歯列矯正は、歯並びや噛み合わせの改善を目的とする治療ですが、顔の印象や、特にほうれい線への影響についても疑問を抱く方も少なくありません。
この記事においては、歯列矯正によってほうれい線が薄くなるケース、あるいは逆に目立ってしまうケースについて詳しく解説します。また、そもそもほうれい線ができる原因や予防法といった基礎知識にも触れながら、治療後に得られる顔全体の印象の変化についても紹介します。歯列矯正を検討中の方、口元の変化に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。
歯列矯正とほうれい線の関係

- 歯列矯正でほうれい線を薄くすることはできますか?
- 歯列矯正によって直接ほうれい線が薄くなったり消えたりするわけではありませんが、口元の見え方の変化によってほうれい線の見え方が変化する可能性はあります。
ほうれい線は、頬のたるみや表情の癖などによって生じ、深いしわが刻まれ、その部分の肌のハリが失われている状態です。仮に歯列矯正をしたことでほうれい線の原因となる口元のでっぱりに変化があったとしても、肌に刻まれたしわのへこみは残る可能性が高いです。
一方、影になって目立っているようなほうれい線の場合、歯列矯正によって光や影の入り方が変わることで、しわが目立ちにくくなるケースは考えられます。
- 歯列矯正でほうれい線が目立つことはありますか?
- 歯列矯正をしたことでほうれい線が目立つようになることはあります。
例えば、歯が外側に張り出すようないわゆる出っ歯や口ゴボと言われるタイプの場合、口元が外側に押し出されている分、口周りのしわが伸びてほうれい線が目立ちにくい傾向があります。そのような方が歯列矯正をすることで口元が引っ込み、口元の皮膚に一時的に若干のたるみが出ることがあります。
また、もともとほうれい線がある方が歯列矯正をすることで、口元の見え方や影の入り方が変わり、ほうれい線が目立ちやすくなることがあります。
- 歯列矯正を受けると顔の印象はどのように変化しますか?
- 歯並びが変わることで、唇の位置や口周りの筋肉の使い方が変化するため、顔の印象も変化します。ただし、変化の仕方やその度合いは、もともとの歯並びや骨格、治療計画などによって大きく異なります。
特に変化が現れやすいのは、横顔のシルエットと、口元の突出感です。
美しい横顔の基準の一つとされるEラインが整うと、横顔のシルエットが洗練されて見えます。Eラインとは、横から見た際の鼻の先と顎を直線で結んだラインで、このラインの内側に唇の先があることが、美しい横顔の基準の一つとされています。
歯列矯正によって口元の突出感が抑えられると、Eラインの内側に唇の先が入りやすくなり、横顔が整っているように見えやすいといえます。つぎに現れやすい見た目の変化としては、口元やフェイスラインがあります。
出っ歯や口ゴボで、無理にお口を閉じていた場合、歯列矯正後には自然にお口が閉じられるようになり、口元がリラックスした印象になります。また、お口が開いていない方がきちんとした印象に見えます。また、間接的にあらわれる変化として、表情の変化があります。
歯並びが整うことで、笑顔に自信が持てるようになり、自然な笑顔になることができます。また、人と話すことが楽しくなり、笑顔が増える場合も少なくありません。
ほうれい線の基礎知識

