ワイヤー矯正

歯列矯正後のホワイトニングはいつから?どちらを先にすべき?

歯列矯正後のホワイトニングはいつから?どちらを先にすべき?

きれいな口元がほしいと考えている方は、歯並びをよくする歯列矯正と、歯の色を改善するホワイトニングの両方を検討しているかと思います。どちらも一般歯科の治療とは異なるもので、いずれも行ないたいと考えている場合、どちらから先に治療してもらう方がよいかなど、わからない点がたくさんあります。ここではそんな歯列矯正とホワイトニングの両方を行いたい方に向けて、それぞれの特徴や種類、併用する場合の適切なタイミングなどを詳しく解説します。

ホワイトニングの基本知識

ホワイトニングの基本知識 はじめに、ホワイトニングの基本知識を確認しておきましょう。ここでは歯科医院で受けられるホワイトニングを前提に、解説を進めていきます。

ホワイトニングとは

ホワイトニングとは、食品の色素やタバコのヤニなどが原因で、歯の黄ばみや黒ずみが目立つようになった症状を改善するための処置です。

歯科医院のホワイトニングでは、主に過酸化水素や過酸化尿素からなる薬剤をエナメル質に浸透させて、歯の漂白を行います。市販されているホワイトニング用の歯磨き粉やホワイトニングサロンで受ける施術は、歯の表面の汚れを除去するにとどまりますが、歯科医院のホワイトニングでは、漂白作用によって歯の内部に沈着した汚れを化学的に分解・除去できます。やや刺激の強い薬剤を使うものの、施術をするのが歯科医師や歯科衛生士といった専門のスタッフであることから、健康被害が生じるリスクは低いです。

ホワイトニングの種類とその特徴

歯科医院のホワイトニングは、オフィスホワイトニング、ホームホワイトニング、デュアルホワイトニングの3種類に分けられます。

◎オフィスホワイトニング
過酸化水素という漂白作用の強い薬剤を使うホワイトニング法です。すべての処置を歯科医師か歯科衛生士が行い、歯科医院のみで施術が完結することからオフィスホワイトニングという名前がつけられています。

オフィスホワイトニングは、即効性が高いというメリットがありますが、ホームホワイトニングと比較すると持続性に劣ります。歯を白くする効果は、ホームホワイトニングより高いです。

◎ホームホワイトニング
自宅で患者さん自身で施術する方法をホームホワイトニングといいます。歯科医院にて、患者さん専用のカスタムトレーを製作します。歯科医院で処方されたホワイトニング剤を用いて、患者さんの都合に合わせてホワイトニングをすることができます。

ホームホワイトニングで使用する薬剤は、過酸化尿素という、やや漂白作用の弱い薬剤を使用するため、歯が白くなるまでに2週間程度かかります。ホワイトニング剤がエナメル質へとじっくり浸透することから、ホワイトニング効果の持続期間はオフィスホワイトニングよりも長くなるとされています。

◎デュアルホワイトニング
オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用する方法をデュアルホワイトニングといいます。オフィスホワイトニングの即効性とホームホワイトニングの持続性の両方が期待できることから、歯の美しさを追求したい方にはおすすめの施術法といえます。

ただし、オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを併用するため、費用が高くなるだけでなく、治療の手間も増えてしまいます。

歯列矯正後の歯の黄ばみとホワイトニングについて

歯列矯正後の歯の黄ばみとホワイトニングについて 次に、歯列矯正後の歯の黄ばみの原因とホワイトニングに適した時期について解説します。

歯列矯正後にホワイトニングができる時期

マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置で歯を動かした後なので、基本的には歯面に何もない状態となることから、いつでもホワイトニングは開始できます。ただし、矯正装置を外した後に用いるリテーナーの種類によっては、ホワイトニングの処置がやりにくくなることがあります。

リテーナーには、マウスピースタイプ、フィックスタイプ、プレートタイプがあり、マウスピースタイプとプレートタイプは着脱式なので、ホワイトニングの際に邪魔になることはありません。

