歯並びの治療法としてもっとも標準的なワイヤー矯正。歯の表面にブラケット装置とワイヤーを固定することで、悪い歯並びが徐々に改善されていきます。近年、急速に広まっているマウスピース型矯正よりも適応範囲が広く、歯を効率よく動かせることから、歯並びの治療法として第一に検討している方も少なくありません。ここではそんなワイヤー矯正の通院期間や通院頻度、治療を進めて行くうえでの注意点などを詳しく解説します。
ワイヤー矯正の治療期間と通院頻度
はじめに、ワイヤー矯正で歯並びを治す場合の治療期間と通院頻度について解説します。
- ワイヤー矯正の治療期間は、どのくらいかかりますか?
- ワイヤー矯正の治療期間は、歯並びの重症度によって変わります。例えば、前歯が少しだけ前方に傾いていたり、軽度のデコボコがあったりする程度の歯並びなら、前歯だけの部分矯正で対応できることもあります。その場合の治療期間は、3〜12ヵ月程度です。標準的な出っ歯や受け口、乱ぐい歯などをワイヤー矯正で治す場合は、上下すべての歯を動かす全体矯正が必要となることから、治療期間は1〜3年程度かかります。重症度の高い症例は、たくさんの歯を便宜的に抜歯したり、顎の骨を削る外科処置が必要となったりするため、ワイヤー矯正にかかる治療期間は3年を超えることも珍しくありません。
◎保定にかかる期間について
上述した期間は、ブラケット装置で歯を動かす動的治療に限られます。ワイヤー矯正では必ず動的治療の後に、歯の後戻りを防止するための保定処置が必要となります。保定にはリテーナーと呼ばれる装置を使用しますが、以下に挙げる期間、装着する必要があります。・保定開始から1年間は1日20時間
・保定1年以降は毎日12時間程度
・保定2年は毎日夜間8時間程度
・保定3年以降は2日ごとに夜間8時間程度
・保定4年以降は週2回夜間8時間程度
・保定5年目以降は週1回夜間8時間程度
- ワイヤー矯正では、どのくらいの頻度で通院が必要か教えてください
- 標準的なワイヤー矯正のケースでは、1ヵ月に1回の通院が必要となります。これは部分矯正でも全体矯正でも大きな差はありません。マウスピース型矯正のインビザラインでは、2ヵ月に1回の通院で治療を進めることができるため、ワイヤー矯正の通院頻度に不満を感じる方も少なくないでしょう。ちなみに、保定期間中の通院頻度は、3〜12ヵ月に1回程度となっています。歯並びがまだ安定してない初期の頃は、3ヵ月に1回通院して、その後は徐々に間隔を伸ばしていきます。
- 通院の頻度は人によって異なりますか?
- ワイヤー矯正の通院頻度に個人差はあまりありません。便宜抜歯が必要であったり、矯正用アンカースクリューのような特殊な装置を併用したりする場合は、通院頻度が増えることもあるかもしれませんが、基本的には1ヵ月に1回になります。
- 治療初期、中期、後期での通院頻度に違いはありますか?
- ワイヤー矯正の治療初期は通院頻度は増えます。例えば、小臼歯4本と親知らず4本の合計8本の抜歯を行う場合、8ヵ月かけても処置が完了することはありません。親知らずの生え方や埋まり方によっては、矯正歯科での処置が難しく、病院の口腔外科に通院することもあるでしょう。抜歯の有無や患者さんのお口の状態によっては、治療初期から1ヵ月に1回の通院で始まられることもあります。
治療中期から後期にかけては、ワイヤーを曲げて歯並びを細かく調整していく処置が必要になります。治療初期よりは通院頻度は少なくなる傾向です。
通院頻度が治療に与える影響
次に、ワイヤー矯正の通院頻度が治療に対してどのような影響をもたらすのかについて解説します。
- 通院の頻度が治療結果にどのような影響を与えるのか教えてください
- 適切な方法でワイヤー矯正を行っている限り、通院の頻度が治療結果に影響を与えることはほとんどありません。ワイヤー矯正は装置が歯列に固定されているため、1ヵ月に1回の通院を2ヵ月に1回に延ばしたからといって、歯の動きが悪くなったり、後戻りしたりする可能性は少ないからです。
ただし、あまりにも通院頻度が少なくなると、ワイヤーやブラケットに異常が生じた際の対処が遅れることがあるので、歯科医師に指示された通院間隔を守りましょう。また、通院の間隔が長くなった分だけ、治療期間も伸びていく点に注意が必要です。
- 通院を怠るとどのようなリスクがありますか?
- ワイヤー矯正の通院を怠ると治療期間が長くなることがあります。ワイヤー矯正は、1ヵ月に1回の間隔でワイヤーを調整することで歯を動かしていきます。また、定期的な通院は、矯正装置や歯、歯茎に異常がないかを調べる目的もあるため、お口のトラブルの発見も遅れるリスクがあります。
- 定期的なチェックが必要な理由を教えてください
- ワイヤー矯正は、ブラケットを設置した部位やワイヤーの曲げ方によって想定外の力が歯にかかることがあります。その状態で数ヵ月放置していると、歯や歯茎、顎の骨にダメージが加わってさまざまなトラブルを引き起こすことになります。
また、ワイヤー矯正をしていると、食べかすや歯垢、歯石などがたまりやすいため、歯周病やむし歯のリスクも増加してしまいます。そのため、1ヵ月に1回は歯科医師によるチェックを受けておいた方がよいでしょう。
ワイヤー矯正中にむし歯や歯周病を発症した場合、治療のためにブラケットやワイヤーを外さなければなりません。装置を外している間は歯の後戻りも生じるため、治療期間はさらに伸びてしまうでしょう。
- 通院頻度を減らす方法はありますか?
- ワイヤー矯正で通院頻度を減らす方法は基本的にありません。仕事が忙しいなどの理由で、通院頻度を2ヵ月に1回へと減らすことは可能ですが、治療期間も長くなってしまいます。
- なかなか時間をとれない場合でも治療を継続するためのポイントを教えてください。
- ワイヤー矯正によって得られるメリットを意識することが大切です。ワイヤー矯正をやり遂げれば、長年のコンプレックスだった歯並びがきれいになる、食べものが噛みやすくなる、歯磨きしやすくなって口臭も抑えられるなど、歯並びがきれいになったときの生活をイメージしましょう。
また、忙しい人はワイヤー矯正の歯科医院選びの時点で、以下のポイントに留意することが大切です。
・職場や自宅から通院しやすい立地にある
・歯科医師との相性がよい
・予約がとりやすい
・急なトラブルにもしっかり対応してくれるこれらの条件を満たす歯科医院なら、忙しくて時間が取れない方でも継続通院しやすくなります。
編集部まとめ
今回は、ワイヤー矯正の通院期間や通院頻度、通院する際の注意点などを解説しました。ワイヤー矯正は、歯を動かすのに1〜3年程度、後戻りを防止するのに1〜3年程度かかるのが一般的で、1ヵ月に1回の通院が必要となります。通院を怠ると、さまざまなトラブルに見舞われる可能性があることから、主治医の指示どおりに通院することが大切です。1ヵ月に1回の通院がどうしても難しい場合は、主治医に相談して間隔を空けてもらうか、通院頻度の低いマウスピース型矯正を検討するとよいでしょう。
参考文献