ワイヤー矯正

マルチブラケット装置とは?矯正治療の方法やメリット・デメリットを解説!

マルチブラケット装置とは?矯正治療の方法やメリット・デメリットを解説!

皆さんはマルチブラケット装置をご存知でしょうか?いわゆるワイヤー矯正で用いられる装置で、金属製のワイヤーを引っ掛ける四角いブラケットを指します。マルチブラケット装置は世界でも広く用いられているものなので、誰もが一度は目にしたことがあるものの、実際にどんな効果があって、どのようなメリット・デメリットを伴うのかはよくわからないものです。ここではそんなマルチブラケット装置に関する疑問にお答えします。

マルチブラケット装置を用いた矯正治療とは?

マルチブラケット装置とはどんなものですか?
マルチブラケット装置とは、ワイヤー矯正で用いる装置です。最も標準的なものは金属で作られたメタルブラケットで、歯の表面に接着するとやや目立ちます。そうした審美障害を回避するために、透明なプラスチック製のクリアブラケットや白いセラミックブラケットを用いるケースは年々増えています。1本1本の歯にブラケットを接着して金属製のワイヤーを通すことで、歯を三次元的に動かすことができ、出っ歯や受け口などの歯並びが改善されていきます。
マルチブラケット装置の装着手順について教えてください。
マルチブラケット装置は、専用の接着剤を使って歯面に装着するため、いくつかの前処置が必要となります。まずは歯の表面の汚れをクリーニングで取り除き、その上でエッチングと呼ばれる処置を施します。エッチングは接着剤の作用を高めるための処置です。続いて、歯面接着剤を付けてブラケットを固定します。これを1本1本の歯に対して行っていくため、ブラケットの装着にはかなりの時間を要することでしょう。多くのケースでは、何回かに分けてブラケットを装着していきます。
マルチブラケット装置にはどんな種類がありますか?
マルチブラケット装置は、金属製のメタルブラケット、プラスチック製のクリアブラケット、陶器製のセラミックブラケットの3つに大きく分けられます。メタルブラケットは審美性に難があるものの、費用は最も安いです。耐久性も高く、矯正期間中に歯面から外れることはあっても、ブラケット自体が壊れることはまずありません。クリアブラケットはプラスチックなので耐久性が低く、摩耗しやすいのが難点ですが、費用は安いです。透明であることから、審美障害も現れにくいです。セラミックブラケットはやや費用が高くなる半面、審美性は非常に高いです。ちなみに、ブラケットを歯列の裏側に装着する裏側矯正(舌側矯正)では、リンガルブラケットという特殊な装置を使います。一見すると表側矯正のメタルブラケットと同じように見えますが、構造が異なる点が多々見られます。
マルチブラケット装置を使った矯正治療の流れについて教えてください。
マルチブラケット装置を使った矯正治療は、カウンセリング・矯正相談から始まります。続いて精密検査・診断・治療計画の立案を行い、その内容に合意できたらいよいよ装置の装着です。マルチブラケット装置は複数回に分けて装着し、その後は1ヵ月に1回の頻度でワイヤーを調整していきます。必要に応じて歯列を拡げる装置を併用したり、固定源となるネジ(矯正用アンカースクリュー)を顎の骨に埋め込んだりする処置を施します。そうした歯の移動に1~3年を費やした後、歯並びを固定する保定(ほてい)へと移行します。

