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MFT(口腔筋機能療法)とは?メリット・デメリットを併せて解説

MFT(口腔筋機能療法)とは?メリット・デメリットを併せて解説

MFT(口腔筋機能療法)を耳にしたことはありますか?MFTを行うことは、歯並びだけでなく発音や呼吸の改善にもつながります。

本記事ではMFT(口腔筋機能療法)について、以下の点を中心にご紹介します。

  • MFTの効果、トレーニング法
  • MFTのメリット・デメリット
  • MFTの治療期間、費用

MFTについて理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

MFT(口腔筋機能療法)とは

MFT(口腔筋機能療法)とは

MFTはどのようなトレーニングですか?
MFT(Myofunctional Therapy/口腔筋機能療法)とは、口周りや舌の筋肉を正しく機能させるためのトレーニングです。歯並びや噛み合わせに影響を与える舌の癖や口呼吸、頬杖、指しゃぶりなどの悪習慣を改善することを目的としています。特に、子どもの成長期にMFTを行うことで、顎の正常な発育を促し、歯並びが悪くなるリスクを軽減させます。また、大人の場合でも歯列矯正治療と併用することで、治療後の後戻りを防ぎ、歯並びを安定させる効果が期待できます。

MFTのトレーニングには、舌を正しい位置に保つポッピングや、ガムを使って舌の筋力を鍛える方法などがあります。これらのトレーニングを継続することで、正しい舌の使い方を習得し、歯並びや発音、呼吸の改善につながります。MFTは歯科医師の指導のもとで行うことが推奨されますが、自宅でも簡単に取り組めるため、継続的に実践することが大切です。

MFTではどのような効果が期待できますか?
MFT(口腔筋機能療法)は、口周りや舌の筋肉を鍛えることで、以下のようなさまざまな健康効果が期待できるトレーニングです。① 歯列矯正の効果を高める
舌の位置が正しくなると、歯にかかる力のバランスが整い、歯列矯正の成功率が上がります。
歯列矯正の後戻り防止にもつながるため、MFTとの併用で治療の効果を長持ちさせられます。

② 口呼吸から鼻呼吸へ
MFTを行うことで、自然に口を閉じる習慣がつき、鼻呼吸へと移行しやすくなります。
鼻呼吸には、免疫力向上・むし歯や歯周病の予防・睡眠の質向上などのメリットがあります。

③ 発音の改善
舌や唇の筋肉が正しく動くことで、発音がクリアになり、サ行やタ行の発音がしやすくなる 効果も期待できます。

④ 姿勢や健康への影響
口周りの筋肉が正常に機能すると、顎や首、肩の負担が軽減され、姿勢が改善される可能性があります。その結果、肩こりや頭痛の軽減につながることがあります。

MFTは、歯並びだけでなく、呼吸や発音、全身の健康にも影響を与えるトレーニングです。
日常的に取り入れ、健康的な口腔環境を維持しましょう。

MFTの具体的なトレーニング内容を教えてください
MFT(口腔筋機能療法)は、 舌や唇、頬などの筋肉を鍛えて、正しい口腔機能を身につけるトレーニング です。歯並びや噛み合わせの改善、口呼吸の防止に役立ちます。具体的には、以下のようなトレーニングがあります。

① スポットトレーニング(舌の正しい位置を覚える)

  • 割り箸やアイスの棒を 舌の正しい位置(スポット) に5秒間当てる
  • 舌の先をスポットにつけたまま5秒キープ
  • 5〜10回繰り返す

② ホッピングトレーニング(舌を持ち上げる筋力強化)

  • 舌を上顎に吸い付け、ポンッと音を鳴らす
  • 10〜15回繰り返す

③ ボタントレーニング(唇の筋肉強化)

  • 紐を通したボタンを唇と歯の間に挟み、唇の力で押さえながら紐を引っ張る
  • 30秒×3回行う

④ サッキングトレーニング(正しい飲み込み方を学ぶ)