- そもそもほうれい線とは何ですか?
- ほうれい線とは、鼻の両端からお口の両端にかけて斜めに入るしわの線のことです。
医学的には鼻唇溝(びしんこう)、英語ではスマイルライン(笑顔の線)とも呼ばれます。
主な原因は加齢による皮膚のたるみや弾力低下ですが、表情のくせなどでしわとなって残ることもあります。
- ほうれい線が濃くなる原因を教えてください
- ほうれい線が濃くなる原因は、大きく分けて二つ考えられます。
一つ目は、加齢に伴うお肌の構造の変化です。年齢を重ねることで、お肌はコラーゲンやエラスチンといった弾力を保つ成分を失い、たるみが生じます。このたるみによって、頬などの顔の高い部分が重力に負けて下がり、口元の溝の部分に覆いかぶさることで、深いへこみや影ができます。さらに、お肌が乾燥すると、表面のなめらかさやハリが失われるため、たるみによるしわがよりくっきりとして、ほうれい線が深くなっていきます。そして二つ目は、表情のくせによる定着です。
笑うときの癖などで、お口を横方向に強く引くような表情をすると、誰でも一時的にほうれい線ができます。このような表情を繰り返すことで、皮膚にしわの形が皮膚の折り目として記憶されてしまい、真顔になっても線がもとに戻りにくくなり、ほうれい線として目立ちやすくなります。
お肌に十分なハリがあれば、真顔に戻ったときにこの線は消えますが、笑顔が多く、ほうれい線が出ている時間が長い方や、特定の表情を頻繁にする方は注意が必要です。
- ほうれい線を目立ちにくくする方法はありますか?
- ほうれい線を目立たなくするためには、まず濃くならないよう予防する習慣を継続することが重要です。
特に加齢によるほうれい線を予防するには、スキンケアで丁寧に保湿を徹底することが大切です。お肌が乾燥すると代謝能力が低下し、弾力も衰えやすくなるため、乾燥を防いでお肌を健康な状態に保ちましょう。
表情のくせによるほうれい線についても、お肌をしっかりと保湿しておくことで、表情ジワによるへこみが深く定着しにくくなります。また、スキンケアだけでなく、バランスの取れた食事や適度な運動、質の高い睡眠を確保するといったインナーケアも有効です。これらは正常なお肌のターンオーバーを促し、お肌の老化を根本から予防します。さらに、濃くなってしまったほうれい線を目立ちにくくする方法もあります。上記のようなスキンケアやインナーケアを引き続き行うことで、ほうれい線が深くなるのを防ぐことができ、加えてメイクアップによって視覚的に目立ちにくくすることも有効です。
具体的には、ほうれい線が影になって目立っているため、お肌の色よりワントーン明るい色のコンシーラーやハイライトカラーを、ほうれい線のくぼみに塗り、周辺をぼかして色を馴染ませます。これにより、くぼみの影を明るく見せることができ、ほうれい線を薄く目立ちにくくすることができます。
歯列矯正の基礎知識

- 歯列矯正はどのような治療ですか?
- 歯列矯正は、悪い歯並び(不正咬合)や噛み合わせを改善する歯科治療です。
見た目を整えるだけでなく、むし歯や歯周病の予防、咀嚼機能や発音の改善など、健康面や機能面での効果も目的とします。
ワイヤーやマウスピースなどの矯正装置を使い、歯や顎骨に力をかけてゆっくりと動かし、歯並びを整えていきます。
歯の移動や、その後に定着させるための保定を行う必要があり、治療期間は数年かかることが一般的です。
- 歯列矯正の種類を教えてください
- 永久歯列完成後の歯列矯正は、ワイヤーによる歯列矯正とマウスピース型矯正装置による治療の、大きく分けて2種類の方法があります。
ワイヤー矯正は取り付け方にさまざまな方法があり、歯の表側に取り付ける表側矯正(唇側矯正)、歯の裏側に取り付けて目立ちにくくする裏側矯正(舌側矯正)、前歯だけ裏側に取り付けるハーフリンガル矯正などがあります。
マウスピース型矯正装置による治療は、全顎矯正と部分矯正があり、さまざまなメーカーから器具が販売されていますが、基本的な仕組みはどれも同様となっています。また小児矯正では、さまざまな装置を使用し、上下顎のズレの改善を行ったり、歯列や顎の成長発育を阻害する因子を取り除いたりする方法などによって行われるものもあります。
- 外科的矯正とはどのような治療ですか?
- 外科的矯正とは、手術によって顎骨を動かすことで、噛み合わせを改善する治療法です。
通常の歯列矯正だけでは改善できない骨格の問題を解決することができます。
下顎が突出している受け口の患者さんや、逆に著しく下顎が後退している出っ歯の患者さんの治療が可能で、歯列矯正も合わせて行います。
編集部まとめ

口元の突出が大きかった方が矯正で口元が引っ込むと、一時的な皮膚のたるみによってほうれい線が目立ちやすくなる可能性もゼロではありません。
しかし、ほうれい線が濃くなる主な原因は、加齢によるお肌の弾力低下と、表情のくせです。できた線を深くしないためには、毎日の丁寧な保湿を中心としたスキンケアや、バランスの取れた食生活といった根本的な予防習慣がとても重要です。
歯列矯正は、噛み合わせの改善や口腔衛生の向上といった健康面でのメリットがとても大きい治療です。顔の変化について不安がある場合は、歯科医師と十分に話し合い、ご自身の骨格や歯並びに合った適切な治療計画を立てることが、理想の結果につながるでしょう。