歯列矯正には、一部の歯並びを治療する部分矯正と全体の歯並びを治療する全体矯正があります。 どちらが自分に適しているのか、それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで歯列矯正を受けることが大切です。
本記事では、部分矯正と全体矯正のどっちがおすすめ?について以下の点を中心にご紹介します。
- 部分矯正と全体矯正の違いについて
- 部分矯正が適している方
- 全体矯正が適している方
部分矯正と全体矯正のどっちがおすすめか理解するためにもご参考頂けますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
部分矯正と全体矯正の違い
まず、部分矯正と全体矯正の違いについて歯列矯正の範囲や費用相場、治療期間の面で比較しながら解説します。
歯列矯正範囲
歯列矯正範囲は、部分矯正と全体矯正とで異なります。
部分矯正は特定の問題がある部分、主に笑った際に目立つ上下の前歯6本ずつの計12本に対して施されることが多い傾向にあります。
一方、全体矯正は全ての歯を対象とし、歯の配置だけでなく噛み合わせの改善も目指した治療が行われます。なかでも、重度の歯並びの乱れや噛み合わせの問題がある場合に適しており、矯正装置を全歯に装着し、総合的なアプローチを行います。これにより、機能的な改善はもちろん、審美の面でも良い影響を与えられます。
費用相場
部分矯正と全体矯正では、治療範囲の広さが直接費用に影響を与えます。部分矯正は特定の部位のみを対象とするため、全体矯正に比べて料金が抑えられます。
具体的には、部分矯正の場合、ワイヤー矯正の基本料は20万円から50万円程度、マウスピース型矯正は35万円程度からとなっています。
一方全体矯正は全ての歯を矯正するため、ワイヤー矯正で80万円から120万円程度、マウスピース型矯正で80万円程度です。
また、部分矯正よりも全体矯正は治療期間が長くなるため、全体矯正の費用が高くなる傾向にあります。治療期間については、次に詳しく解説します。
治療期間
部分矯正と全体矯正では、治療期間に違いがあります。
部分矯正は治療範囲が限られるため、矯正期間が短く設定されます。具体的には、2ヶ月から1年程度が目安です。
一方全体矯正は口内のすべての歯を対象とするため、1年程度は必要とされ、場合によっては3年に及ぶこともあります。
この違いは、矯正する歯の数と範囲によるもので、全体矯正では全ての歯の位置と噛み合わせの調整を行うため、より複雑で時間を要します。どちらの矯正方法も、期間中は定期的な通院が必要で、頻度は治療計画によって異なります。
部分矯正のメリット
部分矯正を受ける際のメリットとは何でしょうか。
以下に、メリットについて詳しく解説します。
部分矯正のメリット①痛みが少ない
部分矯正は、全体矯正に比べて痛みが少ないというメリットがあります。部分矯正は矯正対象となる歯の本数が少ないため、歯への負担が相対的に小さいことに起因します。また、矯正期間が短いため、長期にわたる違和感や不快感を感じる時間も短縮されます。 矯正治療における痛みは避けられない側面もありますが、部分矯正では日常生活への影響が軽減される傾向にあります。
痛みは個人の感じ方によって差があるため、全ての方に同程度の痛みが生じるわけではありませんが、部分矯正の場合は全体的なストレスが少なくなります。もし痛みが強く感じられる場合は、担当の歯科医師に相談をしてみましょう。
部分矯正のメリット②治療費を抑えられる
部分矯正のメリットの一つは、費用相場で具体的な金額を述べたように、治療費が抑えられる点にあります。
費用が抑えられる要因は、全体矯正に比べて部分矯正は矯正が必要な歯の範囲が限られているため、施術に要する時間が少なくなり、結果として費用が安くなります。 加えて、部分矯正は矯正する歯の本数が少ないため、使用するブラケットやワイヤーの数も少なくて済みます。これにより、材料費や施術費が削減され、全体的な治療費が下がるのです。
部分矯正のメリット③治療期間が短い
部分矯正のメリットの一つは、治療期間が短いことです。これまでにも述べてきたように、部分矯正は限定された範囲の歯のみを対象とするため、必要な矯正の範囲が狭く、治療に要する時間も短縮されます。
全体矯正が1年から3年かかることを考えると、部分矯正では2ヶ月から1年程度で治療が完了することから、日常生活における不便を抑えるだけでなく、矯正装置による違和感や痛みの期間も短いといえます。
部分矯正のデメリット
部分矯正を受ける際のデメリットとは何でしょうか。
以下に、デメリットについて詳しく解説します。
部分矯正のデメリット①歯と歯の間を削る可能性がある
部分矯正のデメリットの一つとして、歯と歯の間を削る可能性があることが挙げられます。
歯列を整えるために必要なスペースを確保するために、エナメル質という歯の表面を覆う硬い組織を削ります。IPR(アイピーアール)やディスキング、ストリッピングなどと呼ばれている治療法です。
エナメル質は、0.1〜0.8mm程度削るだけなので、知覚過敏を引き起こしたり、むし歯の原因になったりすることはありませんが、健康な歯を削ることに抵抗を感じることもあるでしょう。
部分矯正のデメリット②納得できる仕上がりにならないことも
部分矯正のデメリットの一つとして、治療の仕上がりに納得できないことがある点が挙げられます。 部分矯正は、特定の範囲の歯を対象にした治療法であり、全体的な歯並びや噛み合わせの改善を目指す全体矯正とは異なります。そのため、重度のデコボコや八重歯など、複雑な問題を抱えている場合には、理想的な結果を得ることが難しい場合があります。
