マウスピース矯正

マウスピース型矯正治療後に保定は必要?リテーナーの装着期間や時間、注意点も解説

マウスピース型矯正治療後に保定は必要?リテーナーの装着期間や時間、注意点も解説

マウスピース型矯正治療で理想的な歯並びを手に入れた後、多くの方が「これで治療は終わり」と考えがちです。

歯列矯正治療後に必要になるのが保定です。保定を怠ると、せっかく整えた歯並びがもとに戻ってしまう可能性があります。

本記事では、マウスピース型矯正治療後の保定の必要性、リテーナー(保定装置)の種類や特徴、装着期間や時間、使用時の注意点、そして起こりうるトラブルと対処法について詳しく解説します。

マウスピース型矯正治療後には保定は必要?

マウスピース型矯正治療後には、保定が必要です。歯列矯正治療によって移動した歯は、治療直後は不安定な状態です。歯の周囲には歯根膜という組織があり、この組織には歯を元の位置に戻そうとする力が働き、何もしなければ歯は少しずつ元の位置へ戻ってしまいます。

これを後戻りと呼びます。保定とは、歯列矯正治療後に歯並びを安定させるための期間のことです。

この期間中にリテーナー(保定装置)を装着することで、歯が新しい位置に定着するまで支え、後戻りを防ぎます。保定は歯列矯正治療の最終段階であり、美しい歯並びを長期間維持するために欠かせないプロセスです。

国内の医療機関では、日本歯科医師会や日本矯正歯科学会のガイドラインに基づき、保定装置の装着を標準的な治療の一環として必要です。

保定を適切に行わなければ、時間と費用をかけた歯列矯正治療の効果が失われてしまう恐れがあります。

保定の重要性は、矯正治療を受けたすべての患者さんに当てはまります。成長期を過ぎた成人の場合、歯を支える骨の代謝が緩やかになるため、新しい位置への定着により時間がかかるでしょう。

また、日常的な噛む力や舌の癖、歯ぎしりなども歯の位置に影響を与えるため、これらの要因からも歯を守ることが必要です。

保定を軽視すると、数ヶ月から数年かけて行った矯正治療が無駄になってしまう可能性があるため、治療の最終段階として真剣に取り組むことが大切です。

リテーナー(保定装置)の特徴と種類

矯正治療が終了すると、次は保定装置であるリテーナーの使用が始まります。リテーナーは矯正装置とは異なる目的と機能を持っており、歯並びを維持するためにとても重要です。

ここでは、リテーナーがどのような特徴を持ち、どのような種類があるのかについて詳しく見ていきましょう。患者さんのライフスタイルや歯の状態に合わせて適切なリテーナーを選ぶことが、保定期間を快適に過ごすための鍵となります。

リテーナーの特徴

リテーナーは歯列矯正治療後の歯並びを維持するために使用する装置です。主な特徴として、歯を積極的に動かすのではなく、現在の位置に固定する役割があります。

歯列矯正装置と比べて装着感が軽く、目立ちにくい設計になっているものが少なくないです。
リテーナーは取り外し可能なタイプと固定式のタイプがあり、患者さんの状態や希望に応じて選択できます。

長期間使用するものなので、適切なケアと管理が求められます。定期的に歯科医院でチェックを受けることも大切です。

リテーナーの種類

リテーナーには主に3つのタイプがあります。まずマウスピース型リテーナーは、透明なプラスチック製で歯全体を覆う形状です。

マウスピース型矯正治療を受けた方によく使用されます。目立ちにくく、装着感も良好ですが、定期的な交換が必要です。

次にワイヤー型リテーナー(ホーレータイプ)は、プラスチックのプレート部分とワイヤーの構成です。耐久性が高く、調整が可能というメリットがあります。ただし、マウスピース型と比べると若干目立ちやすい面があります。

最後に固定式リテーナーは、歯の裏側にワイヤーを接着して固定するタイプです。24時間装着されているため後戻りのリスクが低く、装着を忘れる心配もありません。

しかし、歯磨きがしにくく、むし歯や歯周病のリスクに注意が必要です。歯科医師は患者さんの歯並びの状態、生活スタイル、希望などを総合的に判断してリテーナーの種類を提案します。

リテーナーの装着時間が短いと起こること

リテーナーは矯正治療の成果を守るための重要な装置ですが、指示された装着時間を守らないとさまざまな問題が生じます。多くの患者さんは矯正治療が終わると安心感を持ってしまい、リテーナーの装着を怠りがちです。

しかし、装着時間が不十分だと、せっかく整えた歯並びに悪影響が及ぶだけでなく、口腔内の健康状態にも問題が生じる可能性があります。

ここでは、リテーナーの装着時間が短い場合に起こりうる具体的なリスクについて解説します。

後戻りのリスクが高くなる

リテーナーの装着時間が短いと、懸念されるのが後戻りです。歯列矯正治療直後の歯は、骨のなかで完全に固定されていません。歯を支える歯槽骨が新しい位置で安定するまでには時間がかかります。

