ワイヤー矯正

裏側矯正(舌側矯正)中のキス、大丈夫?安心してキスするためのガイドライン

裏側矯正(舌側矯正)中のキス、大丈夫?安心してキスするためのガイドライン

矯正治療を検討中の方は、いろいろな点に不安を感じていることかと思います。その中でも「キス」に関しては、周囲の人はもちろん、歯科医師にも相談しにくいのではないでしょうか。お口の中に金属製のワイヤーやブラケットが固定されるのですから、普通に考えるとキスが難しくなりそうなものです。

ただ、矯正装置を歯列の裏側に設置する裏側矯正(舌側矯正)の場合は、安心してキスができそうなイメージもあります。今回はそんな裏側矯正(舌側矯正)中のキスについて、気を付けておくべき点やアドバイスをわかりやすく解説します。

裏側矯正(舌側矯正)中のキスが難しい理由

裏側矯正(舌側矯正)中のキスが難しい理由 まずは、裏側矯正(舌側矯正)中のキスの難しさについてです。当然ですが何も装着していない状態よりもキスをするのがやや難しくなります。それは次に挙げるような理由からです。

歯がぶつかる可能性

裏側矯正(舌側矯正)では、歯列の裏側にマルチブラケット装置を装着します。外からは何も装着していないように見えるので、パートナーには事前に矯正中であることを伝えておくと良いでしょう。装置が裏側にあるとはいえ、キスの際に歯がぶつかる可能性があります。

キス中に歯がブラケットと接触すると、せっかくの雰囲気が台無しになってしまいます。ただ、パートナーの歯がブラケットやワイヤーと接触したからといって、ケガをすることはまずありませんのでご安心ください。

・ハーフリンガルには要注意
裏側矯正(舌側矯正)には、「フルリンガル」と「ハーフリンガル」の2種類があります。フルリンガルは、上下のともに装置を裏側に設置する方法で、パートナーの歯にぶつかるリスクは比較的低いと言えます。一方、ハーフリンガルは装置を上だけ裏側に設置して、下は表側に装着することから、キスの仕方によっては歯や唇が当たる場合があります。とはいえ、下の装置はもともとキスの時に邪魔になることが少ないので、そこまで神経質になる必要もないといえます。

清潔感の欠如

悪い歯並びには「不潔」というイメージを持つ方もいらっしゃることでしょう。実際、歯並びが悪いと歯磨きしにくく、歯垢(しこう)や歯石がたまりがちです。その結果、歯が黄ばんで見えたり、口臭が強くなったりするものです。歯列矯正はそんな悪い歯並びを治すための治療ですが、装置が邪魔でブラッシングしにくくなることは多々あります。

キスをする相手からすると、それだけで不潔に思えてしまうかもしれませんね。ただ、裏側矯正(舌側矯正)に関しては、装置がそもそも見えないことから、不潔な印象を与えることはありません。歯列の裏側は唾液による自浄作用が働きやすいこともあり、表側矯正よりも清潔にしやすいというメリットもあります。

視線が歯に向かう

出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった悪い歯並びは、口元の印象を大きく左右します。キスをする時にそうした歯並びが目に入ると、ロマンチックだったムードも一変してしまう可能性もあります。日本人は比較的、歯並びの異常に寛容的ではありますが、その人の価値観によってはムードが壊されてしまうこともあるのです。それは矯正装置も同様です。

いざキスをする際にギラギラとしたワイヤーやブラケットが目に入ると、気持ちが萎えてしまう方もいるかもしれません。そうした矯正装置によるマイナスな効果は、表側矯正で最も顕著に現れます。歯列の裏側に装置を設置する裏側矯正(舌側矯正)なら、そこまで気にすることはありません。裏側矯正(舌側矯正)がキスのムードに悪影響を与えたという話は、ほとんど耳にしたことがありませんし、実際そうなのでしょう。

裏側矯正(舌側矯正)中のキス前に気をつけておくこと

裏側矯正(舌側矯正)中のキス前に気をつけておくこと 裏側矯正(舌側矯正)は、キスの邪魔にはならない装置ですが、事前にいくつか気をつけておくべきことがあります。

ワイヤーで唇が傷つかないようにする

裏側矯正(舌側矯正)でも下には表側に装置がついている場合があります。その際、注意が必要なのがワイヤーによる唇へのダメージです。矯正用のワイヤーは、歯茎や唇の内側の粘膜を傷つけないように曲げられていますが、結紮線(けっさつせん)と呼ばれる細い針金が外側に飛び出していることがあります。

それはキスの最中に相手の唇を傷つけるリスクがありますので、事前に伝えておくことが大切です。何よりもまず、キスの前にはワイヤーが飛び出ていないことを確認しておくと良いでしょう。キスの時に唇を傷つけるリスクがある場合は、ワックスで保護するなど、適切な処置を加えておきましょう。

