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小児矯正で抜歯は必要?抜歯が必要になるケースや非抜歯矯正のメリット・デメリットなどを解説

小児矯正で抜歯は必要?抜歯が必要になるケースや非抜歯矯正のメリット・デメリットなどを解説

小児矯正は将来の健康な口腔環境を築くために大切な治療です。しかし「小児矯正に抜歯は必要なのか?」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

本記事では小児矯正の抜歯について以下の点を中心にご紹介します。

  • 小児矯正で抜歯が必要になるケースとは
  • 非抜歯矯正のメリット・デメリット
  • 小児矯正で抜歯後に起きやすい症状

小児矯正の抜歯について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

小児矯正で抜歯はしなくてもいい?

小児矯正で抜歯はしなくてもいい?

矯正治療における抜歯は、歯を適切な位置に動かすためのスペースを確保する目的で行われますが、小児矯正では抜歯をせずに治療できる可能性が高いといわれています。なぜなら、子どもの成長段階で矯正治療を始めることで、顎の発達を促しながら歯がきちんと並ぶスペースを作ることができるとされているからです。 このように、小児矯正では成長期の柔軟な顎の骨を活用できるため、歯を動かすための十分なスペースを確保できるケースがあります。

小児矯正で抜歯が必要になるケース

小児矯正での治療では抜歯が不要な場合もありますが、必要になるケースもあります。以下で詳しく解説します。

歯を移動させるスペースがない

矯正治療において、顎のなかに歯を移動させる十分なスペースがない場合、抜歯が必要になることがあります。
必要なスペースの広さは、歯をどのように動かすか、また全体の噛み合わせのバランスによって異なります。治療を始める前に、歯科医師による精密な診断と動かす計画のシミュレーションが重要です。このシミュレーションにより、抜歯が本当に必要かどうかを確認でき、治療のゴールがより具体的に見えてきます。

顎の成長が終わっている

11歳以降で顎の成長がほぼ終わっている場合は、新たにスペースを確保する手段として抜歯を選択する可能性が高くなります。歯を正しい位置に並べるためにはスペースが必要ですが、成長期を過ぎて顎の大きさが固定されてしまうと、そのスペースを確保する手段として抜歯が選択されることがあります。

なお、顎の成長を利用した矯正治療は、成長期の子どもにしか適用できません。

矯正治療の負担になる乳歯がある

矯正治療を進めるうえで、乳歯が支障になる場合には抜歯が必要になる可能性があります。例えば、乳歯がぐらついていて矯正装置の装着を妨げる場合や、生え変わりの時期を過ぎても乳歯が残っている場合が該当します。

乳歯の抜歯について心配される方もいるかもしれませんが、乳歯はもともと自然に抜け落ちる歯であるため、永久歯の抜歯と比べて子どもの体への負担は少ないとされています。

非抜歯矯正のメリット・デメリット

非抜歯矯正のメリット・デメリット

非抜歯矯正は、歯を抜かずに自然な歯並びを整える方法です。しかし、非抜歯矯正にはメリットがある一方で、治療内容や適応条件によってはデメリットもある治療になります。 メリットとデメリットを以下で詳しく解説します。

メリット

非抜歯矯正のメリットには、以下のようなことがあげられます。

        • 健康な歯を維持できる

      非抜歯矯正の魅力は、健康な歯をそのまま残せることです。特に年齢を重ねると、むし歯や歯周病による歯の喪失リスクが高まるため、健康な歯を保つことは大変重要です。さらに、歯を残すことで、将来的にインプラントやブリッジ治療の選択肢が広がる可能性もあり、長期的な歯の健康維持につながります。

        • 抜歯に伴うさまざまな負担が軽減される

      抜歯を必要としない場合、外科的な処置に伴う痛みや恐怖心、リスクなどが軽減されます。抜歯後に生じる痛みや出血、さらにはその後の回復期間を避けられることは、治療を快適に進めるうえでも利点といえます。また、難しい抜歯が必要な場合には、ほかの医療機関への紹介手続きが発生する可能性もあり、非抜歯であればそういった手間も省けるため、患者さんの負担が軽くなります。

        • 噛み合わせや見た目のバランスを保てる

      非抜歯矯正では、上下の歯の調和を損なわずに治療を進められる可能性が高くなります。通常、抜歯が行われる場合は第一小臼歯や第二小臼歯が対象となりますが、これらの歯は噛み合わせを支える役割を担っています。 また、抜歯を伴う矯正治療では、歯を抜くことにより移動させる歯の距離が大きくなるため、過度に口元が引っ込むことがありますが、非抜歯矯正では歯の移動距離は限られており、口元の下がる度合いとしては約2mm程度にとどまるといわれています。

