子どもの歯並びが気になる。
むし歯の治療で歯科医院を受診したら小児矯正を勧められた。
小児矯正というと聞きなれないかもしれませんが、子どもの歯並びが気になっているという親御さんは多いのではないでしょうか。
この記事では、小児矯正とは一体どのような矯正なのかをメリット・デメリット・治療期間・費用相場も併せて解説をしています。 子どもの歯並びが気になっている親御さんはぜひご一読ください。
小児矯正とは?
小児矯正とは、文字通り子どもの矯正治療のことを指しています。
大人の矯正治療は歯並びを整えて噛み合わせを改善し、さらに見た目を美しく整えることを目的としています。
それに対し子どもの矯正治療は、これから生えてくる永久歯の歯並びを整えることが治療の主な目的となっているのです。
子どもは顎の骨も成長している途中です。小児矯正では顎の成長を正しい方向に導きながら、永久歯が適切に生えてくるように整えていく治療が行われます。
顎の成長をコントロールできるのは、成長期に行われる小児矯正だけとなっており、大人になってから顎の異常を治そうとすると外科手術が必要となってしまいます。
そこで小児のうちから顎の成長を適切にコントロールしておくことが、将来の外科手術の回避につながるのです。
小児矯正はまだ乳歯が生えている段階で行う第一期治療と、永久歯が生え揃ってから行う第二期治療の二段階に分類されています。
第一期治療
第一期治療とは、乳歯のみの状態もしくは乳歯と永久歯が混在している時期に行う矯正治療のことです。
対象年齢はおよそ5歳~小学校低学年くらいまでで、歯の生えそろうスピードにより個人差があります。 第一期治療では歯並びを細かく整える治療は行われず、主に骨格の矯正が行われます。
この時期は特に上下の顎が著しく成長する時期でもあるので、永久歯が生えてくる場所が足りなくなったり、噛み合わせが逆になっていたりすることが多いのが特徴です。
そのような状態を改善し、永久歯が生えてくるスペースをしっかりと確保することが治療の主な目的になるのです。
第一期治療は、この後行われる第二期治療の準備作業ともいえるでしょう。
ただし、歯並びの異常が軽度だったり永久歯が自然と綺麗に生えるような土台ができていたりした場合は、第一期治療のみで終了できるケースもあります。
第二期治療
永久歯が生えそろうと第二期治療となり、およそ小学校高学年以上の子どもが対象となります。
この段階では顎の成長も完成に近づいている時期となり、治療の目的が歯並びの改善に切り替わるのです。
一般的に上顎の成長は10歳頃まで、下顎の成長のピークは身長の伸びのピークの1年後といわれています。
完成に近づいたとはいえ第二期治療時にも顎は成長していますので、成長に合わせた矯正装置を使用して歯並びを整えていく治療を行うのです。
小児矯正のメリット
顎の成長が完了する前に始める小児矯正には、大人の矯正では得られないメリットを得ることが可能です。
また、早期に治療を開始すれば、大人になってからの治療で抜歯の可能性を回避できる可能性が高まります。
痛みや後戻りも少ないといわれている小児矯正ですが、主なメリットをご紹介します。
永久歯の歯並びが良くなる
大人になってからの矯正治療では、成長した顎の大きさを変えられません。
そのため既に完成した顎の中で歯並びを整える作業となり、抜歯の必要が出てくるなどのリスクを抱えてしまいます。
顎の骨の成長をコントロールできるのは、成長期のごく限られた期間のみです。
小児矯正では顎の骨を適切に成長させることで永久歯が生えそろう空間を確保し、綺麗な歯並びの実現が可能になります。
また第一期治療では乳歯が抜けるタイミングをコントロールします。これにより永久歯が適切な位置に生えてくるように導き、歯並びや噛み合わせの悪化を防ぐのです。
顎の骨がバランス良く成長する
小児矯正の最大のメリットとして、顎の骨の正常な発育を促すことが挙げられます。
上下の顎の骨をバランスよく成長させ、骨格が原因となっている歯並びの異常を改善するのです。
さらに、成長期には下顎が急激に成長することがあります。成長具合によっては大人になってからの矯正治療だけでは改善が難しく、顎の外科手術が必要となるケースが出てきます。
小児矯正の段階で顎の成長を適切にコントロールしておけば、成人後の外科手術を回避できる可能性があるのです。
顎の骨がバランスよく成長すると歯並びの改善だけでなく、歯ぎしり・口呼吸・食いしばり・睡眠時無呼吸症候群・発音・頭痛・肩こりなどの改善も期待できます。
コンプレックスを解消できる
悪い噛み合わせを放置してしまい顎の成長に偏りが出てくると、顔のバランスも崩れてきてしまう可能性があります。
小児矯正で噛み合わせを改善すれば顎がバランスよく成長し、顔のバランスも整いコンプレックスの解消にもつながるでしょう。
受け口・出っ歯・八重歯などがコンプレックスとなっている場合にも小児矯正での解消が期待できます。
口元のコンプレックスを改善することにより、子どもが自分に自信を持てるようになった結果笑顔が増えて、性格まで明るくなったというケースも見られます。
また歯並びの改善は、噛む・話す・飲み込むなど様々な口腔機能の改善につながります。 特に発音機能の改善は、喋り方にコンプレックスを抱いている子どもにとっては嬉しい効果だといえるでしょう。
