「子どもの歯並びが気になる」「歯科検診で指摘された」などの悩みがあり、小児矯正を行うべきか迷う方は多いでしょう。
さらに、どのくらいの費用がかかるのか、どのような治療法があるのか、気になるのではないでしょうか。
今回の記事では、小児矯正を始めるか迷っている方に向けて費用相場・治療法・始めるタイミングについて詳しく解説します。
小児矯正の費用
- 小児矯正の費用相場はどのくらいですか?
- 小児矯正の費用相場は次のとおりです。
- 相談費用:無料〜約3,300円(税込)
- 精密検査費用:約11,000円〜49,500円(税込)
- 診断・治療計画費用:約5,500〜33,000円(税込)
- 治療費・装置代:33,000〜1,100,000円(税込)
- 再診・処置費用:3,300〜6,600円(税込)
小児矯正では、乳歯列期から永久歯列期まで大きく費用が異なります。治療費・装置代では、乳歯列期のマウスピースは約33,000〜55,000円(税込)ですが、混合歯列期・永久歯列期では約550,000円(税込)以上の費用になることもあり、さまざまです。
さらに、永久歯列期のワイヤー矯正では698,500〜1100,000円(税込)、マウスピースをオーダーメイドする場合は770,000〜990,000円(税込)となり、費用の幅が広いことがわかります。
- 小児矯正は自費診療の扱いになりますか?
- 小児矯正は一般的に保険はきかず自費診療です。そのため、歯科医院・治療方法・治療期間により異なり、また地域によっても費用に差が出ます。
しかし、顎の手術が必要な場合や厚生労働相が認めた疾患に該当している場合は、保険適用となります。
歯科医院を受診し診断を受けた際に、詳しく自身の症状の説明を受け疾患名などもしっかり確認するとよいでしょう。
- 小児矯正は医療費控除を受けられますか?
- 小児矯正は、医療費控除の対象となります。成人してから美容目的で歯列矯正をする場合は控除の対象にはなりませんが、小児矯正の場合は対象になるので安心してください。また、治療費だけではなく通院のための交通費・医薬品の費用も控除を受けることが可能です。
小児矯正の治療法
- 小児矯正の治療法を教えてください。
- 小児矯正の治療法は、装置を利用して顎・骨の成長を利用して正しい歯並びに導くことです。治療方法は、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期の発達段階・症状に合わせて異なります。
乳歯列期(3〜5歳)の治療は主にマウスピース型の装置を使い、顎・口元の筋肉の発達を助けたり舌の位置を正しく整えたりすることが目的です。
混合歯列期(6〜11歳)には、マウスピース・床矯正・急速拡大装置などで治療します。この時期は、床矯正・急速拡大装置で顎を広げて永久歯がきれいに生えるためのスペースをつくることが大切です。
永久歯列期(12歳〜)には大人と同じようにワイヤー矯正での治療も可能になります。マウスピース型の装置での治療法は、永久歯列期でも可能です。
- 小児矯正の流れを教えてください。
- 小児矯正では、主に次の流れで治療を行います。
- 初診・相談
- 精密検査
- 治療方法・装置・治療期間・費用の決定
- 治療スタート
- 再診・装置の調整
- 保定
初めに行うことは、問診・診察などで歯並びについての相談です。その後、レントゲン検査・歯型の採取・顎の動きの検査などの精密検査を行います。
そして、精密検査での結果を受け、詳しい治療方法・装置の種類・治療期間・費用を決定したら、治療のスタートです。実際に装置をつけて自宅での矯正治療をスタートした後は、ワイヤー交換・装置の調整で約1〜4ヵ月の頻度で通院します。
通院頻度・治療完了までの期間は個人差があるため、医師の指示に従いましょう。
矯正治療完了後は、取り外し式の保定装置を使用し、理想的な位置に歯を安定させ歯列矯正後の後戻りを防ぎます。
- どのような装置を使って矯正を行うのでしょうか?
