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小児矯正で顎を広げる方法とは?装置の種類やメリット・デメリットについて解説!

小児矯正で顎を広げる方法とは?装置の種類やメリット・デメリットについて解説!

矯正治療は、子どもの頃に行っておいた方が良いという話をよく耳にします。それは成長期に適切な矯正力を加えることで、顎を広げることができるからです。単純に“顎を広げる”といわれても、歯並びとは何ら関係がないように思えるかもしれませんが、実際はそんなことはありません。ここでは、そんな小児矯正で顎を広げる方法や使用する装置の種類、治療に伴うメリット・デメリットを詳しく解説します。子どもの矯正治療を検討中の方は、参考にしてみてください。

顎を広げる小児矯正の方法

顎を広げる小児矯正の方法 はじめに、小児矯正で顎を広げる理由とメカニズムについて、正しく理解しておきましょう。

小児矯正で顎を広げる理由

歯並び・噛み合わせにはいろいろな種類がありますが、その多くは顎の大きさや形、上下のバランスの異常に由来しています。例えば、上の顎の幅が標準よりも小さければ、歯を並べるためのスペースが不足するだけでなく、上下の顎のバランスも乱れます。 その結果、出っ歯や乱ぐい歯、交叉咬合(こうさこうごう)といった歯列不正・不正咬合を招いてしまうのです。

小児矯正では、そうした顎の発育の遅れを正常に戻すことが可能となります。もちろん、顎を広げるのは幅だけではなく、前後の長さである場合もあります。それぞれの症例に適した装置を使って顎を拡大することで、親知らずを除く28本の永久歯をきれいに並べるための土台を完成させる可能性が増えます。ことができます。 顎を広げる量には限界があるので、歯列をひろげることで、すべての症例で歯を抜かないで治療ができるわけではありません。ちなみに、 小児矯正で顎を広げる治療は、12歳くらいまでに行う必要があります。 なぜなら、12歳頃を過ぎると顎の発育が終わりに向かうからです。冒頭でも述べた「矯正は子どもの頃にしておいた方が良い」理由もここにあります。顎の発育が盛んな小児期の数年間で治療を行わなければ、適切な矯正効果も得られなくなってしまうのです。

小児矯正で顎を広げるメカニズム

小児矯正では主に「拡大床(かくだいしょう)」と呼ばれる装置を使って顎を広げます。 例えば、上顎の幅が狭くて、将来的な出っ歯や乱ぐい歯を引き起こしかねない症例では、拡大症で上顎骨を左右に広げる力を働かせます。この時にポイントとなるのが「正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)」です。

実は上顎骨というのは、もともと2つに大きく分かれていて、それが結合する形で発育が進んでいきます。そのつなぎ目が正中口蓋縫合で、 小児期であればまだしっかりと癒合していないことから、拡大症でも比較的容易に広げることができるのです。

上顎骨にはその他にも切歯縫合(せっしほうごう)や横口蓋縫合(おうこうがいほうごう)といったつなぎ目がいくつか存在しており、それらが癒合する前の時期であれば、適切な矯正力を働かせることで顎骨を拡大できます。

顎を広げる小児矯正の種類

顎を広げる小児矯正の種類 顎の幅や長さを広げる小児矯正では、次のような種類の装置を使用します。これらは患者さんが自由に選べるというよりは、症例によって自ずと種類が決まることの方が多いといえます。

可撤式矯正装置

可撤式矯正装置とは、その名の通り自分の意志で撤去できる装置で、拡大症が該当します。拡大症は、レジン製のプレートと矯正用ワイヤーで構成された、マウスピースのような矯正装置です。中央部分には、自分で回すことができるネジが付いているタイプとそうでないタイプがあります。ネジで回すタイプは、歯科医師が指示した間隔でネジを回すことで、矯正力を継続的にかけることができます。

固定式矯正装置

固定式矯正装置は、歯科医師が口腔内にしっかりと固定するため、患者さんが自由に取り外すことはできません。ですから、可撤式矯正装置よりもお子さんの心身にかかる負担はやや大きくなります。金属がベースとなる装置が1日中、口腔内に固定されていることから、食事や歯磨き、会話の時に大きなストレスを感じることでしょう。

そんな固定式矯正装置としては、急速拡大装置が第一に挙げられます。可撤式の拡大床よりも短期間で顎の骨を広げられるため、治療期間も短く済みます。その分、顎の拡大に伴う痛みは強くなります。

顎外固定装置(がくがいこていそうち)

