歯列矯正は保険適用外なのか、医療費控除の対象になるのかご存じですか? 本記事では、歯列矯正が本当に保険適用外なのか、また医療費控除の対象なのかについて以下の点を中心にご紹介します!
- 歯列矯正が保険適用外なのか
- 歯列矯正は医療費控除の対象なのか
- 歯列矯正の費用を抑える工夫
歯列矯正を考えている方、保険適用や医療費控除について知りたい方にもご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
歯列矯正は保険適用外なのか?医療費控除されるケースについて
歯列矯正は、一般的には保険適用外の治療とされています。そのため、治療費のほとんどは自己負担となります。 ただし、歯列矯正治療費は医療費控除の対象となります。医療費控除は、医療費の一部が所得税から控除される制度で、歯列矯正治療費もこの対象になります。具体的には、治療費の自己負担分が医療費控除の対象となり、所得税が控除されます。ただし、住民税の減額は所得税とは別の制度であり、住民税の減額には一定の条件があります(前述の通り、所得が一定の限度額を超えていない場合など)。医療費控除については国税庁のホームページをご参照ください。
国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_1.htm
そもそも医療費控除とは?
医療費控除とは、所得税の申告時に、自分や扶養家族の医療費が一定額を超えた場合に、超過分が所得から差し引かれる控除のことです。所得税法第35条に基づいて規定されています。 具体的には、以下のような医療費が対象となります。
・病院や歯科医院などでの診療費
・薬局での薬代
・歯科医院などでの歯科治療費
・眼科医院などでの視力矯正費
・医療機器の購入費用
ただし、以下のような費用は対象外となります。
・保険で補償された分
・生命保険料、医療保険料などの保険料
・温泉や健康ランドなどの入浴料、エステサロンなどでの美容整形費用
控除額の算出方法は、年収によって異なりますが、総所得金額に対して一定の割合を超えた分が対象となります。また、一定の限度額があり、それを超えた分は控除されません。
「歯列矯正」は医療費控除対象外? 保険適用外の場合もある!
歯列矯正における医療費控除、保険適用について詳しくみていきましょう。
保険が適用される場合
- 健康保険適用外矯正: 矯正装置を取り付ける前に、歯を抜くなどの処置が必要な場合や、治療期間が長期間にわたる場合に適用されます。治療費は自己負担となります。
医療費控除を受けるためには、どのような条件があるのか?
詳細は国税庁のホームページをご参照ください。
- 支払った医療費が一定額以上であること: 医療費控除を受けるためには、自分または扶養家族の支払った医療費が、所得金額等に応じた一定額を超えている必要があります。所得金額等に応じた一定額については、毎年税制改正に伴い変更されるため、確定申告前に新しい情報を確認してください。
- 医療費が健康保険などによって補償されないものであること: 医療費控除の対象となるのは、健康保険などによって補償されない医療費です。例えば、保険が適用されない歯列矯正治療や、眼鏡やコンタクトレンズなどの視力矯正費用、健康増進目的の温泉入浴費用などが挙げられます。
- 医療費が自分または扶養家族によって支払われたものであること: 医療費控除の対象となるのは、自分または扶養家族が支払った医療費です。支払った証拠を保存しておきましょう。
- 医療費が支払われた年度に確定申告を行っていること: 医療費控除は、医療費が支払われた年度の確定申告時に申告する必要があります。医療費が発生した年度に確定申告を行う必要があります。
治療以外の医療費控除の対象
- 歯科検診や口腔内のレントゲン撮影などの診断費用: 歯科検診や口腔内のレントゲン撮影などの診断費用は、医療費控除の対象となります。また、虫歯や歯周病の治療のために、必要な検査費用も対象となります。
- 歯科治療に必要な材料費用: 歯科治療に必要な材料費用も医療費控除の対象となります。例えば、詰め物や被せ物の材料費用、インプラント手術に必要な人工歯根の材料費用などが挙げられます。
- 歯列矯正に必要な材料費用: 歯列矯正に必要な材料費用も、医療費控除の対象となります。具体的には、ブラケットやワイヤーなどの矯正装置の材料費用や、矯正器具を装着するために必要なセメントなどの材料費用が挙げられます。
- 歯科治療や歯列矯正に必要な薬剤代: 歯科治療や歯列矯正に必要な薬剤代も、医療費控除の対象となります。例えば、鎮痛剤や消炎剤、抗生物質などの薬剤代が挙げられます。
歯列矯正の治療費を計画する際に知っておきたい医療費控除のポイント
歯列矯正費用を全額医療費控除に当てる際に、事前に知っておきたいポイントを紹介します。
医療控除できない、自己負担になる費用
- 自費治療にかかる費用: 歯列矯正において、自費治療にかかる費用は、医療費控除の対象外となります。自費治療には、矯正装置の種類によって金額に差があり、補完保険や自費保険などの適用も受けられないため、全額自己負担となります。子どもの矯正治療は医療費控除の対象となります。
- 矯正治療前の診断費用: 矯正治療を受ける前に必要となる診断費用は、医療費控除の対象となりますが、自己負担となります。例えば、口腔内のレントゲン撮影などは、自己負担となります。
- 矯正治療中の自己負担費用: 矯正治療中に、矯正器具の調整や交換などのメンテナンスが必要な場合があります。その場合の費用は、自己負担となります。また、矯正治療中は、硬いものや粘り気のあるものなど、食べ物に制限が生じますが、食事制限による費用(例えば、流動食品やカップ麺などの調理費用)は、自己負担となります。
分割払いやローン、クレジットカードなどの支払い方法でも医療費控除の対象!
