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小児矯正の拡大装置について|種類・メリット・デメリットを解説

小児矯正の拡大装置について|種類・メリット・デメリットを解説

子どもの歯並びが気になる保護者の方もいるのではないでしょうか。歯並びが悪いと永久歯に影響が出るのではないかと心配で、子どもの歯列矯正治療を考えている方もいるでしょう

しかし、歯列矯正治療は高いという印象があって躊躇してしまう方もいます。歯列矯正の費用は全額自己負担ですが、子どもの歯列矯正はほとんどが医療費控除の対象になります。

また、子どもは顎の成長を利用して歯並びの治療ができるので、歯並びが気になっているのなら歯列矯正を考えてみてはいかがでしょうか。

本記事では、小児の歯列矯正装置の種類やメリット・デメリット・費用相場などをまとめて解説します。

子どもの歯列矯正について疑問をお持ちの方はぜひ本記事を参考に歯列矯正を検討してください。

小児矯正の拡大装置の種類や費用相場

歯医者に来る子供

小児矯正で使用される拡大装置とはどのようなものですか?
小児矯正で使用される拡大装置とは、歯の裏側から顎の横幅を拡大する装置です。
拡大装置の大まかな分類は可撤式装置と固定式装置です。
可撤式装置は必要に応じて自分で外したり付けたりできるので装着時のストレスが軽減できます。例えば歯磨きや食事中に外すことができるため、歯磨きがしやすく口腔内を清潔に保てます。また、装置自体も外して洗浄することが可能です。
一方、固定装置はセメントや接着剤で取付けた後は治療が終了するまで外すことができない装置です。装着してから数日は痛みや違和感が伴う場合がありますが、固定式装置は可撤式装置と比べると歯の移動幅が大きいメリットがあります。
なお、ガムやキャラメルなどの粘着性のある食べ物は固定装置が外れる可能性があるため控えるようにしましょう
大人用の矯正装置とは役割が違うのですか?
歯列矯正は大人もできますが、歯列矯正装置の装着期間や役割が変わります。
小児矯正は歯並びを細かく移動させるのではなく、顎の成長を利用して顎骨を広げ、生えてくる歯のスペースを確保することが主です。そのため、使用する矯正装置は移動の状態によって調整ができる可撤式装置を使用するのが一般的ですが、不正咬合の状態によっては固定式装置を使う場合もあります。
一方大人の歯列矯正は顎骨の成長が止まっているので歯列を整える治療になります。そのため場合によっては、永久歯を抜歯して移動領域を確保する治療も必要になるでしょう。
大人が歯列矯正する場合に使用する装置は固定式の装置を使うことが多いです。固定装置はマルチブラケット装置が一般的ですが、審美性を気にする方は裏側矯正(舌側矯正)やマウスピース型矯正などもあります。
拡大装置の種類を教えてください。
可動式装置の種類は以下のものがあります。
  • 床矯正装置(アクティブプレート):拡大床
  • 保定装置:ペッグタイプ・ホーレータイプ・クリアレテーナーなど

固定式装置の種類は以下になります。

  • マルチブラケット装置:ワイヤー型矯正
  • パラータルバーまたはパラータルアーチ:歯並び全体の横幅の維持
  • ポーター型拡大装置(緩徐拡大):上顎と下顎の歯列幅をゆっくり広げる、クワドヘリックス(上顎用)・バイヘリックス(下顎用)
  • ナンスのホールディングアーチ:抜歯症例で固定の強化や乳歯が早く抜けた場合の空隙の確保
  • リンガルアーチ(舌側弧線装置):歯列拡大・前歯移動
  • 急速拡大装置:短期間で上顎の横幅を広げる

固定式装置を装着すると、個人差はありますが装着後3〜7日程は痛みや違和感があると思われます。

小児矯正はトータルでどのくらいの費用がかかりますか?
歯列矯正治療は自由診療のため歯科医院によって費用が異なります。詳細は受診する歯科医院で尋ねてください。ここでは一般的な費用相場を紹介します。
  • 乳歯列期:3万~20万円(税込)
  • 混合歯列期:15万~60万円(税込)
  • 永久歯列期:50万~130万円(税込)

小児矯正は1期治療・2期治療と2つの期間に分割して治療を進める歯科医院もあります。また、子どもの治療は成長をみながら第1期から第2期と続けて治療することが多いようです。
なお、顎変形症などの骨格不正が大きい場合は、指定病院で治療を行うと保険適用の対象です。症例や指定医療機関は日本矯正歯科学会のホームページで確認できます。また、18歳以下の歯列矯正の費用はほとんどの場合医療費控除の対象になります。

小児矯正で拡大装置を使用するメリット・デメリット

歯列矯正の治療をしている女の子

拡大床のメリット・デメリットを教えてください。
拡大床は、入れ歯のような形のプレートを歯の裏側の歯ぐきに沿って装着し、スプリングやネジで調節しながら歯列全体を拡大する装置です。成長期の子どもが装着すると永久歯が生えるスペースを確保できます。
拡大床のメリットは以下のものがあります。
  • 上顎の骨を拡大することができる
  • 鼻呼吸の改善が望める
  • 抜歯が必要なくなる場合がある

