ワイヤー矯正

リテーナーが痛い原因は?具体的な対処法と使用時の注意点

リテーナーが痛い原因は?具体的な対処法と使用時の注意点

歯列矯正では、歯を動かす治療のため、痛みを感じる方は少なくありません。特にワイヤー矯正の場合は、ワイヤーの先端が歯茎や舌を傷めたり、装置の一部が頬粘膜を傷つけたりして痛みを感じます。このような症状は、歯列矯正した後の保定処置でも生じることがあります。保定で使うリテーナーで痛みに悩まされている方もいるかと思います。そこでこのコラムでは、リテーナーが痛い原因と対処法、使用する際の注意点などを解説します。リテーナーによる痛みを防ぎたい、正しい方法で使いたいという方は参考にしてみてください。

リテーナーについて

リテーナーについて はじめに、リテーナーの基本事項を確認しておきましょう。

リテーナーとは

リテーナーとは、動的治療後の歯の後戻りを防止するために使用する装置です。保定装置(ほていそうち)とも呼ばれるもので、歯列矯正ではほぼすべてのケースで装着が必要となります。リテーナーにはいくつかの種類があり、装着の仕方や設計に違いがあるものの、今ある歯並びや噛み合わせを固定するという目的は共通しています。

リテーナーの種類

リテーナーの種類は3つに分けられます。
マウスピースタイプ・プレートタイプ・フィックスタイプの3つです。

◎マウスピースタイプ
マウスピースの形をしたリテーナーです。インビザラインに代表されるマウスピース型矯正のアライナーとほぼ同じ見た目をしています。アライナーよりは厚みがあり、強度も高く、壊れにくいです。これはアライナーよりもリテーナーの方が長期に渡って使用するからです。装置が目立ちにくく、食事や歯磨きのときは取り外せる点においてアライナーと同じです。マウスピースタイプのリテーナーは、歯列全体を覆う形となるため、保定の力を均等に分散できる利点もあります。

◎プレートタイプ
標準的なリテーナーで、プラスチック製のプレートと金属もしくはファイバー製のワイヤーからなります。着脱式の装置であり、マウスピースタイプと同様、食事や歯磨きの際に取り外すことができます。ワイヤー部分が金属の装置は、見立ちやすいというデメリットを伴います。プレートタイプには、ベッグタイプリテーナーやホーレータイプリテーナー、スプリングタイプリテーナーなど、複数の種類があり、患者さんの口腔内の状況によって適切なものを選択することになります。

◎フィックスタイプ
金属製のワイヤーをレジンで固定するタイプのリテーナーです。主に前歯部の裏側のリテーナーとして適しています。固定式である特徴を活かし後戻りをしっかりと防止できます。見た目に影響が現れることはありませんが、汚れがたまりやすかったり舌触りが悪くなったりするなどのデメリットを伴います。

歯列矯正にリテーナーが必要な理由

歯列矯正における動的治療では、まだ歯並びが一時的にきれいに並んだ状態が作られるだけで、それが半永久的に続くわけではありません。歯周靭帯(ししゅうじんたい)という弾力のある軟組織で歯槽骨につながれているため、人為的に動かしてもしばらくはもとに戻る力が働きます。動的治療が完了した直後は、まだ歯槽骨の状態も安定していないことから、元の位置に戻ろうとする力が強くなります。

リテーナーを装着することで、歯を動かすのではなく、もとに戻る力を抑えることができます。リテーナーというのは本来、動的治療のような強い痛みを感じることは少ないです。もし、日常生活に支障をきたすような強い痛みが生じた場合は、何らかの異常やトラブルが疑われます。

リテーナーが痛い主な原因

リテーナーが痛い主な原因 保定期間中のリテーナーの装着で痛いと感じる主な原因は以下の4つです。

正しく装着できていない

リテーナーは、やや複雑な設計となっているものが少なくなく、装着にはコツがいるものも少なくありません。患者さんの歯並びだけに合うように作られているため、歯科医師から教わった正しい方法で装着しなければ、歯や歯茎を傷めることがあります。

