる期間に加えて、抜歯後の隙間を閉じる期間が必要となり、平均で2年半から3年程かかるといわれています。しかし、非抜歯の歯列矯正治療では隙間を閉じる期間が不要で、治療期間を1年半から2年程に短縮できるとされています。

治療期間の短さは、患者さんにとってのストレスや不便さを軽減します。長期間の通院や装置の着用は生活の質に影響するため、短期間で治療が終わることは大きな利点です。ただし、歯の動きや歯列矯正の難易度、通院ペースによっては、非抜歯でも治療期間が延びることがあるため、個々のケースに応じた計画が必要です。

また、非抜歯の歯列矯正治療は費用面でもメリットがあります。抜歯を行う場合、歯列矯正専門の歯科医院から一般歯科医院への紹介状が必要で、その発行費用や抜歯の費用が追加でかかります。非抜歯の歯列矯正治療ではこれらの費用が不要で、経済的な負担が軽減されます。

歯列矯正を抜歯なしで行うデメリット

歯列矯正を抜歯なしで行うデメリット

非抜歯の歯列矯正にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

後戻りしやすくなる

歯列矯正治療を抜歯なしで行う場合、後戻りのリスクに対する理解が重要です。無理に狭いスペースに歯を並べることで、歯列矯正治療後に歯並びがもとに戻る可能性が高まります。後戻りが発生すると、再度歯列矯正が必要となり、時間と費用が余計にかかることがあります。再矯正に追加の費用がかかる場合もあるため注意が必要です。

後戻りのリスクを軽減するためには、非抜歯の歯列矯正治療が適用される症例かどうかの判断が重要です。適用症例では、歯の移動距離が短く、後戻りが起きにくいですが、非適用症例の場合には後戻りのリスクが高まるとされています。また、噛み合わせが正しく安定しないと後戻りが発生しやすくなります。

非抜歯の歯列矯正治療を選ぶ際には、自身の歯並びや顎の状態を確認し、歯科医師との十分な相談が大切です。後戻りを防ぐためのリテーナー(保定装置)の使用や定期的なチェックも忘れずに行うことが重要です。長期的に美しい歯並びを維持できるでしょう。

歯茎が退行しやすくなる

歯列矯正治療を抜歯なしで行う場合、歯茎が退行しやすくなるリスクがあります。狭いスペースに無理に歯を並べると、歯を支える骨や歯茎に負担がかかり、歯肉退縮が起こりやすくなります。これは非抜歯の歯列矯正治療で高まり、歯が長く見える、歯間の隙間が目立つ、知覚過敏や歯周病、むし歯のリスクが増加するなどの問題を引き起こします。

歯肉退縮の予防には、適切な歯列矯正計画が重要です。非抜歯の歯列矯正治療を選ぶ場合でも、歯茎や骨に過度な負担をかけないよう歯科医師と相談しながら治療を進めることが大切です。また、歯列矯正治療中は定期的な歯科検診と丁寧な歯磨きが重要です。

このように、非抜歯の歯列矯正治療には歯茎退行のリスクがありますが、適切なケアと治療計画によってリスクをできるだけ小さく抑えることが可能とされています。自身の口腔の状態を理解し、適切な治療法を選ぶことで、美しい歯並びと健康な歯茎を維持できるといわれています。

理想的な口元は得られにくい

歯列矯正治療を抜歯なしで理想的な口元に近づけるのが難しい場合があります。美しい口元の基準としてEラインがありますが、非抜歯の歯列矯正治療ではこれを達成するのが難しくなることがあります。

Eラインとは、鼻の先端と顎の先端を結んだ線で、このラインより少し内側に唇が収まるのが理想的です。非抜歯の歯列矯正治療ではスペース不足から前歯が前方に押し出され、口元が出っ張る可能性があり、歯並びが整っても口元の出っ張りが改善されない場合があります。