      このように、非抜歯矯正で歯を残すことは、噛み合わせを支える問題や口元の自然な美しさやバランスを保つなど、機能性と審美性の両面に影響します。

        • 治療期間の短縮

      非抜歯矯正では、抜歯が不要であるため、治療を進めるプロセスがスムーズになります。抜歯後の回復を待つ必要がないため、治療全体の期間を短縮できるケースもあります。

      デメリット

      非抜歯のデメリットには、以下のようなことがあげられます。

        • 治療の制限性

      小児期に非抜歯での矯正治療を行う場合、限られたスペース内で歯を動かす必要があります。これは、重度の歯並びの問題がある場合、理想的な結果をえるのが難しくなることがあります。

        • 処置の複雑化

      非抜歯矯正では、抜歯を避けるためにほかの技術的な処置が必要になることが多くあります。これには、IPR(間歯削り)や顎の拡張などが含まれ、これらの処置が子どもにとって負担となる場合があります。

        • 矯正期間の延長

      非抜歯矯正において、狭いスペースでの細かな調整が必要となる場合は、抜歯を伴う矯正治療よりも長期間にわたるケースもあります。そのため、治療期間の長さが子どもや保護者にとって負担やストレスとなることがあります。

        • 再矯正治療のリスク

      非抜歯によるお口のなかのスペースの制約により、一度矯正治療を終えた後も、歯が元の位置に戻ってしまうリスクがあります。これは、非抜歯矯正の場合、十分なスペースが確保できないために起こりえる問題です。

        • 歯と歯肉の健康への影響

      歯を密集させることで歯肉に負担がかかり、歯肉退縮を引き起こす可能性があります。歯肉退縮は、歯茎(歯肉)が後退し、歯根に覆われている部分が露出する状態を指します。この症状により、歯が長く見えたり、敏感になることがあります。見た目の問題だけでなく、露出した歯根部分がむし歯や感染のリスクを高めるため、将来的な歯の健康にも影響を及ぼす可能性があります。

      これらの点を考慮し、小児矯正では非抜歯と抜歯のどちらが適切か、歯科医師としっかり相談することが大切です。

      小児矯正で抜歯後に起きやすい症状

      小児矯正で抜歯後に起きやすい症状

      小児歯科で抜歯後に起きやすい症状には、どのようなものがあるのでしょうか?

      抜歯した箇所の痛み

      小児歯科での抜歯後、特に感じられるのが抜歯箇所の痛みです。抜歯後は歯が存在していた部分のソケットが暴露され、炎症が生じやすくなります。このため、抜歯した日から1週間程度は痛みを感じることが多いですが、これは個人の体質や痛みに対する感受性によって差があります。
      小児の場合、成人に比べて回復が早いこともありますが、痛みの感じ方には個人差が大きいため一概にいえません。抜歯直後は麻酔が効いている間は痛みを感じにくいですが、麻酔が切れた後には痛みが出ることがあり、その際には医師の指示に従い適切な痛み止めを使用することが推奨されます。
      抜歯による痛みは日に日に軽減していく傾向にありますが、異常な痛みや腫れが見られる場合にはトラブルが起きている可能性もあるため、治療を行っている歯科医院へ相談することをおすすめします。

      頭痛

      小児の抜歯後には、時として頭痛が生じることがあります。この頭痛は、抜歯部位の炎症や、歯を支配する顔面の大きな神経が刺激されることによって引き起こされます。
      抜歯直後から数日間はこのような症状が現れやすく、歯周辺の神経が敏感な子どもたちには顕著に感じられる場合があります。

      頭痛に対する治療としては、医師から処方される抗生剤や消炎鎮痛剤を適切に服用し、十分な休息を取るようにしましょう。また、頭痛が継続する場合や異常に激しい場合は、潜在的な合併症を除外するために速やかに歯科医師の診断を受けることが重要です。早期に適切な対処を行うことで、症状の悪化を防ぐことが大切です。

      咀嚼力が落ちる

      小児矯正において歯を抜く治療を行った後、咀嚼力の低下が見られます。これは、抜歯によって噛む機能を担っていた歯がなくなるため、自然と噛む力が弱まるからです。さらに、抜歯部位の痛みが原因で、食事時の不快感が増し、それが子どもたちの食事行動に直接影響します。

      このような状況は、消化器官への負担増加にもつながるため、抜歯後は子どもが無理なく食事できるよう、やわらかい食べ物を中心にした食事を提供することが推奨されます。また、保護者がお口のなかの状態に留意し、日々のケアを怠らないことで、痛みによる影響を抑え、子どものストレスを軽減させることが重要です。

      顎関節症

      小児矯正での抜歯が原因で顎関節症が生じることがあります。顎関節症は、顎の関節部に痛みが発生したり、お口を動かす際に不快な音がする状態を指します。抜歯によって生じるお口のなかの不快感や痛みが原因で、子どもが無意識にお口を開けた姿勢を保持することが多くなります。これが顎の筋肉のバランスを崩し、顎関節に過剰な負担がかかることで、顎関節症を引き起こす可能性があります。