不適切な状態で装着しているリテーナーは、本来の保定力を発揮できないことから、痛みが生じる原因になりやすいです。マウスピース型矯正装置と同様です。

歯が後戻りしている

何らかの理由で歯の後戻りが起こっている場合は、リテーナーを装着することで痛みが生じやすいです。リテーナーは動的治療が完了した直後の歯並びにぴったりと適合するよう作られているからです。後戻りによって歯並びが変わってしまった状態は、リテーナーが装着しにくくなりますし、装着のキツさや痛みといった不快感に悩まされます。

リテーナーが変形したり破損したりしている

リテーナーは、金属製のワイヤーや歯科用プラスチックであるレジン、透明なファイバーなどで構成されているため、適切に取り扱わないと変形や破損が生じます。変形や破損したリテーナーをそのまま使っていると、歯列に適切な保定力が発揮されず、場合によっては痛みが出ます。リテーナーは特殊な装置なので、ちょっとした破折や変色程度なら、そのまま使い続けることも可能ですが、痛みが出ている場合は調整や作り直しが必要となります。

口腔内に炎症や傷がある

何らかの理由で口腔内に炎症や傷がある場合は、リテーナーを装着することで痛みを感じることがあります。リテーナーそのものに問題があるわけではなく、口腔粘膜に異常があることから原因を突き止めたうえで、適切に対処する必要があります。口腔内の炎症や傷がリテーナーに由来するものかどうかは、一般の方が判断することは難しいため、歯科医師に相談した方がよいでしょう。

リテーナーが痛いときの対処法

リテーナーが痛いときの対処法 次に、リテーナーが痛いときはどのように対処すべきなのかを解説します。

正しい着脱方法で装着する

リテーナーのつけ方や外し方に問題があって痛みが生じている場合は、正しい着脱方法を歯科医師から教えてもらいましょう。正しい着脱方法を毎日行わない限り、リテーナーによる痛みはなくなりません。不適切な方法で着脱を繰り返していると、リテーナーに大きな負担がかかって、装置の変形や破損を招いてしまいます。

リテーナーが破損していないか確認

リテーナーが痛いと感じたときは、リテーナーの状態確認も必要です。プレート部分が欠けたり、ヒビが入ったりしていないかをチェックしてください。場合によっては金属製のワイヤーが曲がることもあります。自分で確認してもよくわからない場合は、歯科医師にチェックしてもらってもよいでしょう。

リテーナーが破損している場合は、歯科医院で修理してもらう必要があります。歯列に装着できないような変形が起こっていたりする場合は、リテーナーを作り直さなければなりません。

リテーナーを調整してもらう

リテーナーが歯列に合っていない場合は、歯科医院で調整してもらってください。リテーナーの辺縁が口腔粘膜にあたって痛い場合は、接触部分を研磨したり削ったりすることで調整できます。金属製のワイヤーが歯や歯茎を刺激している場合も適切に曲げることで症状の改善が期待できます。

歯科医院で定期的にメンテナンス

動的治療が終わった後でも、歯科医院で定期的にメンテナンスを受けていれば、リテーナーの異常を早期に発見できます。長い年月をかけて手に入れた歯並びを失わないためにも、保定を適切に行い、動的治療後のメンテナンスも継続的に受けていきましょう。

リテーナー使用時の注意点

リテーナー使用時の注意点 続いては、リテーナーを使用する際の注意点を3つ紹介します。これらを実践することで、リテーナーによる痛みを予防しやすくなります。

飲食をするときは外す

リテーナーの装着様式は、固定式と着脱式の2つに大きく分けられます。固定式のリテーナーは、マルチブラケット装置と同様につけたまま飲食ができますが、着脱式のリテーナーは水以外の飲食のときには外す必要があります。マウスピースタイプのリテーナーだけでなく、プレートタイプのリテーナーにも共通している点です。 マウスピースタイプのリテーナーは、装着したままでは食べ物を噛めないため、食事の際に取り外す理由もイメージしやすいです。しかし、プレートタイプでは咀嚼ができることから、装着したまま飲食してしまう方も少なからずいます。