顎外固定装置は、口腔の外に固定するタイプの装置です。具体的には、ヘッドギアやチンキャップ、上顎前方牽引装置(じょうがくぜんぽうけんいんそうち)などが該当します。ヘッドギアやチンキャップは、顎の成長を抑制する際に使うのが主な目的であるため、今回のテーマである「顎を広げる」ための装置ではないといえます。一方、上顎前方牽引装置は、文字通り上の顎を前方へと引いて、その成長を促す装置であることから、顎を前後に広げることが可能です。

顎を広げる小児矯正のメリット

顎を広げる小児矯正のメリット 小児矯正で顎を広げると、次に挙げるようなメリットが得られます。

骨格と歯列を整えられる

顎を広げる処置が必要なケースは、ほぼ間違いなく骨格的な劣成長と歯列不正を伴います。さまざまな装置を使って顎を広げることができれば、骨格が正常に発育し、悪い歯並びも自ずと整っていきます。これは顎を広げる小児矯正で得られる最も大きなメリットといえるでしょう。

口腔衛生を保ちやすくなる

顎の骨が広がって、歯並び・噛み合わせが正常化されると、歯磨きしやすい口内環境が整います。基本に忠実なブラッシング法を実践するだけでも、磨き残しが少なくなることでしょう。その結果、細菌が住み着きにくくなり、むし歯や歯周病リスクも低減できます。

将来の医療費を節約できる

小児矯正で歯並び・噛み合わせが正常になると、上述した歯周病とむし歯のリスクが減るだけでなく、歯の寿命を延ばすことにもつながります。なぜなら日本人が歯を失う原因の第一位と第二位が歯周病とむし歯だからです。失った歯の治療法としては近年インプラントが人気ですが、1本あたり300000〜500000円程度の費用がかかります。

その他の方法で治療したとしても、口腔全体のバランスや健康状態は、すべての歯がそろっている時より悪化します。そのため、別の病気やトラブルに見舞われることも少なくありません。その都度、医療費がかかることを考えたら、小児期に効率よく矯正を行い、健全な歯並び・噛み合わせを手に入れておいた方が良い といえるでしょう。

顎を広げる小児矯正のデメリット

顎を広げる小児矯正のデメリット 顎を広げる小児矯正は、お子さんの人生に多大なメリットをもたらしてくれますが、同時にいくつかのデメリットを伴うことも知っておきましょう。いずれも短期的なデメリットにとどまりますが、小児矯正も万能ではない点を理解しておくことが大切です。

治療期間が長くなることがある

顎を広げる小児矯正は、ケースによって治療期間が大きく異なります。一般的には1年から1年半程度はかかりますが、顎の骨の状態が悪い場合はそれ以上の期間を要することもあります。また、顎を広げる小児矯正は、いわゆる1期治療であり、お子さんの歯並びによっては、2期治療にあたる歯列矯正も行うため、全体の治療期間はそれなりに長くなることを知っておいてください。1期治療はあくまで歯をきれいに並べるための土台を作る治療であって、歯並びの乱れを細かく整えることは難しいのです。

むし歯のリスクが高まる

顎を広げる小児矯正は、顎の発育を促して、歯磨きしやすい歯並び・噛み合わせを手に入れることがひとつの目的となっていますが、治療期間中は逆にむし歯リスクが高まります。それは装置によって口腔衛生状態が悪くなるからです。拡大床のような可撤式矯正装置を適応した場合は、食事や歯磨きを普段通りに行えることから、むし歯リスクは比較的低く抑えられますが、それでもやはり口の中は不潔になりがちです。

固定式矯正装置は、食事や歯磨きをする時も装置が口腔内に固定されているため、むし歯のリスクは著しく高くなります。顎を広げる小児矯正の期間中は、いつもよりもセルフケアとプロフェッショナルケアを徹底する必要があります。

違和感や痛みがある

顎を広げる小児矯正では、複雑な形態の矯正装置を使用します。とくに固定式矯正装置や顎外固定装置は装着時の違和感や痛みが強くなりますので、その点は十分にご注意ください。はじめの頃はお子さんが嫌がって治療を進めることが困難となるかもしれませんが、時間の経過とともに装置による違和感が少なくなっていきます。

治療の結果には個人差がある

小児矯正によって得られる効果は、一人ひとりで大きく異なります。拡大床や上顎前方牽引装置などを用いてもほとんど効果が得られない場合もあれば、想定よりも大きな効果が得られることもあります。この点は、実際に小児矯正を実施してみなければわかりません。もちろん、顎を広げる小児矯正を適応する時点で、ある程度の効果が期待できるのですが、治療によって得られた結果に満足できるかどうかも個々の価値観によって変わってきます。

