ワイヤー矯正

裏側矯正(舌側矯正)の滑舌への影響は?慣れるまでの期間・喋り方のコツを解説

裏側矯正(舌側矯正)の滑舌への影響は?慣れるまでの期間・喋り方のコツを解説

歯並びを治したいと思っても、矯正装置が目立つのが嫌な方には裏側矯正(舌側矯正)は有力な選択肢となります。

しかし歯の裏側(舌側)に矯正装置を付けることで滑舌が悪くなる・舌が痛くなるなどの悪影響を心配する方も少なくありません。

この記事では裏側矯正(舌側矯正)の特徴・滑舌に影響が出る原因・その対処法を解説します。

裏側矯正(舌側矯正)を検討している方がそのメリット・デメリットを理解し、ご自身に適した選択をする参考になれば幸いです。

裏側矯正(舌側矯正)の治療方法

歯

裏側矯正(舌側矯正)とはどのような矯正方法ですか?
裏側矯正(舌側矯正)とは、歯の裏側(舌側)にリンガルブラケットと呼ばれる器具を装着して歯並びを矯正する治療です。特徴は矯正装置を裏側(舌側)に付けることで、外側からはほとんど見えなくなります。
歯の唇側に付けるラビアルブラケットは目立つことがネックとなり、費用が高くなっても審美面から裏側矯正(舌側矯正)を選ぶ患者さんが少なくありません。
歯を動かす力は表側に付ける場合と変わらないため、マウスピース型矯正では治療できない症例にも適応できます。歯の裏側に矯正装置を装着するため、歯の表側には傷が付かないことも大きなメリットです。
また、特に前歯を裏側から引っ張って動かすため、出っ歯(上顎前突)・受け口(反対咬合)などの歯列矯正では装置が外れる前から前歯がきれいに見えます。
治療期間はどのくらいですか?
歯の表側にラビアルブラケットを付ける一般的な歯列矯正よりも、歯の裏側(舌側)にリンガルブラケットを付ける裏側矯正(舌側矯正)の方が歯列矯正にかかる治療期間は長くなる傾向があります。
治療期間は口腔内の現状・行う治療内容によって大きく異なりますが、一般的には2~3年程度です。治療期間中は1ヵ月に1回を目安に通院し、歯の動き方に応じて矯正装置を調整していきます。
簡単な治療で改善する場合には半年程度で終了するケースもあり、まずは矯正歯科医で診察してもらうのがよいでしょう。
費用の目安はどのくらいでしょうか?
歯の裏側(舌側)に矯正装置を適切に装着して正確に歯を動かしていくには高い技術力が必要なため、裏側矯正(舌側矯正)の費用は表側に比べて高額になります。治療内容や期間によっても大きく異なりますが、一般的な相場は100万~130万円(税込)です。
歯列矯正は特別な病気や事故によって歯並びが乱れた場合を除いて、保険適用になりません。保険適用になるのは歯の表側に装着するラビアル矯正のみで、裏側矯正(舌側矯正)は審美目的とみなされるため、いかなる場合でも保険適用にはならず高額な費用がかかってしまうのです。

裏側矯正(舌側矯正)の滑舌への影響・慣れるまでの期間

目を閉じる

滑舌が悪くなる理由を教えてください。
歯の裏側(舌側)に矯正装置を装着することで、舌の動きが制限される・口腔内での音の共鳴が変わるなどの影響で滑舌が悪くなったと感じる方は少なくありません。
実際に裏側矯正(舌側矯正)を行った患者さんへのアンケートでは、製品によって16〜25%の患者さんが「喋りにくい」と回答しています。舌の動きがどの程度制限されるかは、リンガルブラケットを取り付ける位置や歯並びによって大きく異なります。
また、口のの異物感にどの程度影響を受けるかは個人差が大きいため、実際に付けてみないとわからない部分も大きいでしょう。
裏側矯正(舌側矯正)に慣れるまでの期間はどのくらいですか?
裏側矯正(舌側矯正)を始めた直後は喋りにくさや痛みを感じますが、通常は数週間で滑舌への影響は減少していきます。
特に普段から喋ることの多い方は、裏側矯正(舌側矯正)への順応も早くなる傾向があります。仕事や学業で重要な講演・会議などが予定されている場合は、裏側矯正(舌側矯正)を開始した直後にならないよう調整した方が無難でしょう。
特に発音しづらい音を教えてください。
矯正装置を装着する位置によって、滑舌への影響は異なります。上顎に装着した場合は特に発音・構音への影響が大きく、下顎に装着した場合は舌の動きに影響を受けます。
舌を使う発音として、日本語ではさ行・た行・ら行の音が特に発音しづらくなるのが特徴です。英語ではthの発音に、影響が大きいといわれています。
滑舌への影響が少ない裏側矯正(舌側矯正)はありますか?
裏側矯正(舌側矯正)が普及するにしたがって、滑舌への影響を抑えた矯正装置も登場しています。日本の竹元京人医師が開発したALIAS(アリアス)は、複雑なワイヤー調整を必要としないシンプルな構造で装置全体を大幅にコンパクト化したものです。
これによって口腔内での違和感・滑舌への影響も軽減されました。また、ドイツのWiechmann医師が開発したIncognito(インコグニート)システムは、3Dスキャン技術により矯正装置を装着する位置を正確に決定するのが特徴です。矯正装置のズレや取り付けエラーによる失敗リスクを減らし、装置全体もコンパクト化して滑舌への影響を抑えて欧州ではシェア60%を占めています。
このように滑舌への影響が少ない矯正装置があるため、裏側矯正(舌側矯正)に大変なイメージを持っていた方も、まずは矯正歯科医で相談してみてはいかがでしょうか。