マルチブラケット装置を使う矯正治療のメリット・デメリット

マルチブラケット装置を使う矯正治療のメリット・デメリット

マルチブラケット装置を使う矯正治療のメリットについて教えてください。
マルチブラケット装置は、適応範囲が広いため、ほとんどの歯並びに使うことが可能です。歯を三次元的に動かすことが得意なので、重症度の高い出っ歯や乱ぐい歯などもダイナミックに改善できます。また、マルチブラケット装置は固定式であることから、患者さんが装置をつけたり外したりする手間がかかりません。細かい調整もすべて歯科医師が行ってくれます。その他、マルチブラケット装置には、対応している歯科医院が多い、歯並び・噛み合わせの細かい調整が可能、歯を動かす速度が速い、といったメリットを伴います。
マルチブラケット装置を使う矯正治療のデメリットについて教えてください。
マルチブラケット装置を用いた矯正治療には、見た目が良くないというデメリットを伴います。標準的なマルチブラケット装置は金属色がむき出しで、ギラギラと光りを反射してしまうからです。クリアブラケットやセラミックブラケットを選択することで審美障害は最小限に抑えられますが、裏側矯正やマウスピース型矯正と比較すると、やはり見た目は良くありません。その他、マルチブラケット装置には、歯の移動に伴う痛みが比較的強い、装置が歯茎や粘膜を傷つけることがある、歯磨きしにくい、食べにくい食品がある、通院頻度がマウスピースが矯正よりも高い、などのデメリットを伴います。

マルチブラケット装置の値段

マルチブラケット装置を使う矯正治療の費用はどれくらいですか?
マルチブラケット装置による標準的な矯正治療では、800,000~1,000,000円程度の費用がかかります。セラミックブラケットを選択したり、矯正用アンカースクリューを併用したりする場合は、その値段もさらに高くなります。ブラケット装置を歯列の裏側に設置する裏側矯正では、1,300,000~1,400,000円程度の費用がかかる点に注意が必要です。裏側矯正では、リンガルブラケットという特別な装置を使うだけでなく、高度な技術が求められる治療法でもあるからです。
マルチブラケット装置を使う矯正治療の費用を抑える方法はありますか?
マルチブラケット装置による矯正治療で費用を抑えたいのであれば、標準的なメタルブラケットを選択するようにしましょう。また、マルチブラケット装置による矯正治療の実績豊富な歯科医院なら、多くの費用がかかる処置を実施せずとも、上手に治せることが多いです。その分、矯正治療の費用も抑えられます。ちなみに、マルチブラケット装置を使った矯正治療は、原則として医療費控除の対象となりますので、治療を受けた方は積極的に申請するようにしましょう。 例えばマルチブラケット装置による矯正治療で1,000,000円の費用がかかった場合、医療費控除を申請すれば数万円から十数万円の税金の還付が受けられます。これは間接的ではあるものの、マルチブラケット装置を使った矯正治療の費用を抑える方法として極めて有益といえるでしょう。当然ですが矯正以外で支払った医療費も医療費控除の対象となります。

マルチブラケット装置を使う矯正治療の期間

マルチブラケット装置を使う矯正治療の期間

マルチブラケット装置を使う矯正治療の期間はどれくらいですか?
軽度から中等度の症例であれば、歯を動かすのに1~2年程度の期間を要します。重症度の高い症例では少なくとも3年、長ければ4~5年かかることも珍しくありません。実際にどのくらいの期間がかかるかは精密検査を受けてみなければわかりませんので、気になる方はまず矯正歯科でカウンセリングを受けることから始めましょう。歯科医院によっては、マルチブラケット装置による矯正治療の期間を短くする方法を提案できる場合もあります。具体的には、マルチブラケット装置に矯正アンカースクリューを併用することで、歯の移動時間を短縮できます。
マルチブラケット装置での矯正治療が終わった後について教えてください。
マルチブラケット装置で歯を動かした後は、保定(ほてい)という処置へと移行します。保定とは、歯の後戻りを防止するための処置で、マルチブラケット装置を用いた矯正治療のすべてのケースで必要となります。 保定では、リテーナーと呼ばれる専用の装置を装着します。リテーナーはマルチブラケット装置ほど複雑なものではないため、歯を動かしている期間ほど心身への負担は大きくなりません。着脱式の装置を使うケースも多いことから、日常生活への影響も最小限に抑えられます。ただし、保定はマルチブラケット装置で歯を動かすのに要した期間と同じくらい続けなければなりませんので、動的治療後も数年間は頑張る必要があります。

編集部まとめ

今回は、矯正治療の王道ともいえるマルチブラケット装置の特徴や方法、メリット・デメリットについて解説しました。歯の表面に四角いブラケットとワイヤーを通す治療法で、ほとんどの歯並びに適応できるというメリットがあります。その反面、装置が目立ちやすい、痛みが強い、装置によるトラブルが起こりやすい、食事や歯磨きがしにくいといったデメリットを伴う点にも注意が必要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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