子どもの歯並びが悪くなる原因

子どもの歯並びが悪くなる原因 顎の発育の遅れや子どもの悪い歯並びは、遺伝的要因だけで決まるものではありません。次のような悪習癖や歯のトラブルが原因で、歯並び・噛み合わせの異常を招く可能性も十分にあります。

口腔習慣

子どもが普段、何気なく行っている習慣・習癖が歯列不正を引き起こすことがあります。例えば、指しゃぶりが長い期間、習慣化していると、前歯が前方に倒れ込んだり、開咬(かいこう)の症状が現れたりします。舌を前に突き出す舌突出癖でも出っ歯を招きやすいです。その他、爪や唇を噛む癖でも歯並びが悪くなる場合がありますので、十分な注意が必要です。

口呼吸

口呼吸は、顎の発育が遅れ、歯並びが悪くなる主な原因となっています。口で呼吸するだけでなぜ顎の発育が遅れるのか。それは口呼吸で口腔周囲筋が弛緩し、歯列や顎の骨に適度な刺激が加わらなくなるからです。実際、小さい頃からお口ポカンの症状が見られるお子さんの多くで、上顎骨の劣成長が認められます。口呼吸ではかなりの頻度で出っ歯になる点にも注意が必要です。口呼吸では前歯に圧力がかからないことから、自然と前方へと出ていってしまうのです。

乳歯の早期脱落

健全な歯並び・噛み合わせは、子どもの歯から大人の歯への生え変わりが正常に進むことが前提となります。そこで注意しなければならないのが乳歯のむし歯 です。乳歯のむし歯を軽視して放置していると、あっという間に重症化してしまいます。その結果、乳歯を早期に失うことになり、永久歯が生えてくるスペースも塞がってしまう場合があるのです。

また、永久歯の正常な萌出には、乳歯からのサインが必要となります。乳歯がむし歯で早期に脱落すると、乳歯からのサインが下に控えている永久歯に伝わらなくなり、いつまで経っても生えてこない、あるいはおかしな位置に生えてくる、といったトラブルを招いてしまうのです。これを永久歯の萌出遅延、萌出異常といいます。

小児矯正の適切な年齢と治療期間・費用

小児矯正の適切な年齢と治療期間・費用 ここまでは、小児矯正で顎を広げる方法や使用する装置、小児矯正を受けるメリット・デメリットについて解説してきました。最後に、小児矯正を受ける適切な年齢や治療期間、治療費などについても簡単に説明しておきます。

適切な年齢

小児矯正で顎を広げる1期治療は、6~12歳くらいの時期に受けるのが適切です。この時期は、顎の骨の成長が活発であると同時に、乳歯から永久歯へと生え変わる時期でもあるので、歯並びや顎の骨の問題を効率よく改善できます。一部の症例に関しては、3~4歳くらいから顎を広げた方が良い場合もありますので、矯正相談は早期に受けることが推奨されます。

治療期間

小児矯正の治療期間は、子どもの発育状態によって大きく変わります。早くて1年から1年半程度、長い場合は2~3年程度の期間を要することもあります。小児矯正の治療期間が長くなるか短くなるかは、お子さんの治療への協力度によっても変わります。とくに可撤式矯正装置で顎を広げる場合は、その意義や重要性をお子さんにしっかり理解してもらうことが重要となります。

費用

小児矯正にかかる費用も治療期間と同様、ケースによって大きく異なります。その上で大まかな費用について触れると、100000~500000円程度が全国的な相場となっています。これは小児矯正の1期治療にかかる費用で、2期治療が必要となった場合は、さらに出費がかさむことになります。小児矯正の具体的な費用に関しては、矯正歯科でカウンセリングを受けて確認しましょう。

編集部まとめ

編集部まとめ このように、小児矯正で顎を広げる治療は、子どもに多くのメリットをもたらしてくれます。そのため、小児期に歯並びや噛み合わせ、顎の大きさなどに異常が認められる場合は、積極的に矯正を受けた方が良いといえます。ただし、本文でも述べたように小児矯正では、治療期間が長くなったり、むし歯リスクが高くなったりするデメリットも伴いますので、検討する際には歯科医師としっかり相談することが大切です。小児矯正にかかる期間や費用についても、カウンセリングで質問すると良いでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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