口内の清潔さを保つ

裏側矯正(舌側矯正)中にキスをする場合は、事前の歯磨きをしっかり行っておきましょう。キスの少し前に食事をした場合などはとくに注意が必要です。キスまでに歯磨きをする余裕がなかった場合は、口臭防止のためのケアを行うことが大切です。普段から使っている口臭ケアグッズを使って、口臭が強くならないよう努めましょう。

食事中のマナーに気をつける

裏側矯正(舌側矯正)は、食事中のマナーと食事後の口腔(こうくう)ケアが極めて重要となります。まず、食事中は裏側の装置に繊維質の食べ物などが詰まることが多いようです。食べ物を細かく崩したり、少しずつ口に入れたりする配慮が重要となります。水分も小まめにとるようにしましょう。矯正装置に食べ物が詰まったからといって、食事中につまようじなどを使って取るようなことは控えてください。

一緒に食事をしている人に不快な思いをさせてしまいます。 食事後は、必ず口腔(こうくう)ケアを行うようにしましょう。裏側矯正(舌側矯正)中は、ほぼ100%の確率で何らかの食べかすなどが装置に付着しています。それをそのままの状態で放置すると、キスの時に悪臭を放つようになります。歯ブラシによるブラッシングができない環境であったとしても、うがいでお口のなかをゆすいだり、ガムを噛んで唾液による自浄作用を高めたりすることが大切です。その後にキスを控えているのであれば、食事後は一度、化粧室でお口の中の衛生状態をチェックしておくことを推奨します 。

痛みがある時に伝える

裏側矯正(舌側矯正)も表側矯正と同様、治療中の痛みがあります。とりわけワイヤーを調整した直後は、ちょっとした刺激が加わるだけでも歯や歯茎に強い痛みが生じます。そうした矯正中の不快感については事前に伝えておくと良いでしょう。キスの時に痛みが生じる可能性もあります。矯正中の痛みでキスができなかったり、キスの時に不快な表情を浮かべてしまった場合でも、事前に矯正中の不快症状について伝えておけば、相手に嫌な思いをさせなくて済みます。

写真映りに注意

普段からパートナーとの写真や自撮りをしている人は、写真映りに注意が必要です。矯正装置を着けていると、どうしても笑顔が不自然になります。装置の位置や歯並びの状態によっては、上手く笑えない場合もあるからです。そうした矯正中の写真映りは、自然な笑顔を作れるようにしておくと後悔することも少なくなります。

裏側矯正(舌側矯正)は他の矯正方法よりキスしやすい?

裏側矯正(舌側矯正)は他の矯正方法よりキスしやすい? ここまでの解説で、裏側矯正(舌側矯正)は比較的キスしやすいことをおわかりいただけたかと思います。裏側矯正(舌側矯正)は他の矯正装置とは少し異なる構造を採っているからです。そこで気になるのがワイヤー矯正やマウスピース矯正との比較ですね。

ワイヤー矯正(表側)との比較

ブラケットとワイヤーを歯列の表側に設置する方法を表側矯正といいます。一般的にはこれをワイヤー矯正と呼んでいます。ワイヤー矯正は、裏側矯正(舌側矯正)と比べるとややキスしにくい装置といえるでしょう。なぜなら、ブラケットとワイヤーが歯の表側に固定されているため、唇や歯に当たる可能性が高くなっているからです。

装置も目立ちやすく、必ずと言って良いほど目につくことから、事前にきちんとパートナーに説明しておくことが大切です。とはいえ、表側矯正でもキスの邪魔になるケースはかなり稀といえます。

マウスピース型矯正との比較

マウスピース型矯正は、装置が目立たず、治療中であることに気付かれにくいシステムです。そのため、キスも普段通りに行えそうなものですが、実際はどうなのでしょうか。まず、マウスピース矯正は好きな時に自由に取り外せることから、キスの時だけ何も着けていない状態を作り出すことが可能です。その状態なら裏側矯正(舌側矯正)よりも間違いなくキスしやすくなるはずです。ご自身はもちろん、パートナーも配慮する必要がなくなります。

次に、マウスピースを着けたままでのキスですが、これも比較的障害が少ないといえるでしょう。マウスピース矯正の装置は、表面が滑らかなので、パートナーの唇や歯を傷つける恐れがありません。パートナー側もキスの時に大きな違和感が生じることもないでしょう。ただ、大人のキスをする場合は、上下のマウスピースに大きな違和感が生じるかもしれません。

