子どもの上顎前突(出っ歯)は、成長期に適切な矯正治療を行うことで、自然な歯並びへと改善が期待できます。治療法や使用する装置は症状や成長段階によりさまざまで、早期の発見が重要です。
本記事では、小児矯正で上顎前突(出っ歯)を治すには?について以下の点を中心にご紹介します。
- 子どもが上顎前突(出っ歯)になる原因
- 小児矯正での上顎前突(出っ歯)の治療法
- 急速拡大装置とは
小児矯正で上顎前突(出っ歯)を治すには?について理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
子どもの上顎前突(出っ歯)の基準と原因
- 上顎前突(出っ歯)の基準を教えてください
- 上顎前突、通称“出っ歯”は、上の前歯が下の前歯より大きく前に出ている状態を指します。正常な歯並びでは上の歯が下の歯をわずかに覆う形で前に出ていますが、その差が4mm以上になると、出っ歯と診断されることが多いようです。歯科ではこの差を“オーバージェット”と呼び、上と下の前歯間の前後の距離を測ります。
また、鼻先と顎先を結ぶ線(Eライン)に対して上唇が大きく突き出している場合も、上顎前突の傾向があると考えられるため診断の基準に入ります。唇が自然に閉じにくい場合やお口を閉じる際に顎にしわができる場合も出っ歯の可能性があります。
こうした基準を総合的に判断して、適切な診断と治療方針が決定されます。
- 子どもが上顎前突(出っ歯)になる原因は何ですか?
- 子どもの出っ歯の原因は大きく分けて先天的要因と後天的要因があります。先天的には、親から受け継ぐ骨格の特徴が関係し、特に上顎が前に出やすい、もしくは下顎の成長が弱い場合に出っ歯になりやすくなります。また、歯の大きさと顎のバランスが崩れることも影響します。
後天的な原因としては、指しゃぶりや舌で歯を押す癖、口呼吸など日常の習慣が関係します。
例えば、3歳を過ぎてから長時間続く指しゃぶりは、上の前歯を前方に押し出す力となり、出っ歯の原因になることがあります。舌の位置が低く、歯に強く押し付ける舌癖や、口呼吸による舌の位置異常も顎の成長や歯並びに悪影響を及ぼします。
さらに、頬杖をつく習慣も顎の成長バランスを崩し、出っ歯を助長することがあるため注意が必要です。
小児矯正での上顎前突(出っ歯)の治療法
- 子どもの上顎前突(出っ歯)の治療はいつから始めるべきですか?
- 子どもの出っ歯治療は、6歳以降に始めることが推奨されています。理由は、下顎を含む顎の骨が身長の伸びに合わせて成長する時期だからです。特に、小学生の成長期は顎の骨が柔軟に発育するため、この時期に歯科矯正を行うと効果が期待できます。未就学児で前歯がやや前に出ている程度であれば、自然に整うことも多いとされ、急いで治療する必要はありません。ただし、6歳未満でも下顎の著しい後退や咀嚼、発音に問題がある場合は、早期治療が必要になるケースもあります。
- 子どもの上顎前突(出っ歯)を治すにはどのような治療法がありますか?
- 子どもの出っ歯の治療には、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正、顎の成長を調整する装置などさまざまな方法があります。ワイヤー矯正は、金属製のブラケットとワイヤーを使い、幅広い歯並びの乱れに対応でき、主に永久歯が生え揃う時期から行われます。
一方、マウスピース型矯正は、取り外し可能な装置を日中や就寝時に装着し、筋肉の発達を促しながら自然な歯列へ導きます。痛みや違和感が少なく、生活への影響も少ないのが特徴です。
また、顎のバランスが崩れている場合には、取り外し式の床矯正装置や顎外固定装置を用いて、上下顎の成長を調整し、噛み合わせの改善を目指します。
顎の成長段階に合わせた治療法を選ぶことで、抜歯のリスクを減らし、出っ歯を治すことが期待できます。
- 上顎前突(出っ歯)の治療法はどう選べばよいですか?
