八重歯があるとチャームポイントにもなるので、ネガティブなイメージを持つ方は多くないでしょう。
しかし、八重歯は愛嬌があるイメージを与える反面、むし歯や歯周病のリスクが高くなってしまいます。
そこで、本記事では八重歯の部分矯正ができるのか解説していきます。また、費用・治療方法・期間についてもご紹介するので参考にしてみてください。
八重歯の部分矯正ができるケース
八重歯の部分矯正は誰でもできるわけではありません。ここでは、部分矯正ができるケースをご紹介します。
八重歯以外の歯並びに問題がない
八重歯に限らず部分矯正は、歯並びに問題がない場合にしか行えません。そもそも八重歯はスペースがないところに生えてきてしまった犬歯で、ねじれたり重なったりして生えてきます。
少しのねじれや重なりであれば部分矯正が可能なことがありますが、重度の場合は部分矯正できません。
ガタガタが重度だったり歯列が出っ歯だったりする方も、部分矯正後に後戻りする可能性があるため施術できないでしょう。
歯並びに問題がある方が八重歯を部分矯正すると、後戻りしやすいだけでなく健康な歯に力が加わりすぎてしまうことがあります。
歯が移動するスペースを作れる
部分矯正の場合、歯列拡大ができなかったり抜歯を行えなかったりするので、歯を移動するスペースがないといけません。
歯にヤスリをかけてスキマを作るIPRは、1つの歯間につき0.5mmまでしか削れないといわれています。親知らず・奥歯を除いた歯列の全歯間をIPRで0.5mmずつ削ると、片顎5.5mmとなるでしょう。
そのため、八重歯を5.5mm以上移動させなければいけないケースでは、部分矯正を断られる可能性が高いです。
部分矯正でも抜歯をすることはありますが、状態によっては抜歯する選択肢が選べません。抜歯することでスペースが確保されるものの、抜いたことでスペースが余ってしまい、すきっ歯になる可能性があるからです。
前歯の噛み合わせが深くなっていない
上の歯が下の歯に2mmほど重なっているくらいの深さが正常な噛み合わせです。噛み合わせが悪く下の歯が見えない過蓋咬合の状態では部分矯正ができません。
これは、顎の骨格バランスに問題があることが多く、部分矯正では改善できないためです。また、過蓋咬合の場合、部分矯正したとしても後戻りする可能性が高くなります。
後戻り防止のための器具もありますが、噛み合わせが深いと装着できません。
前歯の噛み合わせが深い場合以外でも、不正咬合の方は軽度であれば部分矯正できますが、重度の場合は全体矯正になることが多いと覚えておきましょう。
八重歯を矯正するメリット
八重歯はチャームポイントの1つとされていましたが、歯の健康志向が高まってきた現在では矯正した方が良いといわれています。
ここでは、八重歯を矯正するメリットを4つ見ていきましょう。
むし歯や歯周病を予防できる
八重歯は隣接する歯と重なっているため、隣の歯が後退している状態です。そのため、歯ブラシやデンタルフロスでは汚れが落しきれず蓄積してしまいます。
食べカスを放置してしまうと細菌が増え、むし歯や歯周病が進行します。また、八重歯が生えている方の多くが口が閉じられないために、口呼吸になりがちです。
口呼吸は唾液が乾いてしまい、細菌が繁殖しやすい状態になります。これもむし歯や歯周病の原因です。
むし歯や歯周病は治療せずにいると、全身に細菌が回ったり顎の骨が腐ったりと進行するほど症状が深刻になっていきます。
そのため、むし歯や歯周病のリスクを減らすためにも、八重歯を矯正して正常な歯並びにしましょう。
正常な歯並びにすれば、適切なブラッシングやフロッシングによる日々のケアで歯の磨き残しが少なくなります。
口内の傷や口内炎が減少する可能性がある
八重歯がある方は、歯が口の外側に突き出ている状態です。そのため、突き出た部分が唇の内側を傷つけてしまい口内炎が発生しやすくなります。
また、歯が正常な位置から外れ、口の粘膜を継続的に刺激すると稀に口腔ガンの原因となることもあるので注意しなければなりません。
八重歯があって口内炎ができやすいと感じている方は、ガンのリスクを下げるためにも矯正治療を検討しましょう。
口内の傷や口内炎ができやすいと、食事をすることが億劫になり栄養不足に陥ってしまいます。こうなると、口内炎は治癒するまでに時間がかかるといった悪循環になりかねません。
食事の仕方に気を遣っていても、根本から治療しなければ解決できません。口内炎のストレスから解放されるためにも、八重歯の治療を行うことがおすすめです。
コンプレックスを解消できる
八重歯はチャームポイントではなく、コンプレックスの1つと思っている方も多いでしょう。