また、「見た目だけでなく噛み合わせも改善したい」「前歯も奥歯もきれいな歯並びにしたい」というような、高度な要求を持つ方にとっては、部分矯正だけでは満足のいく結果を得られない可能性があります。
そのため、治療の前にしっかりとカウンセリングを受け、自分の状況と目標に合った治療法を選択することが重要です。
部分矯正のデメリット③部分矯正できない症例もある
部分矯正のデメリットとして、特定の症例では治療ができないという点が挙げられます。
部分矯正は、全体矯正と比べて対応できる症状や治療内容が限定的であるため、全ての患者さんに適応するわけではありません。
例えば、出っ歯や歯並びの乱れが強い場合、骨格に問題がある場合などは、部分矯正では対応できない可能性があります。また、咬み合わせにズレがある場合も、部分的な治療だけでは解決できず、全体的な治療が必要となることがあります。
このように、部分矯正は軽度の歯並びの乱れに対応することが多く、重度の歯並びの乱れや特定の部位の問題に対しては、部分矯正だけでは対応できない場合があります。治療を希望する方は、歯科医師の診断を受け、自身の症状が部分矯正の適応範囲に含まれるかを確認することが重要です。
全体矯正のメリット
全体矯正を受ける際のメリットとは何でしょうか。
ここからは、全体矯正のメリットについて解説します。
全体矯正のメリット①対応可能な症例が多い
全体矯正のメリットの一つとして、対応可能な症例の幅広さが挙げられます。
全体矯正は、軽度から重度までの歯並びの乱れに対応しており、対応範囲は部分矯正よりも広範囲です。
例えば、「受け口(反対咬合)」のような症状は、部分矯正では対応が難しい場合があり、全体矯正で治療が行われることが多い傾向にあります。
そのほかにも、叢生(乱ぐい歯)、上顎前突(出っ歯)、空隙(すきっぱ)などの不正咬合が重度の症状であった場合、全体矯正でなければ治療が難しいとされています。部分矯正では、歯を動かすためのスペースが確保できないため、これらの症状に対応することが難しいのです。ただし、骨格に問題がある場合には、顎矯正手術の併用が必要となることもあります。
全体矯正のメリット②噛み合わせを改善できる
全体矯正のメリットの一つとして、噛み合わせの改善が挙げられます。
全体矯正は、上顎と下顎の全ての歯を動かす治療であり、奥歯も含めた全体的な歯並びの調整ができるため、噛み合わせの改善が可能とされています。
歯の噛み合わせの改善は、健康に繋がる重要な役割を果たしています。
噛み合わせが適切でないと、むし歯や歯周病、顎関節症のリスクが高まったり、特定の歯に負担がかかることで歯を失ったりする要因となり得ます。
また、正しい噛み合わせは、口腔健康の維持だけでなく、食事を適切に噛めるようになったり、頭痛や肩こりなどの身体的な不調を整えたり、発音の向上にも繋がります。
全体矯正による歯並びの改善は、美しい歯並びになるだけでなく、健康的な身体の保持にも関係しています。
全体矯正のメリット③抜歯した場合は歯を大きく動かせる
全体矯正のメリットの一つとして、抜歯をした場合にはより広範な歯の移動ができる点が挙げられます。
なかでも、不正咬合の症状が重度である場合、抜歯は有効な手段となります。主に小臼歯を抜歯することで、ほかの歯が移動できるスペースを作り出し、歯並びを調整します。
また、出っ歯などで口元が前に出ていた場合にも、抜歯をしたうえで歯列矯正をすることで口元のバランスの改善も期待できます。
このように、全体矯正では歯並びの症状によっては抜歯を含む計画を立て、部分矯正では対応が難しいケースでも、状況に合わせた適切な治療を提供します。
全体矯正のデメリット
全体矯正を受ける際のデメリットとは何でしょうか。
ここからは、全体矯正のデメリットについて解説します。
全体矯正のデメリット①治療期間が長い
全体矯正のデメリットの一つとして、治療期間が長いことが挙げられます。 全体矯正は、さまざまな不正咬合の歯並びを整える方法ですが、治療期間は1年から3年程度の時間を要します。
この期間、矯正装置を装着したり、定期的にメンテナンスのために通院したりする必要があり、日常生活において多少の不便を伴います。食事や会話、歯磨きなど、ライフスタイルへの影響を感じられることもあります。
長い治療期間は、モチベーションを維持することも難しくなるため、治療の成功や失敗に関与する場合もあります。
また、矯正装置を装着している期間に、結婚式などのライフイベントが重なることを避けたい方は、全体矯正の治療期間を理解した上で、治療を選択することが求められます。
全体矯正のデメリット②治療費が高い
全体矯正のデメリットの一つとして、治療費が高いことが挙げられます。 そもそも、歯列矯正の治療のほとんどが審美目的に分類され、保険適用外となっています。また、特殊な材料を使用した矯正装置や、専門的な技術を必要とする治療が行われることも、費用が高くなる要因となります。
全体矯正は、全歯の歯列を整えるための手段ですが、費用は部分矯正の約2倍となります。さらに、地域やクリニック、治療の範囲や時期によっても費用は変動します。
しかし、費用の面だけで治療方法やクリニックを選ぶのではなく、どのような歯列矯正の選択肢があるのかや通院のしやすさなども考慮に入れ、納得のいく治療を受けることが重要です。
全体矯正は確かに高額な治療費が必要ですが、多くのメリットから、価値があると感じる方も多いでしょう。
部分矯正と全体矯正どっちがいいか迷っている方へ!