  • 舌をスポットにつけ、奥歯を噛み合わせながら舌の横で上顎を弾く
  • 10回繰り返す

これらのトレーニングは 歯科医師や歯科衛生士の指導のもと 行うのが理想ですが、家庭でも実践できます。遊び感覚で楽しく続けることが大切です。

MFTが必要となるケースを教えてください
MFTは以下のようなケースで効果が期待できます。① 舌突出癖・異常嚥下癖がある場合
舌を前に突き出す癖があると、前歯が前に押し出され、噛み合わせが悪くなることがあります。
特に、前歯でものを噛み切れない・歯列矯正後の歯並びが不安定になるなどの問題が生じやすいため、舌の正しい使い方の習得が重要です。

② 指しゃぶりや口呼吸の習慣がある場合
4歳を過ぎても指しゃぶりを続けると、上顎が狭くなり、出っ歯や開咬の原因になることがあります。また、口呼吸は上顎の発育不良や歯並びの乱れを引き起こし、口腔内が乾燥してむし歯や歯周病のリスク を高めます。
MFTを通じて、これらの悪習癖を改善します。

③ 舌小帯の異常がある場合
舌小帯(舌の裏にある筋)が短いと、舌を正しく動かせず前歯を押し出す癖がつく場合があります。MFTによって舌の動きを改善し、歯並びへの悪影響を防ぎます。

④ 歯列矯正治療や外科的歯列矯正治療を受ける場合
歯列矯正治療や外科顎矯正手術後に舌の使い方が正しくないと、治療の効果が長続きしないことがあります。MFTを併用することで、新しい噛み合わせに適応しやすくなり、歯列の安定が期待できます。

MFTは歯並びや噛み合わせを長期的に維持するために必要なトレーニングです。

MFT(口腔筋機能療法)のメリット・デメリット

MFT(口腔筋機能療法)のメリット・デメリット

MFTを行うことのメリットとして何が挙げられますか?
MFT(口腔筋機能療法)は、舌や口周りの筋肉を鍛えることで歯並びや噛み合わせ、呼吸機能の改善を目指すトレーニングです。具体的には以下のようなメリットがあります。① 歯列矯正治療の効果を高め、後戻りを防ぐ
MFTを行うことで、 舌の癖や筋肉のアンバランスを改善し、歯列矯正治療の効果を維持しやすくなります。
また、歯並びが乱れる原因となる舌突出癖や口呼吸を防ぐことで、歯列矯正後の後戻りを防止します。

② 口呼吸を改善し、健康をサポート
舌や唇の筋肉を正しく使うことで、 口呼吸から鼻呼吸へ移行しやすくなります。
鼻呼吸が習慣化すると、 むし歯や口臭のリスクが減少し、睡眠の質が向上するなど、全身の健康にもよい影響を与えます。

③ 発音や飲み込みがスムーズになる
舌の正しい動きを習得することで、発音が明瞭になり、食べ物をしっかり噛んで飲み込む力 も向上します。特にサ行やタ行が苦手な方に効果的が期待できます。

④ 自宅で手軽に取り組める
MFTは特別な器具や薬を必要とせず、自宅でも簡単に続けられるため、自己管理がしやすいのが特徴です。

⑤ 姿勢や表情の改善にもつながる
お口の筋肉が正しく機能すると顎や首、肩のバランスが整い、姿勢が改善されます。また、表情筋が鍛えられるため、自然な笑顔を作りやすくなり、好印象にもつながります。

MFTは歯並びだけでなく、全身の健康や美容にもよい影響を与えるため、子どもから大人まで幅広く推奨されています。

MFTを行わないとどのようなデメリットがありますか?
MFT(口腔筋機能療法)は、舌や口周りの筋肉を鍛えることで歯並びや噛み合わせを改善するトレーニングですが、いくつかの注意点もあります。① 効果が出るまで時間がかかる
MFTは即効性のある治療ではなく、継続的なトレーニングが必要です。数週間で劇的な変化が現れるわけではなく、数ヶ月から数年かけて改善を目指します。

② 専門的な指導が必要
正しくトレーニングを行わないと、十分な効果が得られないため、歯科医師や歯科衛生士の指導が欠かせません。定期的な通院と指導のもとで進める必要があります。

③ 自己管理が難しい
MFTは自宅でのトレーニングが重要ですが、継続できないと効果が薄れてしまいます。
特に子どもはモチベーションを維持するのが難しいため、保護者のサポートが求められます。