一方、フィックスタイプは歯面に固定するタイプであるため、設置した部位や設計によっては、ホワイトニング処置を妨げることがあるかもしれません。基本的には前歯の裏側に固定するのが一般的であるため、ホワイトニングは問題なく行えますが、気になる方もいるかもしません。

歯列矯正後に歯が黄ばんでしまう理由

歯列矯正でマルチブラケット装置を使用したケースでは、ブラケットを撤去した後に歯の黄ばみが目立つことがあります。ワイヤー矯正でよく見られる現象で、以下のような理由があげられます。

【理由1】矯正装置による清掃性の低下
歯列矯正中は、装置が邪魔で歯磨きが不十分になりがちです。歯垢や歯石がたまり、色素も沈着しやすい環境となることから、歯の黄ばみやすくなります。

【理由2】食品の色素による影響
コーヒーや紅茶、赤ワインなどを習慣的に飲んでいる方は、歯が黄ばみやすいです。特に歯列矯正中は、歯磨きがしにくくなるため色素が沈着しやすいです。

【理由3】喫煙習慣がある
タバコの煙に含まれるヤニも歯を黄ばませる主な原因です。歯列矯正中に喫煙習慣があった方は、装置を外した後に歯の黄ばみが目立ちます。

歯列矯正とホワイトニングの順番

歯列矯正とホワイトニングの順番 続いては、歯列矯正とホワイトニングの両方を検討中の方に向けて、どちらを先に行うべきかを解説します。

歯列矯正を先にするのが一般的

歯列矯正とホワイトニングの両方を行う予定であれば、歯列矯正を先に実施するのが一般的です。それは次に挙げる理由からです

【理由1】矯正装置が邪魔になる
ワイヤー矯正では、歯列の表側にブラケットとワイヤーが固定されることから、装置がホワイトニングの邪魔になります。そのままの状態でホワイトニング処置をほどこすと、露出している歯面のみが漂白されるため色ムラが生じます。 歯列矯正後に再びホワイトニングすることで、残りの歯面も漂白することは可能ですが、均一できれいな仕上がりを望むのなら、矯正装置を外した後に行う方がよいでしょう。

【理由2】歯が移動するため
歯列矯正前は露出していなかった歯面が、矯正治療によって見えるようになることがあります。歯列矯正前にホワイトニングすると、歯列矯正後にはまだ白くなっていない歯面が目立ってしまいます。審美性を低下させる要因となるため、歯列矯正を経て歯が完全に移動してからホワイトニングした方がよりきれいな仕上がりが期待できます。

歯列矯正とホワイトニングを同時にすることも可能

歯列矯正の方法によっては、ホワイトニングと同時に行うこともできます。

マウスピース型矯正と裏側矯正(舌側矯正)は、ホワイトニング処置の妨げとならないので、並行して行う方もおられます。歯列の状態によっては、誰もが同時にできることではありません。歯列矯正とホワイトニングの併用を考えている方は、歯科医師に相談するようにしてください。

歯列矯正の種類別、ホワイトニングのタイミング

歯列矯正の種類別、ホワイトニングのタイミング ホワイトニングに適したタイミングは、歯列矯正の種類によって変わります。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正でホワイトニングを行う場合は、矯正前と矯正後が適切なタイミングといえます。どちらも矯正装置が装着されていない状態なので、ホワイトニング処置に支障をきたすことはありません。歯の白さをできるだけ長く維持したい場合は、矯正前と矯正後の両方のタイミングでホワイトニングするとよいでしょう。

裏側矯正(舌側矯正)

歯列の裏側にブラケットとワイヤーを固定する裏側矯正(舌側矯正)なら、矯正前、矯正中、矯正後のタイミングでホワイトニングを行えます。歯科医院のホワイトニングは、歯の表側のエナメル質を白くすることが目的なので、裏側に装置が装着されていても邪魔になることはありません。ただし、ハーフリンガルのような下だけ表側矯正で治療する方法を選択したり、特別な装置を併用したりするケースでは、矯正期間中のホワイトニングが難しくなるため、詳細については歯科医師に問い合わせるようにしてください。