      顎関節症が発生すると、子どもは正常に噛むことが難しくなり、食事の際に大きな不便を感じることになるでしょう。この状態は、日常生活にストレスを与え、治療の進行にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、抜歯後は子どもがお口を無理なく閉じられるように注意し、定期的に歯科医師によるチェックを受けることが重要です。

      小児矯正で抜歯をしない治療法

      小児矯正で抜歯をしない治療法

      小児矯正において抜歯をしない治療方法は主に以下の2つが挙げられます。それぞれの特徴を、以下に解説します。

      マウスピース型矯正

      マウスピース型矯正は、透明の装置を用いて歯並びを整える歯列矯正の一つです。
      この矯正治療のメリットは、目立ちにくい外見と、患者さん自身で自由に取り外せること、金属製の矯正器具よりも違和感が少ない点にあります。

      しかし、マウスピース型矯正の成功は装着時間に依存しており、定められた時間マウスピースを装着しなければならないため、子どもが管理を怠ると治療期間が延長するリスクがあります。さらに、口腔ケアが不十分だと、むし歯や歯周病のリスクが高まるため、自己管理がしっかりとできる高学年の子どもたちにおすすめの治療法と考えられます。

      マウスピース型矯正は、日々のお口のケアと装着時間の管理が、治療の成功を左右する重要な要素です。

      床矯正

      床矯正は、小児矯正のなかでも、若い年齢層に選択される非抜歯の矯正手法です。
      この方法では、”床(しょう)”と呼ばれる装置を使って顎の骨を広げ、自然に歯が並ぶスペースを確保します。この治療は、前歯4本が永久歯として生え揃った初期の段階で行われる治療法のため、多くの永久歯が生えてしまっている場合には適用できないことがあります。

      床矯正を始めるタイミングは、子どもの顎の成長が活発で骨がまだやわらかい時期です。そのため、検討されている場合は早めに専門の歯科医師に相談することが重要です。治療中は装置による違和感や発音の変化が生じることがありますが、これらは一時的なものです。適切な時期に始めることが大切です。

      小児矯正の抜歯で後悔しないためには

      小児矯正の抜歯で後悔しないためには

      ここまで、抜歯を伴う小児矯正について述べてきました。
      最後に、小児矯正の抜歯で後悔しないためのポイントを2つ解説します。

      信頼できる歯科医院を選ぶ

      小児矯正における抜歯を検討している際に重要なのは、信頼できる歯科医院の選定です。
      矯正治療には専門的な知識と経験が必要なため、一般的な歯科診療とは異なります。

      まず、小児の矯正治療経験が豊富なクリニックを選ぶことが基本です。院内の治療経験が多いことや在籍する歯科医師の経歴は、その医院が多くの症例を扱ってきた証拠です。次に、インターネット上での評判をチェックし、否定的なレビューの内容も含めて検討します。さらに、治療前のカウンセリング時には、疑問や不安な点があれば、納得できるまで質問を重ねることが大切です。

      きちんと検査を受ける

      小児矯正で抜歯を考える際には、事前の検査がとても大切です。歯列矯正は複雑な治療なので、事前に行う検査が不十分だと、治療の成果が期待どおりにならないことがあります。

      歯科医院で検査を受ける前に、どのような検査を行うのか、その検査がどのように治療計画に影響を与えるのかをしっかりと説明してもらうことが重要です。説明が不十分で内容が理解できなければ、さらに質問をするか、ほかのクリニックの意見も聞いてみるとよいでしょう。

      検査の結果に基づいて明確な治療計画が提案され、きちんと説明される歯科医院を選ぶことが大切です。

      まとめ

      まとめ

      ここまで小児矯正の抜歯についてお伝えしてきました。小児矯正の抜歯の要点をまとめると以下のとおりです。

      • 小児矯正で抜歯が必要になるケースは、歯を移動させる十分なスペースがない、顎の成長が終わっている、矯正治療の負担になる乳歯があるなどの場合が挙げられる
      • 非抜歯矯正のメリットは、健康な歯を維持できる、抜歯に伴うさまざまな負担が軽減される、噛み合わせや見た目のバランスを保てる、治療期間の短縮などで、デメリットは、治療の制限性、処置の複雑化、矯正期間の延長、再矯正治療のリスク、歯と歯肉の健康への影響などがある
      • 小児矯正で抜歯後に起きやすい症状は、抜歯した箇所の痛み、頭痛、咀嚼力が落ちる、顎関節症など

      小児矯正で抜歯がなぜ検討されるのか、その理由やメリット、デメリットについて理解を深め、リラックスして矯正治療に取り組めるよう、これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。

      最後までお読みいただき、ありがとうございました。

      この記事の監修歯科医師
      木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

      木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

      北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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