さらに、非抜歯では確保できるスペースが限られ、治療計画に制約が生じます。例えば、抜歯を行うと約14mmから16mmのスペースが確保できますが、非抜歯ではわずか2mmから3mmです。このため、歯の動かせる範囲が限られ、治療計画も制限されます。

理想的な口元に近づくには、歯列矯正治療前に十分な検査と分析を行い、Eラインの実現を考慮した適切な治療計画を立てることが重要です。

非抜歯の歯列矯正の治療方法

非抜歯の歯列矯正の治療方法

非抜歯の歯列矯正の具体的な治療方法を解説します。

奥歯を後方に移動させる

非抜歯の歯列矯正治療の一つに奥歯を後方に移動させる手法があります。この方法はインプラント型矯正とも呼ばれ、インプラントアンカーを奥歯の上方の歯槽骨に固定し、奥歯を後方に牽引してスペースを確保します。
こうして前方の歯に必要なスペースを作り、抜歯せずに歯を並べられます。しかし、日本人の顎の構造上、奥歯を後方に移動できる距離には限界があり、片側で2.5mm程度、両顎で5mm程度といわれています。

この方法はマウスピース型矯正(インビザライン)で効果を発揮します。親知らずは基本的に抜歯するため、親知らず以外の歯を抜かずに治療を行うことが非抜歯の歯列矯正治療の認識です。奥歯を後方に移動させることで、大きなスペースを確保できるこの手法は、抜歯を避けたい方にとって有力な選択肢です。

歯を少し削る(ストリッピング・IPR)

非抜歯の歯列矯正治療の一つにストリッピングまたはIPR(InterProximal Enamel Reduction)があります。これは、歯の端をわずかに削ることでスペースを作り、歯を整列させる手法です。エナメル質のみを削るため、痛みはほとんどなく、むし歯のリスクも低いとされています。削る厚みは1本あたり0.25mm〜0.5mm程度で、削った部位にはフッ素コートを施しむし歯予防も行われます。

この方法は、前歯が大きく歯列に収まらない軽度の歯並びの問題に有効です。例えば、いくつかの前歯の両側を少しずつ削ることで必要なスペースを作り出します。ただし、削れるスペースは限られており、6.5mmの隙間しか作れないため、抜歯程大きなスペースを確保できません。健康な歯質を削るリスクもあるため、適切な症例にのみ使用されるべきだと考えられています。

ストリッピングは非抜歯の歯列矯正治療の有効な選択肢の一つですが、歯科医師と相談し、自身の症例に適した治療方法を選ぶことが重要です。

歯列の幅を広げる

非抜歯の歯列矯正治療の一つに、歯列の幅を広げる方法があります。この方法は、顎を外側に拡大することで歯を並べるためのスペースを確保します。装置を歯の内側に装着し、ネジを回して徐々に広げる仕組みで、小児の歯列矯正で使用されます。成長期の顎の発育を助けながらスペースを作りますが、成人でも25歳ぐらいまでなら効果が期待できます。

この方法では、歯が生えているU字型の骨(歯槽骨)の範囲内で拡張を行い、顔の輪郭が大きく変わることはありません。側方拡大では、細いU字型の歯列弓を横に広げ、1mmの拡大で約0.7mmの隙間を作ります。ただし、適用できる症例には限りがあり、顎の成長が完了している大人では限界があります。

また、内側に倒れている歯には効果が期待できますが、外側に倒れている場合やそれ以上の拡大が必要な場合には適用できません。全体的な突出感や歯の根が飛び出るリスクもあるため、慎重な判断が必要です。歯科医師と十分に相談し、適切な治療計画を立てることが重要です。

