ワイヤー矯正

床矯正で顔は変わるのか?メリットやデメリット、成功させるためのポイントを解説

床矯正で顔は変わるのか?メリットやデメリット、成功させるためのポイントを解説

子どもの歯並びの治療では、床矯正(しょうきょうせい)という少し特殊な装置を使うことがあります。小児矯正においては極めて一般的な装置であり、多くの症例で使うことになるのですが、大人の矯正しか知らない方にとっては、床矯正がどんなものなのか気になることでしょう。床矯正を行うと顔が変わるなど、デメリットともとれる変化が生じる話もあります。ここではそんな床矯正の特徴やメリット・デメリット、治療を成功させるためのポイントについてわかりやすく解説をします。

床矯正で顔が変わる?まずはどういうものか知ろう

床矯正で顔が変わる?まずはどういうものか知ろう

床矯正とはどのような治療法ですか?
床矯正とは、プラスチック製の床と金属製のワイヤーやネジなどで構成された装置を使う治療法です。一般的に使われているのは「拡大床(かくだいしょう)」と呼ばれるもので、歯列の幅を広げる際に役立ちます。基本は取り外すことができるタイプの矯正装置なので、学校で装着する必要はありません。
床矯正で使用する拡大床とはどういうものですか?
拡大床は、文字通り歯列を拡大するための装置です。歯科用プラスチックで作られたプレート(床)と金属製のワイヤーやネジなどで構成されています。プレートがないスケルトンタイプもありますが、基本は床があるものとお考えください。いわゆるマウスピース型の矯正装置で、患者さんが自由に取り外せます。発育期のお子さんに使用する場合は、1日12時間以上の装着が必要となります。装置の装着時間を守れないと、適切な矯正効果が得られないため注意が必要です。拡大床によって歯列を正常な範囲まで拡大することができれば、八重歯や乱ぐい歯などが改善可能となります。
床矯正はどんな場合におすすめですか?
床矯正は、叢生(そうせい)という悪い歯並びを治す際に有用です。一般的には乱ぐい歯、八重歯と呼ばれるデコボコの歯並びのことを叢生と呼び、床矯正で歯列の幅を広げることできれいな歯列弓を作れるようになります。ですから、スペースが不足していることが原因の出っ歯でも床矯正は大きな効果を発揮する場合があります。
床矯正は保険適用できますか?
床矯正は、小児期に使用することが多いため、保険が適用されそうなものですが、実際は自由診療となります。小児矯正であっても、原則としては保険適用外となってしまうのです。とはいえ、床矯正はマルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を使った治療よりも費用がかなり安くなっていますので、保険外となったとしても経済的負担は比較的軽く済むことでしょう。

床矯正で顔は変わるのか

床矯正で顔は変わりますか?
床矯正を行うことで顔立ちが変わることがあります。なぜなら床矯正では、歯列の幅を拡大することが可能だからです。狭まっていた歯列の幅を拡大すると、歯をきれいに並べるためのスペースが確保されるため、歯並びが整います。その結果として口元のバランスも整い、顔貌にも良い変化がもたらされます。乱ぐい歯などの影響で左右非対称だった顔貌が左右対称となるケースは少なくありません。これは歯並び・噛み合わせが良くなることでそしゃく能率が上がり、口腔周囲の筋肉をバランスよく使えるようになることも関係しています。
床矯正で顔や顎は大きくなりますか?
床矯正で歯列が拡大されると、顔や顎が大きくなるイメージを持たれるかと思いますが、実際はそうならないことの方が多いです。歯列が拡大されても、顎が横に広がったり、前に突出したりするわけではないからです。むしろ、十分なスペースを確保できることで歯並び・噛み合わせが正常化され、口元がスリムになるケースも珍しくありません。悪い噛み合わせだと、口腔周囲筋を必要以上に使ってしまうため、筋肉が発達しすぎることもあるのです。
床矯正で歯と歯に隙間ができたけど大丈夫ですか?
床矯正で歯列を拡大すると、歯と歯の間に不自然なすき間が生じることがありますが、とくに気にしなくて良いです。むしろ、歯をきれいに並べるためのスペースを確保できたことに喜んだ方が良いといえます。床矯正というのはそもそも本来必要な隙間が存在していないようなケースに適応される装置なので、治療の結果として隙間ができたとしても何ら問題はありません。もちろん、過剰なほどの隙間が生じた場合は問題となり得ることもありますが、その点は矯正を進めていく中できちんとコントロールできるものです。とくに乳歯列期や混合歯列期は、これからまだまだサイズの大きな永久歯が生えてくるため、スペースが余っていた方が都合も良くなります。
床矯正で出っ歯になるリスクはありますか?
床矯正で出っ歯になることはまずありません。確かに、床矯正では歯列を拡げたり、顎の発育を促進したりできるため、出っ歯の症状が誘発されそうなものですが、結果として出っ歯の症状を改善できることの方が多いです。ただし、不適切な方法で床矯正が行われた場合は、出っ歯になるリスクも生じることから、床矯正で上顎前突になることは絶対にあり得ないとは言い切れません。