その点においては裏側矯正(舌側矯正)の方が優れているといえます。 マウスピースを外してキスをした場合でも、アタッチメントと呼ばれるレジン製の突起が着いている場合は、パートナーに注意を促す必要があります。アタッチメントがパートナーの歯や唇を傷つける恐れがあるからです。キスの仕方によってはアタッチメントが外れてしまうこともあるでしょう。

裏側矯正(舌側矯正)中のキスのアドバイス

裏側矯正(舌側矯正)中のキスのアドバイス 裏側矯正(舌側矯正)中にキスをする場合は、次の3点に配慮しましょう。

矯正器具の適切なケア

矯正器具は常に清潔な状態を保つようにしてください。矯正器具が不潔だと、それだけでキスの時にネガティブな印象を与えてしまいます。裏側矯正(舌側矯正)は、目で確認しながらケアできない部分も多く、苦労することも少なくないかと思いますが、そこは頑張ってお掃除してください。 裏側矯正(舌側矯正)の器具は、通常の歯ブラシだけでなく、ワンタフトブラシやデンタルフロスなども活用しながら、丁寧に清掃することが大切です。マウスウォッシュやデンタルリンスなどを併用すると、衛生管理もしやすくなります。

自己意識の管理

裏側矯正(舌側矯正)中は、いろいろなことが気になってしまうかと思います。お口の中に金属製の装置が入っているのですから、それはある程度、仕方がないのですが、気にしすぎるのも良くありません。 裏側矯正(舌側矯正)の器具は、あなたが考えているほど目立つものでもなく、キスの邪魔にもなりません。ご自身が気にしすぎると、パートナーにも過剰な不安を与えてしまいます。基本的には裏側矯正(舌側矯正)の器具で相手の歯や唇を傷つけてしまうことはありませんし、適切にケアしていれば不快な思いもさせることはないでしょう。

パートナーとのコミュニケーション

裏側矯正(舌側矯正)中は、パートナーとのコミュニケーションが極めて重要となります。何も知らせずに矯正を進めていると、いろいろな場面でトラブルが起こりかねないため十分な注意が必要です。 裏側矯正(舌側矯正)の進行状況は常にパートナーと共有するようにしてください。今はどの段階で、日常生活にはどのような不自由があるのかなどを伝えておくと、パートナーとのすれ違いも減ります。

裏側矯正(舌側矯正)の終了後のキス

裏側矯正(舌側矯正)の終了後のキス 最後に、裏側矯正(舌側矯正)が終了した後のキスについて解説します。

矯正後の歯並びの変化

裏側矯正(舌側矯正)が終了した後は、歯並びが良くなったことを実感することでしょう。出っ歯や受け口、乱ぐい歯など、それぞれが抱えていた歯並びの問題が根本から改善されていることに感動するのではないでしょうか。パートナーにも自信を持って笑顔を見せられるようになるかと思います。

自信を持てる

裏側矯正(舌側矯正)によって歯並びが美しくなると、口元に自信が持てます。その結果、何のためらいもなくキスもできるようになることでしょう。あれだけ気になっていた裏側矯正(舌側矯正)の装置もないのですから、パートナーに迷惑がかかることもありません。それはあなたが裏側矯正(舌側矯正)を数年間頑張ったご褒美ともいえます。

矯正終了後も大事なケア

裏側矯正(舌側矯正)が終了した途端に、気が抜けてしまう方は少なくありません。理想に近い歯並びが手に入っただけでなく、お口の中の装置がすべて取り除かれたのですから、開放感に浸りたいお気持ちもよく理解できます。ただ、そうした開放感から矯正終了後のケアを怠ってしまうのはあまりにも危険なので要注意です。 矯正後の口腔(こうくう)ケアを怠ると、虫歯や歯周病のリスクが上がってしまいます。せっかくきれいに並べた歯を虫歯や歯周病で失うのはあまりにも残念なことです。矯正後はリテーナーと呼ばれる、後戻りを防止する装置を装着するため、ケアしにくい部分もありますが、引き続き衛生管理を徹底するよう心がけてください。歯並びが良くなった状態なら、ブラッシングにかかる時間も短くなりますし、口腔(こうくう)ケアに割く時間も大幅に減らすことができることでしょう。

まとめ

まとめ このように、裏側矯正(舌側矯正)はその他の矯正法よりもキスしやすい面が多いと言えます。歯列の裏側に装置を装着するため、キスの邪魔になることが少ないのです。そんな裏側矯正(舌側矯正)でもキスの前に気を付けるべきことがいくつかありますので、本文でご紹介した内容を参考にしていただけたらと思います。裏側矯正(舌側矯正)が終わった後も気を抜かず、口腔(こうくう)ケアや保定処置をしっかり行っていきましょう。裏側矯正(舌側矯正)が終了してすぐに虫歯や歯周病になってしまったらあまりにももったいないですからね。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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