飲料に含まれる砂糖が装置の周りにたまったり、色素が歯や装置の着色を促したりするため、原則は取り外すことが推奨されます。ワイヤーの変形やプレートの破折を招くことがある点にも注意が必要です。

専用ケースを携帯する

着脱したリテーナーは、ポケットやカバンに入れたり、テーブルやソファに置いていたりすると、リテーナーの破損や紛失のリスクが高まりますので、外出する際には必ず専用の保管ケースを携帯するようにしましょう。リテーナーは、口腔から取り外したら保管ケースに入れることを習慣化させることで、破損や紛失トラブルを未然に防げるようになります。

毎日洗浄する

リテーナーは、プラスチックや金属で作られている装置なので、汚れが付着しやすいです。きれいに見えても表面にたくさんの細菌や真菌が繁殖していることから、毎日洗浄する必要があります。

特にマウスピースタイプのリテーナーは、歯列全体を覆うため、衛生管理は徹底しなければなりません。リテーナーは表面に傷がつきやすいので、やわらかめの歯ブラシでやさしく磨くとよいでしょう。週に数回は、専用の洗浄剤を使った化学的洗浄も行うようにしてください。

リテーナーについてよくある疑問

リテーナーについてよくある疑問 リテーナーの取り扱いに関するよくある疑問に答えます。

矯正治療後のリテーナーの装着期間

矯正治療後の保定処置では、リテーナーを動的治療と同じくらいの期間、装着する必要があります。マルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置などを2年間装着して動的治療を終えた場合は、リテーナーも2年程度は装着することになります。少なくとも同じくらいの期間として設定しているので、それ以降でもリテーナーの装着を続けることで、後戻りのリスクを抑えることができます。

リテーナーの装着時間

リテーナーは、1日20時間以上装着する必要があります。食事と歯磨き以外の時間は、基本的にリテーナーを装着することになります。保定から1~2年が経過して、歯並びが安定したら夜間のみの装着へと切り替えることも可能です。リテーナーの装着時間については、歯科医師と相談しながら調整していくことが大切です。

リテーナーのお手入れ方法

リテーナーのお手入れ方法は、固定式と着脱式とで異なります。

フィックスタイプリテーナーについては、マルチブラケット装置と変わりません。装置が歯列に固定されているため、普段使っている歯ブラシで磨くことになります。フィックスタイプリテーナーは、歯面にしっかりと接着されてはいるものの、硬い歯ブラシで毎日ゴシゴシと磨くと傷がついたり、破損したりする恐れがあるため、優しく丁寧に磨きましょう。

マウスピースタイプリテーナーとプレートタイプリテーナーも基本的にはやわらかめの歯ブラシで優しく磨いてください。歯磨き粉を使う必要はありません。また、熱湯で煮沸消毒すると、プラスチックやファイバーの部分が変形することから、洗浄は常温の水道水かぬるま湯で行うようにしましょう。

機械的な清掃で取り除けない汚れは、専用の洗浄剤を使った化学的洗浄で除去する必要があります。少なくとも週に1〜2回は洗浄剤でリテーナー表面に付着したバイオフィルムや歯垢などを一掃するようにしましょう。

まとめ

今回は、リテーナーが痛い場合の原因や具体的な対処法、リテーナーを使用する際の注意点について解説しました。動的治療後に使うリテーナーは、歯の後戻りを防ぐうえで必須となる装置です。リテーナーに変形や破損があると、痛みが生じることがあるため注意が必要です。リテーナーの装着時間を守らないと、歯の後戻りが生じてリテーナーが合わなくなり、装着するたびに痛みが起こることもあるため、保定のルールは厳守するようにしてください。その他、リテーナーに関する疑問や不安がある場合は、歯科医院に問い合わせることをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
竹本 竜太朗医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

竹本 竜太朗医師(北海道大学病院歯科診療センター(歯科矯正科) 大学院生)

北海道大学歯学部 卒業 / 現在は北海道大学病院歯科診療センター勤務 / 専門は歯科矯正科

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