裏側矯正(舌側矯正)中の喋り方のコツと対処法

歌う

滑舌の悪さを改善する喋り方のコツはありますか?
裏側矯正(舌側矯正)中でも、心がけ次第できれいに喋ることは可能です。歯の裏側(舌側)に矯正装置を装着していては喋りにくいのは当然ですが、だからこそいつもよりゆっくり正確に喋ることを意識してください。
特に母音の発音をはっきりするように意識すると、相手に聞こえやすくなります。スローペースの会話をしながら、口のなかで舌の動きや音の形成を意識して話すことを意識しましょう。
滑舌の悪さを改善するためのトレーニングはありますか?
裏側矯正(舌側矯正)は2~3年の長期間に及ぶため、喋りにくさに早めに慣れた方が治療期間中のQOLが高まります。まずは誰もいないところでスピーチ練習や発声練習を行い、口のなかの異物感に慣れることです。また歯並びの悪い方は、舌の癖が悪いことも少なくありません。
いわゆる出っ歯(上顎前突)・受け口(反対咬合)の方は舌で前歯を押す癖がある傾向があるため、裏側矯正(舌側矯正)を機に舌の癖を治すトレーニングも行いましょう。代表的な舌のトレーニングであるあいうえべ体操は、大きな口で「あー・いー・うー・えー・べー」と1秒ずつ声に出します。
べーのときに舌を大きく前に出すのがポイントで、舌の筋力だけでなく表情筋の引き締めにも有効です。歯並びの悪い方は元から滑舌が悪い場合も少なくありませんが、裏側矯正(舌側矯正)を契機に滑舌トレーニングを行ってきれいに喋れるようになれれば一石二鳥です。
滑舌に影響がある場合の対処法はありますか?
裏側矯正(舌側矯正)を開始した直後に喋りづらくなるのはよくみられる症状であるため、過度に心配する必要はありません。ほとんどの場合は1ヵ月程度で違和感に慣れて、いつもどおり喋れるようになるでしょう。
裏側矯正(舌側矯正)の治療中は月に1回の通院が必要となるため、もし滑舌への影響が強い・慣れないと感じる場合は、通院の際に歯科医師に相談してください。矯正装置の装着中に急激な違和感や痛みを感じた場合は、装置がずれたり外れたりした可能性があるため、速やかに受診するようにしましょう。

編集部まとめ

口元を指さす女性

裏側矯正(舌側矯正)の滑舌への影響・対処法を解説しました。

歯の裏側(舌側)に矯正装置を付けるため目立ちにくい裏側矯正(舌側矯正)は、審美性の高さから検討する方が少なくありません。

しかしメリットは見た目だけでなく、歯の表側を傷つけない・装置が外れる前から見た目が良くなるなどの機能面です。

その一方で滑舌が悪くなる・舌が痛くなるなどのデメリットも指摘されますが、悪影響を少なくした矯正装置も続々と開発されてています。

歯並びの悪さ自体が滑舌の悪さの原因ともなるため、裏側矯正(舌側矯正)を契機に滑舌のトレーニングを行えば、歯並び改善と合わせて以前よりきれいに喋れるようになるでしょう。

滑舌への悪影響も過度に心配しすぎず、まずは矯正歯科医に相談してみてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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