歯列矯正で抜歯が必要になるケース

歯列矯正で抜歯が必要になるケース

どのような場合に歯列矯正で抜歯が必要になるのでしょうか。

顎が小さくスペースが不足している

歯列矯正治療で抜歯が必要なケースの一つに、顎が小さくスペースが不足している場合があります。狭い顎に歯が収まりきらないと、歯が重なり合い歯並びが乱れます。このような場合、抜歯によってスペースの作成が必要です。c 十分なスペースがないまま歯列矯正治療を行うと、噛み合わせや歯茎にトラブルが生じるリスクがあります。例えば、歯茎に過度な負担がかかり、歯茎の退縮や歯周病が起こる可能性があります。また、噛み合わせが正しくないと、食事の際に噛む力が均等に分散されず、歯や顎に過剰な負担がかかります。

理想の歯並びを実現するためには適切なスペースが必要です。歯列矯正では装置やマウスピースを使って歯を移動させますが、顎のスペースが不足している場合、抜歯が不可避となることがあります。抜歯によって十分なスペースを確保し、歯をスムーズにに移動させることで、理想的な歯並びを実現できます。

上下の噛み合わせが悪い

歯列矯正治療では、上下の噛み合わせにズレがある場合も抜歯が必要となる場合があります。代表的なズレには、出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)があり、抜歯によってスペースを確保し、前歯と奥歯を前後に移動させることで理想的な噛み合わせの実現につながります。

通常、上2本もしくは下2本の歯を抜歯し、前歯を後方へ、奥歯を前方へ移動させます。まず、どの程度の移動が必要かを計測し、適切な抜歯の位置と本数を決定します。

上顎前突の場合、上顎の小臼歯を抜歯し、前歯を後方へ移動させることが多いといわれています。下顎前突の場合、下顎の小臼歯を抜歯して前歯を後方へ移動させ、噛み合わせのズレを改善し、理想的な噛み合わせを実現できます。治療計画は専門の歯科医師と十分に相談し、適切な方法を選ぶことが重要です。

親知らずが悪影響を及ぼしている

歯列矯正治療で抜歯が必要になるケースの一つに、親知らずが悪影響を及ぼしている場合があります。親知らずは、大人になってから生える前歯から数えて8番目の奥歯で、日本人の狭い顎骨格にはトラブルを引き起こしやすい歯です。親知らずがほかの歯に圧力をかけ、歯並びに悪影響を与える可能性があります。斜めや横に生えている場合、歯列が乱れる原因となり、歯列矯正の効果が十分に発揮されない場合があります。

親知らずを抜歯することで、ほかの歯にかかる不必要な圧力が解消され、歯列矯正治療がスムーズに進みます。理想的な歯並びを実現するための治療が可能とされています。親知らずの抜歯は、歯列矯正治療の成功にとって重要なステップです。歯列矯正治療を検討する際には、まず親知らずの状態を確認し、その影響の評価が大切です。歯科医師と相談しながら治療計画を立てることで、満足のいく歯列矯正が実現できます。

まとめ

まとめ

ここまで抜歯しない歯列矯正についてお伝えしてきました。抜歯しない歯列矯正の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 歯列矯正は抜歯なしでも行える場合がある
  • 非抜歯の歯列矯正には短い治療期間で、健康な歯を残しながら治療ができるメリットと、歯茎の退行や後戻りしやすい、理想的な口元に近づけにくいなどのデメリットがある
  • 非抜歯の歯列矯正では、エナメル質を削る、奥歯を後方に動かす、歯列の幅を広げるなどして、歯を動かすスペースをつくる治療方法がある

抜歯しない歯列矯正のメリットとデメリットを十分に理解することが大切です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

遠藤 眞次医師(グランメゾンデンタルクリニック)

長崎大学歯学部を卒業後、東京と群馬の歯科医院で分院長を歴任。臨床のかたわら、歯周治療やインプラント治療についての臨床教育を行う「Dentcation」の代表を務める。他にも、歯科治療のデジタル化に力を入れており、デジタルデンチャーを中心に、歯科審美学会やデジタル歯科学会等で精力的に発表を行っている。

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