医療費控除の対象となるのは、自分または扶養家族が支払った医療費の合計額です。支払い方法によって対象外になるものはありません。 例えば、歯列矯正にかかる治療費用をローンやクレジットカードで支払った場合でも、支払った金額が医療費の合計額に含まれている場合は、医療費控除の対象となります。また、分割払いで支払っている場合でも、支払いが完了した年度に支払った分全てが医療費控除の対象となります。 ただし、注意点として、医療費控除を受けるには、自分または扶養家族の所得金額に応じた一定額以上の医療費を支払っている必要があります。また、支払った医療費については、正しい金額を申告する必要があります。
医療費控除還付金計算方法
- 課税所得から医療費控除額を差し引いた金額を計算する。
- 上記で算出した金額に対して、所得税率をかけた金額を計算する。
- その金額から住民税額を差し引く。
- 差し引いた金額が医療費控除還付金の金額となる。
医療費控除還付金は、確定申告をした際に還付されます。ただし、申告期限を過ぎた場合や、所得税が未納の場合には、還付金を受け取れません。
医療費控除の申請方法と必要書類について
医療費控除を受けるに当たり、必要になる申請や書類について紹介します。
医療費控除を受けるには、領収書やレシートの保管が必要?
医療費控除を受けるためには、支払った医療費の証拠が必要です。歯列矯正で医療費控除を受けるには、領収書やレシートなどの支払い証拠を保管する必要があります。 具体的には、以下のような支払い証拠が必要です。
・歯科医院から発行された領収書やレシート
・銀行振り込みの場合は、振込明細書
・クレジットカード払いの場合は、請求書や明細書
注意点として、支払った医療費の金額は正確であることが求められます。金額に誤りがある場合は、医療費控除を受けられない恐れがあります。
医療費控除の申請手順
- 歯科治療を受ける際に、領収書やレシートなどの支払い証拠を保管する。
- 医療費の合計額を算出する。
- 確定申告用紙(所得税・復興特別所得税の確定申告書)に、医療費の合計額を記入する。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書に添付書類として、支払い証拠を添付する。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書を税務署へ提出する。
上記の手順に従って申請を行うことで、医療費控除の受け取りが可能となります。ただし、申請期限を過ぎた場合や、所得税が未納の場合には、医療費控除を受けられません。 また、歯列矯正にかかる医療費は、多額の金額がかかることがあります。医療費控除の申請には、確定申告が必要となるため、確定申告に関するルールや手続きについて、国税庁のホームページや税務署の窓口で事前に確認しておくことをおすすめします。
医療費控除の確定申告の手続き
歯列矯正における医療費控除の確定申告の手続き手順について紹介します。
- 医療費の合計額を算出する。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書の専用欄に、医療費の合計額を記入する。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書に添付書類として、支払い証拠を添付する。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書に、医療費控除を受けるための項目にチェックを入れる。
- 所得税・復興特別所得税の確定申告書を税務署へ提出する。
上記の手順に従って確定申告を行うことで、歯列矯正における医療費控除の受け取りが可能となります。 確定申告の期限は、毎年2月16日から3月15日までとなります。ただし、3月15日が土日・祝日の場合には、その翌日が期限となります。また、税務署によっては、期限を前倒している場合があるため、期限に余裕を持って手続きしましょう。
歯列矯正を受ける前に知っておきたい、保険の適用外とされる場合の対応策
保険適用外で歯列矯正治療を受ける前に知っておきたいポイントを紹介します。
歯列矯正の費用を抑えるための補助金や助成金について
- 市町村の助成金や補助金: 歯列矯正治療に対する助成金や補助金を設けている市町村があります。自治体によって支援内容や条件が異なるため、事前の確認をおすすめします。