マウスピース型矯正

マウスピース型矯正も裏側矯正(舌側矯正)と同様、歯列矯正中のホワイトニングに適しているといえます。マウスピース型矯正では、矯正装置を患者さんの意志で自由に取り外せるからです。歯列矯正を始める前と同じ状態であるため、治療中であってもホワイトニングに関する制約がないことを意味します。

マウスピース型矯正の種類によっては、矯正用のマウスピース(アライナー)自体をホワイトニング用のマウストレーとして使用できるシステムもあります。

ただし、マウスピース型矯正でもホワイトニングに関して注意しなければならないことがあります。それはアタッチメントと呼ばれるパーツです。アタッチメントとは、歯科用プラスチックであるレジンで作られた突起状のパーツで、主に、歯の表側に接着することから、その状態でホワイトニングを行うと色ムラが生じてしまうのです。

もちろん、ホワイトニングのためにアタッチメントを除去して、施術後に再び接着するという方法も選択できますが、費用や手間が余計にかかる点に注意しなければなりません。そういう意味でマウスピース型矯正中にホワイトニングを行う場合は、アタッチメントをつける前か撤去した後の方が好ましいといえます。

矯正治療中にホワイトニングを受ける際のセルフケア

矯正治療中にホワイトニングを受ける際のセルフケア ワイヤー矯正やマウスピース型矯正の治療期間中にホワイトニングを受ける場合は、次の方法でセルフケアしましょう。

ホワイトニング用の歯磨き粉を使用

日頃からホワイトニング効果が見込める歯磨き粉を使うことで、歯面や矯正装置に汚れがつきにくくなります。歯科医院のホワイトニングは、歯の内部に沈着した汚れを化学的に分解・除去するのが主な作用であるため、歯面に堆積した歯垢や歯石によって、効果を減弱させてしまうことがあります。ホワイトニング用の歯磨き粉には研磨剤や発泡剤が含まれており、歯面の汚れを効率よく落としやすくなっています。

歯ブラシとデンタルフロスで丁寧に磨く

毎日のセルフケアでは、通常の歯磨きに変えて、デンタルフロスを用いて磨くようにしてください。歯と歯の間の汚れはデンタルフロスのような専用の清掃器具でなければきれいに取り除くことが難しいです。

矯正中にホワイトニングをするときの注意点

歯列矯正中のホワイトニングで注意すべき点を3つ紹介します。

歯並びによっては効果がでにくい

歯列矯正中は、歯並びが悪い状態であるため、ホワイトニング効果が得られにくい場合があります。例えば、デコボコの歯並びである叢生(そうせい)は、薬剤の塗布や光照射を歯列の隅々まで行うことが困難な場合があります。

矯正治療中に痛みがあるとできないことがある

矯正力によって歯が大きく動いているときは、歯の移動に伴う痛みが強くなります。歯の神経が外からの刺激に敏感になっていることもあり、知覚過敏の症状が出やすいホワイトニングは施術できない場合があります。無理にホワイトニングをすると、歯髄炎にまで発展するおそれもあるため、施術を検討する際には歯科医師としっかり相談することが大切です。

マウスピース型矯正では色ムラがでることがある

マウスピース型矯正でアタッチメントを装着している場合は、ホワイトニングで色ムラが出やすいです。アタッチメントがついている部分にはホワイトニング剤が浸透しないからです。ホワイトニング剤を活性化させるための光もアタッチメント部分には届きません。

まとめ

今回は、歯列矯正とホワイトニングの両方を検討中の方に向けて、施術のタイミングや順序について解説しました。歯列矯正では、専用の装置を装着することと、歯が移動することを踏まえると、治療が終わった後にホワイトニングした方が仕上がりもよくなります。アタッチメントを装着していない状態でのマウスピース型矯正や裏側矯正(舌側矯正)であれば、歯列矯正中でも問題なくホワイトニングが受けられます。このように、矯正法の種類によってもホワイトニングとの相性は大きく変わるため、歯並びと歯の色の治療を同時に行いたいと考える方は、それに適した方法を選択することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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