お子さんの乳児健診や学校の歯科検診で歯並びについて指摘されたことはありませんか?
歯並びが悪いと歯磨きがしにくいため、むし歯や歯周病、口臭の原因になります。また、滑舌も悪くなります。
小児矯正の一つに、ランパ(RAMPA)セラピーという治療方法があるのをご存知でしょうか。
口呼吸やいびき、猫背の改善、さらには睡眠の質の向上も期待できる方法です。
お子さんの歯並びや鼻炎の症状などでお困りの方は、ぜひ参考にしてみてください。
小児矯正のランパ(RAMPA)セラピーとは?
- 小児矯正のランパセラピーとはどのような治療ですか?
- ランパセラピーとは、歯並びを整えるために顎骨の成長を正しい方向へと誘導する治療になります。治療はRAMPA(ランパ)装置というヘッドギア型の特殊な装置を使用し、上顎やその周りの骨格を正しい方向へとけん引し、顔の骨格を改善させます。歯並びや噛み合わせの悪さの原因はさまざまありますが、顎骨の位置の異常も歯並びや噛み合わせを悪くする原因の一つです。
- 顎骨の発育不足の原因を教えてください。
- 顎骨の発育不足の原因には、
骨の成長不足や口腔習癖などがあります。骨の成長には以下のような要素が必要です。- 栄養バランスのとれた食事
- 十分な睡眠
- 適度な運動
- かぶりつく・しっかり噛む
口腔習癖とはお口に関する癖のことで、舌の先を噛む、指しゃぶりなどがあります。顎骨の発育不全につながる口腔習癖は、以下のとおりです。
- 口呼吸
- 舌の位置が低い:安静時の舌の正しい位置は上顎についている状態
- 間違った飲み込み方:飲み込む時に舌が前に出る
- 指しゃぶりなどの癖
口腔習癖は噛み合わせが悪くなる原因にもなります。普段の生活で気になる様子があれば、かかりつけの小児歯科医院で相談してみましょう。
- 呼吸の改善が歯並びにも有効なのはなぜですか?
- 口呼吸の改善により、舌が歯列の内側におさまるようになるためです。口呼吸が癖になると、気道を確保するために舌位の低下(舌が上顎についていない状態)がみられます。すると舌は歯列の内側におさまらなくなり、押された上顎の前歯は前に出すぎている状態になるのです。呼吸と歯並びは互いに影響し合っています。ランパセラピーを行うことにより、本来あるべき位置に舌を戻すようにするため、口呼吸が改善しさらには歯列矯正にもつながります。なお、扁桃腺肥大などの疾患によって口呼吸が癖になると、歯並びにも影響が出るため注意が必要です。
- ランパセラピーは歯並び以外にも効果が期待できますか?
- ランパセラピーは顎骨の成長を上前方に促す治療方法です。受け口では上顎を、出っ歯では下顎を成長させるため、歯並びだけでなく顔の骨格も整います。また、ほかにも以下のような効果が期待できます。
- 口呼吸やいびきの改善
- 猫背など不良姿勢の改善
- 口腔内環境が整う(むし歯や口臭予防につながる)
- 鼻炎やアトピー性皮膚炎の改善
- 睡眠の質の向上
歯並びは、見た目だけでなく普段の生活にも大きな影響を与えます。口呼吸やいびき、鼻炎の原因は顎骨の発育不全にあるかもしれません。また、呼吸の改善は睡眠の質の向上にもつながり、日中の活動意欲や集中力を高める効果も期待できます。歯並びだけでなく、呼吸の状態や耳鼻科疾患など気になる症状があれば、一度歯科医院で相談してみましょう。
ランパセラピーと一般的な小児矯正との違い
- 一般的な小児矯正との違いを教えてください。
- 一般的な小児矯正では、ワイヤーなどの矯正装置を使用して歯の位置を変えます。歯列の幅を広げ、歯が並ぶためのスペースを空けることが目的です。一方、ランパセラピーの目的は顎骨の成長を正しい方向へ導くことです。歯並びを整えるのは目的ではないものの、顎骨を正しい方向に導いた結果、歯並びの改善にもつながります。顎骨の発育を促すことで、歯並びの改善だけでなく呼吸や姿勢など全身の健康につながります。理想的な歯並びには、正しい舌位(舌が上顎についている状態)にあることが重要です。ランパセラピーでは顎骨の成長を促すことで口呼吸を改善、気道が確保されることで正しい舌位を維持できるようになります。
- 矯正装置にはどのような違いがありますか?