床矯正のメリットとデメリット

床矯正のメリットとデメリット

床矯正のメリットはなんですか?
床矯正を行うと、第二期治療での抜歯を回避しやすくなります。それは床矯正で歯列や顎の幅が広がり、スペースを解消しやすくなるからです。そのため将来的な抜歯を避けたいと考えている場合は、発育期に床矯正を受けた方が良いといえます。床矯正には、装置を自由に取り外せるというメリットもあります。マルチブラケット装置のように四六時中、口腔内に固定されているわけではないので、心身かかる負担は比較的少ないです。食事や歯磨きも普段通りに行えます。
床矯正のデメリットはなんですか?
床矯正の適応範囲はそれほど広くはありません。発育期の子どもだからといって、すべてのケースで使えるわけではないのです。また、装置の性質上、歯並びを細かく整えることもできませんので、その点は正しく理解しておく必要があります。その他、着脱式の装置ゆえに、紛失や破損のリスクが高いというデメリットも伴います。床矯正装置を紛失したり、破損したりすると、再製作しなければならず、余計な費用が発生します。治療期間も自ずと長くなってしまうことでしょう。ですから、床矯正を始めた方は装置の取り扱いや保管方法にも最新の注意を払うようにしてください。

床矯正を成功させるためのポイント

床矯正による矯正治療の適齢期はいつですか?
床矯正は、永久歯が生え変わる6歳から9歳ごろまでに治療を始めると良いです。永久歯が生えそろう12歳ごろは、顎の骨の発育も終わりに近づいており、床矯正による治療効果も半減してしまいます。ただし、床矯正には、歯列を単純に広げる効果も期待できることから、25歳くらいまではワイヤー矯正などと併用可能です。さすがに30代や40代になると床矯正による効果も得られにくくなります。
床矯正による矯正治療を成功させるためのポイントはありますか?
床矯正による治療を成功させる上で最も重要なのは、本人のやる気です。床矯正の多くは着脱式の装置であることから、装着しなければ治療効果が得られません。例えば、1日12時間以上の装着が義務付けられているにもかかわらず、眠っている以外は外してしまっているような場合は、ほぼ間違いなく床矯正治療が失敗に終わります。ですから、床矯正を始めるに当たり、まずはお子さんがその必要性をしっかり理解することが重要となります。その際、大切なのが信頼できる小児歯科の先生との出会いです。お子さんが通い続けたい、治療を頑張りたいと思えるような歯科医師と出会えれば、床矯正へのモチベーションも自ずと向上します。その点も踏まえた上で、歯科医院選びは慎重に行うようにしましょう。

編集部まとめ

今回は、床矯正の特徴やメリット・デメリット、治療を成功させるためのポイントについて解説しました。床矯正は6~9歳くらいの発育期に始めることで、その効果を最大限まで発揮できる治療法です。適切な効果が得られれば、顔立ちが健やかとなり、顔貌の歪みなども改善されるかもしれません。床矯正によって十分なスペースが作り出されれば、将来的な抜歯も回避できる可能性も高まります。お子様のために、床矯正を迷われている方は一度、歯科医院にご相談いただくことをおすすめします。本メディアでは歯の健康に役立つ情報を他にも多く発信しているので、ぜひご参考ください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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