乳歯が密接していると、永久歯が生えてきた時に歯が並びきらず歯列矯正するための抜歯が必要になる場合があります。顎骨が柔軟な時期にあらかじめすき間を作ることできれいな歯並びになります。なお、拡大床のデメリットは以下です。

  • 拡大床ができる症例には制限がある
  • 装着時の違和感がある
  • 発音がしづらい

拡大床は週に1回程度のペースでネジを調整して拡大していきます。

クワドヘリックス・バイヘリックスのメリット・デメリットを教えてください。
クワドヘリックスは歯の裏側から横方向に歯列の幅を拡大する装置です。クワドヘリックスは上顎用でバイヘリックスは下顎用です。
ループ状のヘリックス(材質はニッケル・ステンレス・チタンなど)を左右の大臼歯にセメントで固定して、螺旋状の太いワイヤーでできたバネでつないで調整します。ゆっくり拡大していくため痛みが少ないのがメリットです。なお、デメリットとして挙げられるものは以下です。
  • ループ状のヘリックス部分に食べ物が挟まりやすい
  • 歯磨きが難しい
  • 発音がしにくい
  • ループ状のヘリックスに舌が当たる
  • むし歯のリスクがある

ゆっくり拡大していくため急速拡大装置と比べると治療期間が長くなります。

急速拡大装置のメリット・デメリットを教えてください。
急速に歯列を拡大する装置です。拡大調整用のネジを1日に1~2回は回すため自宅で調整する必要があります。
なお、急速拡大装置は顎骨も拡大できるので骨格改善が可能です。そのため、歯列拡大と骨格のバランスも整えられるのがメリットです。ただし、急速拡大装置は第一小臼歯が永久歯になってからしか装置を装着できません。
また、装置が大きいため装着の違和感が大きく慣れるのに時間がかかるデメリットがあります。

小児矯正の開始時期や失敗の理由

男の子 大口

小児矯正はいつ開始するのがよいですか?
小児矯正はいつ開始すると決まった定義はありませんが、永久歯に影響する問題がある場合は早期に歯列矯正治療を開始する必要があります。
小児矯正のメリットは以下です。
  • 成長を利用した歯列矯正が可能
  • むし歯・修復歯・欠損歯が少なく治療の選択肢が豊富
  • 歯肉の退縮・骨の減少が起こりにくい
  • 定期的な口腔内の管理が可能

小児矯正にはデメリットもあります。

  • 治療の協力が得られにくい
  • 治療に対するモチベーションが維持しにくい
  • 治療期間が長い場合がある

小児矯正は骨格的な治療が必要なケースでは治療期間が長くなる可能性がありますが、開始時期を逃したために抜歯や治療効果が不十分にならないようにしましょう。
なお、口呼吸や指しゃぶりなどの癖は不正咬合になる可能性があるので早めに改善することをおすすめします。
また、早期の歯列矯正の必要性の有無を確認するには8~9歳頃に一度矯正歯科で検査をしてみることをおすすめします。

小児矯正は失敗するケースもありますか?
小児矯正のトラブルは以下のものがあります。
  • 長期間治療しても改善しない
  • 治療後の歯並びが元よりひどい
  • 装置を外したら元に戻った

上記のような失敗例は矯正歯科のトレーニングを行っていないにも関わらず、安易に拡大床の使用や歯列矯正治療を行った結果といえます。
歯列矯正を実施する歯科医師は矯正器具の取扱いや治療のゴールを見極める判断が必要です。長い期間をかけて行う歯列矯正です。歯科医院選びは、きちんと専門教育や研修を受けて経験を積んだ矯正歯科医師が在籍する歯科医院を選びましょう。
また、簡単に治る・治療費が安価などの宣伝文句だけで歯科医院を選ぶのはやめましょう。

小児矯正が失敗する理由を教えてください。
小児矯正で失敗する理由はさまざまですが、いくつか例を挙げます。
  • 治療前の精密検査が実施されていない
  • 検査後の診断や説明が不十分
  • 抜歯の説明がされなかった
  • 装着器具ごとの機能の違いを理解していなかった
  • 保定装置を装着しなかった
  • 一般歯科で歯列矯正治療をした

前の項でも解説しましたが治療を開始してから後悔や失敗をしないためには、歯列矯正を行うと決めたら矯正歯科を受診しましょう。
治療の説明をする際にメリットばかり並べる歯科医師は信用できません。治療に完璧がないのは当然です。リスクの説明や注意点を説明する歯科医師を選びましょう。

編集部まとめ

歯科治療を受ける子供

本記事では子どもの歯列矯正について解説しました。歯列矯正は費用も時間もかかりますが子どもの歯並びが気になる場合は、成長期に治療を開始すれば大人になってから歯列矯正するより費用やリスクを軽減することができます。

ただし、歯列矯正を成功させるためには歯科医院選びが大切です。歯列矯正の専門の医師は歯列矯正の研修を積んでいて経験も豊富です。

本記事では拡大装置のメリットやデメリットを解説しましたが、小児の歯列矯正にはほかにも利用できる矯正装置があります。

子どもの状況に合わせて適切な矯正器具を利用して、きれいな歯並びを実現させてあげてください。この記事が少しでも役に立てれば幸いです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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