小児矯正のデメリット
多くのメリットがある小児矯正ですが、残念ながらデメリットも存在します。
小児矯正を成功させるためにはデメリットをきちんと理解して、対処することが大切です。
治療期間が長引く場合がある
矯正治療は治療期間が長いことが一般的に知られています。
特に小児矯正の場合は、永久歯の歯並びを整えることが最終目標となっています。そのため第一期治療から始めた子どもは、治療期間が数年に渡る可能性が出てくるのです。
また矯正治療を始めたばかりの小さな子どもの中には、矯正装置を装着することに抵抗を示す子どももいらっしゃいます。
矯正装置を継続して装着することが難しい場合は、通常よりも治療が長引いてしまう可能性が出てきます。
治療方法によっては虫歯のリスクが高まる
特にワイヤー矯正など自分で取り外せない矯正装置を使用している場合は、虫歯へのリスクが高まります。
矯正装置周辺の歯磨きがしづらくなり、磨き残しが発生する可能性が高くなってしまうためです。
家庭での歯磨きをより丁寧にする(必ず親御さんが仕上げ磨きをする)・通院のたびに虫歯チェックをしてもらう・定期的にフッ素塗布を行うなどの対策をして、虫歯にならないように充分気を付けましょう。
小児矯正の費用の相場
小児矯正は大人の矯正と同じく、ほとんどの場合において健康保険の適用外です。
そのため費用が高額になりやすく、治療を受ける歯科医院によって価格設定が異なります。
一般的な費用相場としては、第一期治療が200,000円~400,000円(税込)程度、第二期治療では一般的なワイヤー治療を行った場合250,000円~600,000円(税込)程度となっています。
選択する治療方法によってもかかる費用は異なるため、いくつかの歯科医院でカウンセリングを受けて、費用の確認をしておきましょう。
歯科医院によっては、矯正装置代金の他に通院のたびに「調整料」などが必要となる場合があります。 費用の確認をする際には、トータルでいくらかかるのかを確認するようにしてください。
また多くの歯科医院では、第一期治療から始める場合と第二期治療から始める場合で治療費が異なっています。子どもの場合はどこからの治療になるのかを確認し、費用の見積を出してもらいましょう。
さらに第一期治療から始める場合は、第二期治療へ移行する可能性も含めてトータルでかかる費用を確認しておくことをおすすめします。
小児矯正の治療費は高額になることがほとんどですが、かかった費用は医療費控除の対象となっています。
ただし医療費控除を受けるためには、支払いをした翌年の確定申告時に管轄の税務署に書類を提出する必要がありますので、控除を受ける際には忘れずに申告しましょう。
小児矯正をやらなきゃよかったと思う理由
子どものために良かれと思って始めた小児矯正ですが、中には「やらなきゃよかった」と後悔している親御さんもいるようです。
悔いのない矯正治療を実現するためには、治療を始める前に後悔しがちなポイントを確認しておくことも大切です。
ここでは後悔しないための対策も解説していますので、併せて確認しておきましょう。
装着方法を守れないと結果が出ない
小児矯正では床矯正装置やマウスピースなど、自分で取り外しが可能な矯正装置を使用する場合があります。
そのため子どもが着けるのを嫌がったり、着けることを忘れてしまったりして装着時間が足りなくなると、思うような結果が出ない可能性が出てきてしまいます。
思うような結果が出ないと治療が更に長期に渡ることになってしまうため、子どもにとってもご家族にとっても負担が増えてしまうことになるでしょう。
計画通りに治療を進めるためにも、子どもが無理なく続けられるようにご家族がしっかりとサポートすることが必要不可欠となっています。
再治療が必要なケースがある
実は歯というものは、基本的にずっと同じ場所にとどまっていることがありません。
特に矯正治療で歯に力を加えて移動させた場合、その後何もせず放っておくと歯は元の場所に戻ろうとします。
また小児矯正で歯並びを綺麗に整えても、その後大人へと成長していく段階で後戻りしてしまう恐れがあります。
せっかく綺麗に整えた歯並びが後戻りしてしまわないためには、自宅でのケアや定期的な歯科検診が大切です。
特に小児矯正の場合、矯正治療完了後3ヶ月~6ヶ月間は後戻りしやすい期間となっています。
後戻りを防ぐためにしっかりと保定装置(リテーナー)を装着し、噛み合わせや舌の癖などの口内環境にも気を付けた生活を送るようにしましょう。
まとめ
小児矯正は大人の矯正治療とは異なり、顎の成長を適切にコントロールして永久歯の歯並びを綺麗に整える治療です。
顎の成長は大人になってからコントロールができませんので、歯並びや噛み合わせが気になる場合には小児のうちから矯正治療の開始を検討してみるとよいでしょう。
また大人になってから矯正治療を始めた場合と比べ、抜歯や顎の外科手術が必要になる可能性を減らすことができるメリットがあるほか、虫歯や歯周病の予防および全身の健康維持にも効果を期待できます。
子どもの歯並びが気になった際には、ぜひ一度小児矯正の専門医に相談してみることをおすすめします。
参考文献