- 出っ歯の治療法は、症状の重さや原因に応じて選ぶことが大切です。上の前歯が下の前歯より4mm以上前に出ている場合を出っ歯と診断することが多いようですが、4〜6mmの軽度であれば、歯の傾きや位置を矯正する方法がおすすめです。この場合はマウスピースやワイヤー矯正で歯を動かし、抜歯を避けられるケースが多いといわれています。
一方、6mm以上の重度の場合、顎の骨格に原因があることもあり、顔の見た目にも影響します。このようなケースでは、外科的な顎の手術を含む矯正治療が必要になる場合があります。そのため、Eラインや鼻唇角、口元が前に出ている感じなど、見た目の部分でもどのような治療がいいのか検討されます。
治療法は歯科医師による精密検査と診断に基づいて決まるため、少しでも気になる場合は早めに歯科医院を受診し、検査や治療方針の説明をしっかり受けることが重要です。
- 子どもの出っ歯が自然に治ることはありますか?
- 子どもの出っ歯は放置しても自然に治ることはほとんどないといわれています。出っ歯の状態は歯並びだけでなく、口元の筋肉の使い方や顎の成長にも関わるため、それぞれに合うケアや治療が必要です。放置すると、歯と歯の間に汚れがたまりやすく、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
また、発音が不明瞭になったり、前歯を転倒で怪我しやすくなる危険もあります。さらに、口呼吸になりやすくなることで、口腔内の乾燥や免疫力の低下を招くことも懸念されます。
指しゃぶりや舌癖、口呼吸などの悪習慣が原因であれば、それらを改善することで出っ歯の悪化を防げる場合もありますが、3歳を過ぎても症状が残る場合は早めに歯科医師へ相談し、治療を受けることが大切です。
子どもの上顎前突(出っ歯)で急速拡大装置が必要なケース
- 急速拡大装置が必要だといわれたのですが、どのような装置ですか?
- 急速拡大装置とは、上顎の幅を広げるために使う固定式の矯正装置のことです。主に、永久歯がきれいに生えるためのスペースが不足している子どもに用いられます。装置は金属製のバンドや太いワイヤー、そして拡大ネジで構成され、ネジを調整することで上顎の骨を少しずつ広げていきます。
上顎の骨は左右に分かれており、中央のつなぎ目は10歳前後で閉じます。そのため、この装置はつなぎ目が閉じる前の思春期頃までに使うことで効果が期待できます。急速に上顎を広げることで、歯が正しい位置に生えるためのスペースを確保します。
ただし、この装置だけで治療が完了することは少なく、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正と組み合わせて使用し、噛み合わせや歯の向きを整えていくことが多いようです。
- 床矯正と急速拡大装置の違いは何ですか?
- 床矯正と急速拡大装置の大きな違いは装着の仕方と対象部位にあります。床矯正は上下顎に使用でき、取り外し可能な装置です。使用期間は10ヶ月程かかることが多いようです。
一方、急速拡大装置は上顎専用の固定式装置で、取り外しはできません。骨に力を加えて上顎を骨ごと広げるのが特徴で、2〜3ヶ月程でスペースを確保できます。
また、急速拡大装置は鼻腔を広げる効果も期待ができ、鼻呼吸がしやすくなるメリットがあります。痛みが出ることもありますが、早く慣れる子どもが多いようです。
どちらの装置も、お子さんの顎の骨格や成長段階に合わせて選ぶことが重要です。歯科医師と相談しながらそれぞれに合う方法を決めましょう。
編集部まとめ
ここまで小児矯正で上顎前突(出っ歯)を治すには?についてお伝えしてきました。 小児矯正で上顎前突(出っ歯)を治すには?について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 子どもの出っ歯の原因は大きく分けて先天的要因と後天的要因がある。先天的な原因には、親から受け継ぐ骨格の特徴が関係し、特に上顎が前に出やすい、もしくは下顎の成長が弱い場合がある。後天的な原因は、指しゃぶりや舌で歯を押す癖、口呼吸など日常の習慣が関係する
- 小児矯正による上顎前突(出っ歯)を治療する場合、成長段階に応じてワイヤー矯正やマウスピース型矯正、顎の成長を調整する装置などを使い分ける。症状の程度や骨格の状態により治療法が選ばれ、重度の場合は外科的治療も検討される
- 急速拡大装置は、上顎の幅を広げる固定式の矯正装置である。主に永久歯が並ぶスペース不足の子どもに使われ、金属製のバンドやワイヤー、拡大ネジで骨を少しずつ広げる。10歳前後までの使用で効果が期待でき、ほかの矯正装置と併用されることがある
小児矯正は早期の発見と治療が大切です。気になる症状があれば、歯科医師に相談し、お子さんに合う治療法を見つけましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。