- 健康保険制度の適用: 一部の歯列矯正治療については、健康保険が適用される場合があります。 矯正歯科治療は一般的には保険適用外ですが、下記の場合に限り保険診療の対象になります。1「別に厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療 2023年4月現在で61疾患について保険が適用されます。
2 前歯及び小臼歯のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)に対する矯正歯科治療
3 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・後の矯正歯科治療2については、障害者自立支援指定医療機関、3については、顎口腔機能診断施設において保険が適用されます。 - 児童手当の受給: 児童手当は、18歳未満の子どもがいる世帯に支給される手当です。児童手当を受け取ることで、医療費控除の上限額が増額される場合があります。
- 税制優遇措置の活用: 医療費控除や所得税の減税など、税制優遇措置を活用することで、歯列矯正治療にかかる費用の一部を節約できる場合があります。
詳細については、市町村役場や補助金・助成金に関する情報を提供するウェブサイトなどで確認することをおすすめします。
デンタルローンの利用
歯列矯正治療には高額な費用がかかるため、一括での全額支払いが難しい場合があります。そこで、デンタルローンを利用することで、負担を軽減できる可能性があります。 デンタルローンは、歯科医院が提携している金融機関などから借り入れできる医療費専用のローンです。利用方法は、まず歯科医院で治療の見積もりを受けた上で、必要な費用をローンで借り入れます。その後、借り入れた金額に対して、金利や手数料を含む返済計画を立て、分割払いで返済します。 デンタルローンのメリットは、一度に大きな金額を用意する必要がないことです。また、金利が低く設定されている場合があり、自分の返済計画に合わせて返済期間を調整できる点も魅力的です。ただし、ローンの利用には借入返済の負担があるため、計画的な返済が必要です。 デンタルローンを利用する際には、金利や返済計画など、自分に合った条件を選ぶことが重要です。借り入れには責任を持って返済しましょう。
歯列矯正の治療費を医療費控除以外の方法で節税する方法とは?
歯列矯正の治療費を抑える工夫について紹介します。
所得税の控除
歯列矯正治療費は、医療費控除の対象となります。医療費控除により、歯列矯正治療費を所得税の控除対象とすることが可能となり、費用を抑える工夫に繋がります。 医療費控除の対象となる治療費は、原則として自己負担分に限られます。また、一定の限度額を超えた場合でも、超過分は対象外となります。自己負担分の範囲や制限額について、あらかじめ調べておくことが大切です。
住民税の減額
歯列矯正によって費用が発生した場合、一定の条件を満たせば住民税の減額を受けられる場合があります。住民税の減額は、前年度の所得を基に算出された住民税額から、特定の医療費を控除することで行われます。歯列矯正治療費も、この特定の医療費の中に含まれます。 歯列矯正治療費を控除するためには、以下の条件が必要です。
・歯列矯正治療費が、自己負担分であること。
・前年度の所得が、一定の限度額を超えないこと。
具体的には、前年度の所得が一定の限度額を超えている場合は、医療費控除が適用されるため住民税の減額はできません。また、住民税の減額の対象となる医療費控除額は、所得税と同様に、保険が適用されない部分のみとなります。 住民税の減額を受けるためには、市区町村に申請する必要があります。申請の際には、医療費控除の申請時に提出した領収書などの証明書類が必要となります。また、申請期限があるため、期限内に申請しましょう。
まとめ
ここまで歯列矯正は保険適用外なのか、また医療費控除の対象についてお伝えしてきました。 要点をまとめると以下の通りです。
- 歯列矯正は基本的には保険適用外であるが、場合によっては保険適用になるため事前の確認が大切。
- 医療費控除を受けるためには、「支払った医療費が一定額以上であること」「医療費が健康保険などによって補償されないものであること」「医療費が自分または扶養家族によって支払われたものであること」「医療費が支払われた年度に確定申告を行っていること」の条件がある。
- 歯列矯正費用を抑える工夫の一環として、医療費控除については事前に確認しておくことをおすすめする。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。