- 一般的な小児矯正に用いられる矯正装置では、歯を並べるスペースを確保するため平行方向(二次元的)に歯列を拡大します。それに対し、ランパセラピーでは中顔面(目の上から鼻の下までの部分)を上前方に牽引するため、三次元的に治療できることが特徴です。また、ランパセラピーではRAMPA装置というヘッドギア型のものを使用します。歯に固定された口腔内装置に連結装置を付け、口腔外装置とつなげて使用する構造です。6つのゴムを使用し、お子さんの骨格に合わせて牽引する方向や力を細かく設定できるつくりになっています。装置の着脱に慣れるまでは、家族の協力が必要不可欠です。
治療に適した年齢や治療期間
- ランパセラピーに適した年齢を教えてください。
- ランパセラピーに適した年齢は6〜12歳頃です。顎骨が成長する時期は、成長の方向をコントロールしやすい時期でもあります。しかし治療はお子さん本人の頑張りが必要不可欠になるので、協力を得にくい状況では矯正装置の使用はもちろん、治療の継続は困難です。そのため、コミュニケーションがしっかりとれるようになる6歳頃から始めるのがおすすめです。また、歯並びや乳歯から永久歯への生え変わり時期、骨の発達はお子さん一人ひとり違います。口腔内の状態によっては、6歳より前から治療を開始する場合もあります。気になる症状があれば早めに小児歯科医院で相談してみましょう。
- 治療期間はどのくらいですか?
- 年齢や顎骨・口腔内の状態によって異なりますが、一般的な治療期間は3〜5年です。顎骨の成長誘導に2〜2年半、その後歯列を整えるのに1〜1年半と、2段階に分けて治療を行います。また、ヘッドギア型のRAMPA装置の装着期間は1サイクル約3ヵ月です。その後は口腔内装置のみを使用し、このサイクルを数回繰り返すことで顎骨の成長誘導を行います。RAMPA装置装着中は月に1〜2回のペースで通院し、装具の微調整が必要です。また、装具は1日12時間以上装着します。寝ている間も使用できるため、学校での装着は不要です。顎骨の成長や歯並び、口腔習癖には個人差があるため、治療期間は一人ひとり異なります。かかりつけの小児歯科医院で確認してみましょう。
- ランパセラピーはどの歯科医院でも受けられるのですか?
- ランパセラピーは専門の知識や技術が必要になるため、どの歯科医院でも受けられるわけではありません。小児矯正を専門に行っている歯科医院でも、ランパセラピーを取り入れていない場合があります。また、顎顔面口腔育成研究会会員として研修会を受けている歯科医師であっても、必ずしもランパセラピーをメインに治療を行っているわけではありません。まずは、かかりつけの歯科医院で相談してみましょう。ランパセラピーを取り入れている小児歯科医院を紹介してもらえるかもしれません。また、ランパセラピーの治療継続には、お子さんの協力が必要になります。お子さんも一緒に治療の説明を受けて、どのような治療であるのかを知ったうえで治療を開始しましょう。
編集部まとめ
ランパセラピーの目的は顎骨の成長を正しい方向へと誘導することです。
歯並びが悪くなる原因の一つには顎骨の発育不全があり、歯並びだけでなく呼吸や姿勢、睡眠にも影響を与えます。
歯科矯正は大人になってからもできますが、子どもの正常な成長発達に質のよい睡眠は必要不可欠です。また、口呼吸が癖になるとむし歯や口臭の原因にもなり得ます。
歯の生え変わりの時期を迎えたら、一度かかりつけの歯科医院で歯並びを診てもらいましょう。
ランパセラピーによって、歯並びだけでなく呼吸やいびき、鼻炎などの症状も改善するかもしれません。
参考文献