この期間中にリテーナーの装着を怠ると、歯は元の位置に戻ろうとする力に抗えず、少しずつ移動してしまいます。特に治療直後の数ヶ月間は後戻りのリスクが高い時期です。

数日装着を忘れるだけでも、歯が動き始めることがあります。後戻りが進むと、再度歯列矯正治療が必要になる場合もあります。

再治療には追加の時間と費用がかかるため、指示された装着時間をしっかり守ることが重要です。

歯茎が下がるリスクがある

リテーナーの装着時間が不十分な場合、歯茎が下がる歯肉退縮のリスクも高まります。
歯が不安定な状態で動くと、歯茎への負担が増加します。特に歯茎が薄い方や、もともと歯周病のリスクが高い方は注意が必要です。歯茎が下がると歯根が露出し、知覚過敏や見た目の問題が生じる可能性があります。

また、歯茎の退縮は一度進行するともとに戻すことが難しいため、予防が何より重要です。リテーナーを適切に装着することで、歯の位置を安定させ、歯茎への負担を軽減できます。

マウスピース型矯正治療後の保定期間について

保定期間は矯正治療の最終段階であり、治療の成功を左右する期間です。患者さんからよく寄せられる質問がいつまでリテーナーを装着すればよいのか、1日どのくらいの時間装着する必要があるのかというものです。

保定期間や装着時間は個人差がありますが、一般的な目安を知っておくことで、計画的に保定に取り組むことができます。ここでは、リテーナーの装着時間や装着期間、そして保定期間中の通院頻度について詳しく説明します。

リテーナーの1日の装着時間

リテーナーの装着時間は、保定期間の段階によって変化し、治療直後の最初の半年から1年間は、1日中装着することが推奨されます。この期間は食事と歯磨き以外はほぼ常に装着し、1日20時間以上の使用が目安です。

最初の期間を過ぎると、歯の安定具合に応じて装着時間を段階的に減らしていきます。多くの場合、就寝時のみの装着へと移行し、就寝時の装着が8時間程度の場合でも、これでも十分な保定効果が得られます

装着時間の調整は、歯科医師の指示にしたがって行ってください。自己判断で装着時間を減らすと、後戻りのリスクが高まります。定期検診で歯の安定状態を確認しながら、適切なタイミングで装着時間を調整していきます。

リテーナーの装着期間

リテーナーの装着期間は、一般的に歯列矯正治療期間と同じか、それ以上の期間が推奨されています。目安としては1年から3年程度ですが、個人差が大きく、歯の動きやすさ、年齢、治療前の歯並びの状態などによって変わります。

理想的には、できるだけ長く、就寝時だけでもリテーナーを装着し続けることが望ましいです。歯は一生を通じて少しずつ動く性質があるため、歯列矯正治療を受けた方は特に注意が必要です。

一部の歯科医師は一生涯の装着を推奨することもあります。これは大げさではなく、美しい歯並びを永続的に維持するための現実的なアドバイスです。就寝時のみの装着であれば、日常生活への影響も少なくすみます。

保定期間中の通院頻度

保定期間中も定期的な歯科医院でのチェックが必要です。通院頻度は3ヶ月から6ヶ月に1回が一般的です。定期検診では歯の位置に変化がないか、リテーナーが適切にフィットしているか、むし歯や歯周病の兆候がないかなどを確認します。

リテーナーの状態もチェックされます。破損や変形があれば、早期に修理や交換が必要です。特にマウスピース型リテーナーは使用により劣化するため、定期的な交換が必要です

定期検診を受けることで、問題の早期発見と対処が可能になります。また、歯科医師から装着時間の調整についてアドバイスを受けられるため、自己判断による失敗を防げます。

リテーナーを使用するときの注意点

リテーナーを長期間にわたって効果的に使用するためには、日常的な取り扱いや管理方法を正しく理解しておくことが大切です。適切なケアを怠ると、リテーナーの劣化が早まったり、口腔内トラブルの原因となったりします。

また、紛失や破損といったトラブルを防ぐためにも、基本的な注意点を守る必要があります。ここでは、リテーナーを使用する際に特に気をつけるべきポイントについて解説します。

これらの注意点を日常習慣として取り入れることで、快適に保定期間を過ごせます。

食事をするときには外す

取り外し可能なリテーナーは、食事の際に外しましょう。装着したまま食事をすると、リテーナーの破損や変形の原因となります。食べ物がリテーナーと歯の間に挟まり、むし歯のリスクも高まります。

食事後は歯磨きをしてからリテーナーを再装着しましょう。外出先で歯磨きができない場合は、できる限りお口をすすいでからリテーナーを装着しましょう。

飲み物についても、水以外はリテーナーを外すことが推奨されます。特に砂糖を含む飲料や色素の強い飲み物は、むし歯や着色の原因となります。

リテーナーを外す際は、丁寧に扱いましょう。無理に引っ張ったり、片側だけを外そうとしたりすると破損の原因になります。正しい取り外し方を歯科医師から教わり、実践しましょう。