④歯列矯正治療の代わりにはならない
MFTは歯並びを直接矯正する治療ではなく、歯列矯正を補助するものです。重度の歯列不正の場合は、歯列矯正治療と併用する必要があります。

⑤ 費用がかかる
歯科医院でのMFTは保険適用外の場合が多く、自己負担となるケースが多い傾向にあるため、長期的な費用負担を考慮する必要があります。

MFTは継続が重要なトレーニングですが、正しく行えば歯並びの安定や健康維持に役立つ ため、歯科医師と相談しながら取り組みましょう。

MFT(口腔筋機能療法)の治療費用・期間

MFT(口腔筋機能療法)の治療費用・期間

MFTの費用相場を教えてください
MFT(口腔筋機能療法)の費用は、自由診療であるため歯科医院によって異なります。相場は1回あたり3,000円〜1万円程です。【MFTの費用内訳】
  • 初診料:約5,000円~1万円(口腔内の診察と治療計画の作成)
  • トレーニング指導料:1回あたり約3,000円~1万円
  • 総額の目安:数ヶ月~1年継続する場合、3万~10万円 程度

MFTは数ヶ月〜1年以上の継続が必要なため、トレーニング回数が増えると総額も変動します。
歯列矯正治療と並行する場合は、歯列矯正費用に含まれるケースもあるため、事前に確認するとよいでしょう。

MFTの治療期間はどのくらいですか?
MFT(口腔筋機能療法)の治療期間は、 患者さんの症状や目標によって異なります。
治療期間の目安は半年〜1年程度とされていますが、歯列矯正治療と併用する場合や習慣の改善が必要なケースでは2年以上かかることもあります。
  • 短期(約3〜6ヶ月):軽度の舌癖や口呼吸の改善が目的の場合、数ヶ月のトレーニングで効果が期待できることがあります。
  • 中期(約6ヶ月〜1年):発音や飲み込みの問題、歯並びの維持を目的とする場合、半年以上の継続が必要です。
  • 長期(約1年以上):歯列矯正治療と併用する場合や、根本的な口腔習慣の改善を目指すケースでは1年以上かかることが多いといわれています。

月1〜2回の通院と毎日の自宅トレーニング(10〜20分程度)を継続して行うとされています。MFTは 即効性のある治療ではなく、継続が重要なので、歯科医師の指導を受けながら取り組むことが大切です。

MFTは 歯列矯正治療の代わりにはならないため、歯並びが気になる場合は歯列矯正治療と併用することが推奨されます。

MFTを保険適用で行うことはできますか?
MFT(口腔筋機能療法)は、 基本的には自由診療となり、ほとんどのケースで保険適用外です。
しかし、口腔機能発達不全症と診断された場合には、保険適用となることがあります。【保険適用となるケース】
  • 口腔機能発達不全症の診断を受けた場合
  • 睡眠時無呼吸症候群の治療の一環として行われる場合(医師の診断書が必要)

それ以外の歯列矯正の補助や舌の癖の改善目的では、保険適用されず、全額自己負担になります。

MFTは長期間の継続が必要なため、 歯科医院によって費用が異なります。複数の医院で見積もりを取り、保険適用の可能性があるか相談するとよいでしょう。

MFTを検討している場合は、まず専門の歯科医師に相談し、保険適用の条件を確認することをおすすめします。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまでMFT(口腔筋機能療法)についてお伝えしてきました。
MFTについて、要点をまとめると以下の通りになります。

  • MFTの目的は舌や口周りの筋肉を鍛え、正しい舌の位置やお口の使い方を習得することで、歯並び・噛み合わせの改善、口呼吸の改善、発音や嚥下の向上を目指す
  • MFTの治療期間は約半年〜1年以上で、費用は約3,000円〜1万円。歯列矯正治療と併用する場合は、約3万円~10万円になることもある
  • MFTは基本的に自由診療だが、”口腔機能発達不全症”と診断された場合など一部のケースは保険適用の可能性があるため、事前に歯科医院で確認が必要

MFTを積極的に行って、歯や口腔の健康を維持していきましょう。
本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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