ここまで、部分矯正と全体矯正の違いやそれぞれのメリットやデメリットについて述べましたが、具体的にはどのような方に適しているのでしょうか。
それぞれの治療法がおすすめな方について、以下で解説します。
部分矯正がおすすめな方
部分矯正は、以下のようなニーズを持つ方が適しています。
- 主に見た目の印象を良くしたい
- 費用と時間の節約を重視している方
- 笑顔の時に目立つ歯だけを治したい
- 特定のイベントまでに治療を完了させたい
- 矯正装置の装着期間を短くしたい
しかし、これらの希望がある方でも、重度の不正咬合がある場合は、部分矯正が適していないことがあります。
部分矯正は軽度の歯並びの乱れに対応している治療法です。具体的には、少しガタガタした歯並び、軽い出っ歯、軽度の受け口、前歯に隙間がある状態など、部分的な矯正で見た目の改善が期待できる場合があります。
これらの状態を持つ方には、部分矯正が適切な選択肢となることが多いようです。
全体矯正がおすすめな方
全体矯正は、以下のようなニーズを持つ方が適しています。
- 全ての歯を均一に整えたい
- 噛み合わせの問題を根本から解決したい
- 時間や費用をかけてでもきれいな歯並びにしたい
全体矯正は、単に見た目を整えるだけでなく、口内の機能的なバランスを整えることも目指します。長期間の治療が必要ですが、その分、全体的な噛み合わせや歯の健康を長期的に保つことが可能とされています。
特に重度の歯並びの問題や噛み合わせの不具合がある場合に推奨される方法で、根本的な解決を図る治療法です。
まずは歯科医院に相談しよう
歯列矯正を検討されている方は、まずはカウンセリングを受けることをおすすめします。 多くのクリニックでは無料で基本的なカウンセリングを提供しており、治療に必要な情報や期間、費用についての説明を受けられます。
カウンセリングの段階で、患者さん自身の歯並びの状態や具体的な治療の方法について理解を深められます。また、より詳細な診断を希望する場合は有料カウンセリングを利用することで、CTスキャンなどの高度な診断ツールを用いて、さらに精密な治療計画が立てられます。無料カウンセリングで得られる情報だけでも、歯列矯正の方向性を決定する助けとなりますので、まずは気軽に相談してみましょう。
まとめ
ここまで、部分矯正と全体矯正のどっちがおすすめ?についてお伝えしてきました。 部分矯正と全体矯正の要点をまとめると以下の通りです。
- 部分矯正と全体矯正は、歯列矯正の範囲や費用相場、治療期間において違いがあり、自分に適した治療法か確認しておくことが大切
- 部分矯正がおすすめな方は、軽度の歯列の乱れに対して「主に見た目の印象を良くしたい」「費用と時間の節約を重視している」「笑顔のときに目立つ歯だけを治したい」「特定のイベントまでに治療を完了させたい」「矯正器具の装着期間を短くしたい」といったニーズを持つ方
- 全体矯正がおすすめな方は、「全ての歯を均一に整えたい」「噛み合わせの問題を根本から解決したい」「時間や費用をかけてでもきれいな歯並びにしたい」といったニーズを持つ方
歯列矯正は、患者さんの歯並びによって、部分矯正や全体矯正といった治療法が選択できるため、事前に自分に適した治療法について理解しておくことが大切です。
ご自身の口腔内の状況とライフイベントに合った治療法を選択しましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。