- 小児矯正では、次のような装置を使って治療を行います
- マウスピース(インビザラインファースト(※1)・プレオルソ(※2)・ムーシールド(※3)・マイオブレース(※4))
- 床矯正
- 急速拡大装置
- ワイヤー矯正
小児矯正で多く使われるのが、マウスピースです。マウスピースには、インビザラインファースト・プレオルソ・ムーシールド・マイオブレースなどの種類がありそれぞれの症状・要望に合わせて選択します。
インビザラインファーストは、混合歯列期から使用する新しいマウスピースの種類です。透明で目立ちにくいこと・取り外し可能なことが特徴で、見た目が気になる方・むし歯を心配する方に適しています。1週間で新しい装置に交換して歯を動かし歯列を広げるため、歯の位置を細かく動かすことが可能です。
プレオルソは、やわらかいマウスピースで乳歯列期に使用します。それぞれの子どもに適したサイズまで歯列を広げ、大まかな歯並び・噛み合わせの改善に効果的です。
受け口の歯列矯正の場合は、ムーシールドというマウスピースを使用します。プレオルソと同じく乳歯列期から使用し、やわらかい素材のため小さい子どもでも負担が少なく治療が可能です。
マイオブレースは就寝時と日中の1時間使用するマウスピース型装置で、痛みなどがありません。悪い歯並びの根本的な原因に働きかけ、成長とともに自然な歯並びを実現します。現在世界的に小児矯正の主流となっているのはマイオブレースです。
また、マウスピースのように取り外しが可能な装置には床矯正があります。床矯正は、顎をゆっくりと広げる装置で永久歯がきれいに並ぶスペースをつくることが目的です。インビザラインファーストのように日常的に着用しますが、食事中・歯磨きの時には取り外すことができます。
急速拡大装置は、顎の骨格が狭い場合に使う装置で顎を広げる力が強いため、医師による経過観察が重要です。さらに、永久歯列期に入ってからは、大人と同様のワイヤー矯正が可能になります。金属製のものと透明なセラミックのものがあり、費用を抑えたい場合は金属製、見た目が気になる場合はセラミックを選ぶとよいでしょう。(※1,2,3,4) 未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
- 矯正中に普段の生活で気を付けることはありますか?
- 小児矯正では患者さん自身・家族の努力が必要です。
装置の使用状況・通院頻度などが治療結果・治療期間に影響を与えるため、歯科医師の指示に従いましょう。また、取り外しができない装置が付いている間は、歯磨きがしにくくなりむし歯のリスクが高まります。
丁寧な歯磨き・クリニックでの定期的なメンテナンスを受けるようにしてください。
小児矯正のタイミング
- 小児矯正を始めるタイミングを教えてください。
- 小児矯正は、噛み合わせの種類・年齢・永久歯の生えている状況によって治療方法が変わり、始めるタイミングも変わることを理解しておきましょう。
例えば、顎を前後・左右にずらさないと咀嚼が困難な場合などは、乳歯期でも積極的に治療を開始してください。また、早期に治療を始めることで治療結果がよくなる傾向があります。
永久歯が生えそろう前でも、歯並びが悪くなる原因が見られたタイミングで治療を始めることで、将来的に長い期間の矯正治療を避けることも可能です。
さらに、早いタイミングで小児矯正を始めることは、将来矯正治療を行ったときに抜糸の必要がなくなるメリットがあります。
例えば、高校生以上から矯正治療を開始した場合に抜歯をするのは約8〜9割ですが、8〜9歳から治療を始めた場合は、約6〜7割は抜歯せずに治療が可能です。
顎の成長期に治療することで抜歯せずに歯列矯正を完了できるため、目安として上下の前歯が4本ずつ永久歯しに生え変わった頃がスタートに適しているといえます。
- 小児矯正は時期が早い程効果が期待できますか?
- 小児矯正では、成長の後押しを利用するため、悪習慣の改善に役立ち将来的に歯並びを安定させることができます。
口呼吸や舌の位置などの悪習慣は、期間が長い程改善することが難しくなるため、早めの治療がおすすめです。
また、次の場合は乳歯列期に治療を開始するとよいでしょう。- 噛み合わせの改善が期待できる場合
- 乳歯列期に治療することで永久歯列期の治療が不要になる治療が軽くなる場合
- 放置すると症状が悪化することが予想できる場合
逆に混合歯列期までに治療をしても症状が改善しないと予想された場合は、永久歯が生えそろってからまとめて行うこともあります。その場合は、経過観察を行い適切なタイミングで小児矯正を始めましょう。
- 治療期間はどのくらいですか?
- 小児矯正では、乳歯列期から混合歯列期の間に成長を利用して行い、その後本格的な歯列矯正を行い、理想の歯並びを目指します。
混合歯列期までに治療を行っても永久歯列期で最終的な治療を行う場合が多いです。
そのため、小児矯正での治療期間は、永久歯列期までと考えておくとよいでしょう。しかし、永久歯列期前に治療を行うことで、本格的な治療が短い期間で済むメリットがあるため、早めの治療開始で治療期間を短くすることが可能といえます。
編集部まとめ
小児矯正は、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期によって治療法が異なります。
また、基本的には自費診療となるため、歯科医院・治療法・治療期間によって費用が大きく異なるため事前に確認することが大切です。
早期の治療は、永久歯列期の治療期間を短くできたり抜歯の必要がなくなったりするので、ぜひ検討してみてください。
参考文献