毎日洗浄する

リテーナーはお口のなかに長時間入れるものなので、衛生管理が極めて重要です。毎日の洗浄を習慣化しましょう。使用後は流水で洗い流し、歯ブラシで優しく磨きます。

歯磨き粉の使用は避けましょう。研磨剤がリテーナーを傷つけ、細菌が繁殖しやすくなります。週に数回は専用の洗浄剤を使用した洗浄も推奨されます。

洗浄剤はリテーナー専用のものを選び、使用方法を守り、熱湯での洗浄は避けましょう。リテーナーが変形し、使用できなくなる恐れがあります。

適切に洗浄しないと、カビや細菌が繁殖し、口臭や口腔内トラブルの原因となります。清潔なリテーナーを使用し、口腔内の健康も守りましょう。

外したらケースにしまう

リテーナーを外したら、専用のケースに保管しましょう。ティッシュに包んだり、テーブルの上に置いたりすると、紛失や破損のリスクが高まります。

特にティッシュに包むと、誤って捨ててしまうケースが多発しています。ケースは常に持ち歩く習慣をつけましょう。外出先でリテーナーを外す機会も少なくないため、ケースがないと保管場所に困ります。

自宅でも決まった場所に保管することで、紛失を防げます。ペットや小さな子どもがいる家庭では、特に注意が必要です。リテーナーが遊び道具にされたり、誤飲されたりする事故も報告されています。手の届かない場所に保管しましょう。

紛失した場合は速やかに歯科医院に連絡しましょう。新しいリテーナーの作製には時間がかかり、その間に後戻りが進む可能性があります。

保定期間に起こりうるトラブルと対処法

保定期間中は、予期せぬトラブルに遭遇することがあります。リテーナーの破損や紛失、装着時の痛み、生活環境の変化による装着時間の確保困難など、さまざまな問題が起こり得ます。

これらのトラブルに直面したとき、適切な対処法を知っていれば、後戻りなどの深刻な事態を防ぐことができます。

自己判断で対応すると状況が悪化する可能性もあるため、正しい知識を持つことが重要です。ここでは、保定期間によくあるトラブルとその対処法について具体的に説明します。

リテーナーの装着時間を確保できない

仕事や生活スタイルの変化により、指示された装着時間を確保できないこともあります。まずは歯科医師に相談しましょう。生活状況に応じて、装着スケジュールの調整や、固定式リテーナーへの変更などの代替案を提案してもらえます。

自己判断で装着時間を減らすことは避けましょう。わずかな期間でも装着を怠ると、後戻りが始まる可能性があります。どうしても装着が難しい場合でも、就寝時だけは装着するよう心がけましょう。

装着を忘れがちな方は、スマートフォンのリマインダー機能を活用するのも有効です。毎日同じ時間にアラームを設定することで、装着習慣が定着しやすくなります。

リテーナーの装着時に痛む

リテーナー装着時に痛みを感じる場合、いくつかの原因が考えられます。例えば、数日間リテーナーを装着していなかった場合です。わずかに歯が動いており、再装着時に違和感や軽い痛みを感じることがあります。

この場合、継続して装着することで痛みは軽減します。
強い痛みが続く場合や、リテーナーが明らかに合わなくなっている場合は、すぐに歯科医院を受診しましょう。

後戻りが進んでいる可能性があります。早期に対処することで、大がかりな再治療を避けましょう。リテーナー自体に問題がある場合もあります。

変形や破損、鋭利な部分が口腔内を傷つけている可能性があります。無理に装着を続けず、歯科医師に相談しましょう

リテーナーの破損

リテーナーが破損した場合は、ただちに歯科医院に連絡しましょう。破損したリテーナーを装着し続けると、口腔内を傷つけたり、適切な保定効果が得られなかったりします。

新しいリテーナーの作製には通常1週間から2週間程度かかります。この期間に後戻りが進まないよう、以前の歯列矯正装置が残っている場合は一時的に使用できるか確認しましょう。

また、できるだけ早く新しいリテーナーを受け取れるよう、予約を優先してもらえるか相談しましょう。破損を防ぐためには、日頃の丁寧な取り扱いが重要です。

無理な力をかけない、熱湯や直射日光を避ける、ケースに入れて保管するなどの基本的な注意を守りましょう。

まとめ

マウスピース型矯正治療後の保定は、美しい歯並びを長期間維持するために欠かせないステップです。リテーナーを適切に装着することで、後戻りを防ぎ、治療の成果を守れます。

リテーナーには複数の種類があり、患者さんの状態や希望に応じて選択されます。装着期間は1年から3年以上が目安ですが、理想的には就寝時だけでも長期間装着を続けることが望ましいです。

最初の半年から1年は1日中装着し、その後段階的に装着時間を減らしていくのが一般的です。リテーナーを使用する際は、食事時に外す、毎日洗浄する、ケースに保管するなどの注意点を守りましょう。

装着時間が確保できない、痛みがある、破損したなどのトラブルが生じた場合は、自己判断せず速やかに歯科医師に相談しましょう。

保定期間中も3ヶ月から6ヶ月ごとの定期検診を受け、歯の状態とリテーナーのフィット具合を確認してもらいましょう。適切な保定により、せっかく手に入れた美しい歯並びを長く保てます。​​​​​​​​​​​​​​​​

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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