健康志向が強まった現在では、噛み合わせや口内炎などの解消だけでなく、見た目の悪さを感じる方が増えてきました。
「八重歯があることで歯を出して笑えない」と悩んでいる方だけでなく、顔つきに悩む方も多いです。
八重歯は歯の配置よりも外側に突き出ているため、この部分の頬が外側に膨らんでしまいます。口の端の頬が膨らむことで、顔の外観が小動物のように見えることもあるでしょう。
八重歯を治療することで、歯を見せやすくなる・笑顔に抵抗がなくなる・顔の輪郭が変化するといった効果があります。これによってコンプレックスの解消につながるでしょう。
噛み合わせが改善できる
そもそも犬歯は噛み合わせをサポートして、歯列にかかる圧力を分散させる役割があります。
しかし、八重歯があると上下の犬歯が噛み合わず、他の歯に大きな負担がかかって歯の寿命を縮めてしまいます。
噛み合わせが悪いとむし歯・歯周病・知覚過敏・顎関節症などのリスクがあるため、改善することを検討しましょう。
八重歯による噛み合わせを改善すると、食事をしっかり噛めるため、消化がよくなることで胃への負担も軽減されます。ただし、八重歯での噛み合わせ改善は一部しかできません。
顎の骨格バランスや出っ歯など全体的に歯列矯正をしなければならないケースでは、部分矯正による噛み合わせ改善ができないのです。
この判断は素人ではできないので、歯科医師に相談して部分矯正か全体矯正かを見極めてもらいましょう。
八重歯を部分矯正する主な治療法は3種類
部分矯正と聞くとワイヤー矯正のイメージが強いですが、それだけではありません。ここではワイヤー矯正で行う表側矯正・舌側矯正(裏側矯正)だけでなく、マウスピース型矯正についてもご紹介します。
表側矯正
表側矯正は、歯の外側にブラケットを取り付けワイヤーの力を使用して歯を移動させる方法で、多くの方がイメージする一般的な矯正方法です。
歴史が長いので経験や知識が豊富な歯科医師が多く、矯正方法の中で多くの歯科医院で提供されています。
一般的な矯正期間は2年程度ですが、部分矯正の場合は数カ月〜1年程度と全体矯正よりも短期間での矯正になることが多いです。
短期間でできたり費用を抑えられたりする表側矯正ですが、デメリットもあります。表側矯正は他の矯正方法と比較すると、矯正していることが目立ちます。
また、痛みを感じやすかったり食事が矯正器具に挟まったりするので、ストレスを感じることもあるでしょう。矯正器具を付けていることで、磨き残しが増えてむし歯のリスクもあります。
歯の表側につけていることで口の閉じにくさを感じる方も多いでしょう。舌に口内炎はできにくいですが、装置によって唇やその周辺に口内炎ができることもあります。
舌側矯正(裏側矯正)
舌側矯正(裏側矯正)は、表側矯正と同様の矯正方法を歯の裏側(舌側)に行うことで、外見的には表側矯正よりも目立たない矯正方法です。
表側矯正のように歯を大きく移動させる治療や噛み合わせを改善する治療にも適用されます。
そのため、矯正装置が目立つことに抵抗がある方や営業職の方などに向いている矯正方法で、表側矯正でできる範囲であれば舌側矯正(裏側矯正)できるケースが多いので人気です。
しかし、舌側矯正(裏側矯正)は表側矯正よりも矯正期間が長く、全体矯正だと3年程度、部分矯正の場合は3カ月〜1年といわれています。
舌側矯正(裏側矯正)は矯正が目立ちにくい反面、舌が矯正器具にあたり活舌が悪くなるデメリットがあるので、人前で話す機会が多い方にはおすすめできません。
また、違和感があったり舌に口内炎ができやすくなったりするといったデメリットもあります。ただし、違和感は数週間の装着で慣れる方がほとんどです。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正は、透明なマウスピース型の装置を用いて歯並びを調整する治療方法で、新しい矯正方法として注目されています。
この方法は、ワイヤー矯正と比較すると費用が低い・治療期間が短い・痛みや違和感が少ないという特徴があります。しかし、ワイヤー矯正よりも適応できる症例が少ない矯正方法です。
例えば、歯並びを大幅に変える・噛み合わせを改善するといった悩みには適しません。治療期間は通常1年〜2年程度ですが、部分矯正の場合は早い方だと数カ月で終了します。
ただし、1日20時間以上装着しないといけないことを覚えておきましょう。
マウスピース型矯正は目立たない矯正方法ですが、対応できる症例が少ないので必ずしも八重歯の治療ができるとは限りません。
また、自分で装着を行うため自己管理ができない方には不向きです。マウスピース着用中は飲食できませんが、外せば食べたいものを食べられます。
八重歯の部分矯正にかかる期間はどれくらい?
八重歯の部分矯正は早くて3カ月で終了しますが、八重歯の程度・年齢・症状によって期間は異なります。一般的には1年程度かかるといわれています。
しかし、この期間は永久歯が生え揃っている場合です。永久歯が生え揃っていない子どもの場合、1年〜2年程度の矯正期間が必要になります。
また、矯正期間が長くなるほど通院回数が増えます。矯正器具はどれを使用していても、通院による微調整やメンテナンスが必要です。そのため、通院できないとさらに矯正期間が延びる可能性があるので気を付けてください。
また、治療終了後は後戻りさせないために、保定装置を付ける歯科医院もあります。保定装置は矯正期間と同じ期間の装着が必要になると覚えておきましょう。矯正後は保定期間以外にも3カ月~半年に1度経過観察のために通院する場合もあります。
八重歯の部分矯正にかかる費用相場は?
八重歯の部分矯正にかかる費用相場は、矯正方法によって異なります。ここでは、表側矯正・舌側矯正(裏側矯正)・マウスピース型矯正の費用相場をご紹介するので、参考にしてみてください。
表側矯正
部分矯正の費用の目安は30〜60万円(税込)ですが、全体矯正での改善が必要でないと判断された場合100万円(税込)以上と高額な治療費になることもあります。
相場といっても価格幅が広いことに疑問を感じる方も多いでしょう。この価格幅は、ワイヤー矯正に用いる装置の種類の違いです。
金属製のブラケットであれば費用を抑えられますが、目立ちにくいセラミックやジルコニアなどは価格が高くなってしまいます。
そのため、費用を優先するのか目立ちにくさを優先するのかで金額が大きく変わるので、よく考えてから装置を決めることがおすすめです。
舌側矯正(裏側矯正)
表側矯正よりも費用が高く、部分矯正の場合は40〜70万円(税込)が相場です。
部分矯正では治療できないと判断された場合は、100〜170万円(税込)とさらに高額な費用がかかります。
表側矯正と使用する装置はあまり変わらないのに、なぜ舌側矯正(裏側矯正)の方が高額になるのでしょうか。それは、歯の裏面は表面よりも形状が複雑なため、1つ1つオーダーメイドのブラケットを使用しているためです。
また、表側矯正よりも舌側矯正(裏側矯正)の方が技術的に難易度が上がるため、技術料が加算されることで価格が高額になっています。
マウスピース型矯正
費用が抑えられるイメージのあるマウスピース型矯正ですが、部分矯正の場合は10〜40万円(税込)と表側矯正より少し安い程度です。
全体矯正になる場合には、60万〜100万円(税込)が相場といわれています。
ただし、マウスピース型矯正の場合、まとめての支払いではなく回数制のことがある点に注意しましょう。回数制の場合、マウスピースの枚数が増えれば増えるほど価格が高額になっていきます。
特に重度の八重歯の場合断られなくても回数が増えてしまう可能性が高いため、慎重に検討した方が良いでしょう。
八重歯は部分矯正で治らないケースも
八重歯を治したい方の多くは、八重歯だけを引っ込める矯正治療ができないかと思っているでしょう。八重歯の場合、八重歯だけを部分矯正で治せるケースの方が少ないです。
八重歯のみの部分矯正をするためには先述したように、八重歯以外の歯並びに問題がないこと・歯が移動するスペースを作れること・前歯の噛み合わせが深くなっていないことに当てはまっている必要があります。
抜歯したり顎の骨格に問題があったりする場合は、部分矯正が適用外になってしまうのです。部分矯正ができない場合は、全体矯正で八重歯を治療するしかありません。
また、八重歯の部分矯正が適用できる方でも、歯科医院によっては矯正事例が少ないため断られることもあります。そのため、矯正事例が豊富な歯科医院を選ぶことがおすすめです。
まとめ
歯の健康志向が高まっている現在、八重歯を矯正治療で治すためには程度によって部分矯正できるかが異なります。
部分矯正できるかを自己判断で見極めることは不可能なため、歯科医院を受診して適切な治療法を提案してもらいましょう。
本記事でご紹介した矯正方法や費用を参考に、八重歯を改善していきましょう。
参考文献