みなさまは、歯並びについてどれくらいご存じでしょうか。出っ歯・八重歯・受け口と呼ばれるさまざまな歯並びがある中で、「ガチャ歯」という名称のものがあります。
ガチャ歯はその名の通り「ガチャガチャした歯」からそう呼ばれるようになり、歯同士が重なり合って、でこぼこしたような状態のことです。
今回は、ガチャ歯になってしまう原因・矯正の仕方・そのまま治療せずに放置するとどのようなリスクが起きるかを中心にお話していきます。
ガチャ歯の原因
どのようにして「歯並びが悪くなってしまったのだろう…」と自分を責めてはいませんか。もちろん、ガチャ歯は幼児期の指しゃぶりや寝ている時の口呼吸など、患者様自身の日頃の生活習慣にも影響はあるとされています。
しかし、生活習慣だけでなく他にも多くの原因があるのをこれから知っていただきたいです。ガチャ歯になる原因をこれから2つにまとめて解説していきます。
遺伝など先天的な原因
ガチャ歯の原因の1つに遺伝による理由が挙げられます。人によって背が高かったり、目の色が違ったりするように歯並びも人によって全く同じわけではありません。
歯並びは顎の大きさによって変わっていきます。顎が小さければ、その分歯が生えるスペースを十分に確保できず歯が前後や左右に重なり合ってガタガタになってしまいます。
人は上下合わせて28本の歯が生えるのが一般的であり、ほぼ同じ本数の歯を小さな顎の歯で収めるのは難しいです。
また、歯の大きさ自体も生まれつき違いがあり、これもガチャ歯になる原因だといわれています。
顎の発育不足など後天的な原因
ガチャ歯になる原因は、先ほど生まれつきによるものだと説明しました。しかし、成長する過程においても歯並びに影響するかもしれない以下のような3つの原因があります。
- 虫歯やけが
- 食事での噛む回数
- 口呼吸や鼻呼吸
虫歯やけがは乳歯である際に、抜かなければならなくなったり、抜けてしまったりするとその部分に隙間ができてしまいます。
幼児期の発達途中の歯だと、隙間を埋めようとして歪んでしまう場合があります。そして通常生えている歯に重なってしまいガチャ歯の原因となるのです。
また、食事で食べ物を噛む回数が少ないとガチャ歯になりやすいです。例えば、早食いの方に多く見られます。
噛む回数が少ないと顎の発達に影響が出てしまい、顎が小さくなってしまいます。特に、発達途中のお子様はよく噛んで食べるよう、周りの方から注意を促してください。
他には、昔と違い洋食を好む方が多いため、噛む回数が少ない傾向にあります。ピーナッツなどの硬い食べ物や、日本食を普段の生活に上手く取り入れましょう。
最後に、口呼吸や鼻呼吸もガチャ歯になってしまう原因の1つです。特に就寝中に起こりやすく、ずっと口が開くことで本来舌が口蓋にあるべきなのに下顎の方にきてしまい顎の方に力がかかります。
そのことで顎のバランスが悪くなり、顎が小さくなってしまいます。さらに、就寝中なので自分で気付けないうえ、長い時間顔や顎の筋肉が緩むので気をつけましょう。
ガチャ歯を矯正する方法
これまでガチャ歯になる原因を解説していきました。矯正と聞くと「費用や通院期間がかかりそう」と歯科医院に治療を受けに行くのをためらっている方も多いでしょう。
実は矯正方法は1つだけに限らず、多数あります。これからどうすればガチャ歯を治せるのか、主な方法を4つお伝えしていきます。歯並びでお困りの方は歯科医院でカウンセリングを受けて、検討してみましょう。
マウスピース矯正
透明な装置を上下の歯に付けて固定させて歯並びを少しずつ動かし、正常の位置に戻すのがマウスピース矯正です。
矯正をする前に歯の型取りをして患者様の歯並びに合った形を作ります。通常通院に2年ほどかかる場合が多いですが、マウスピース矯正は歯をスキャンしてどれくらいの目安で治療が終わるのか推測できます。
さらに、患者様の理想の歯に近づけるようにディスプレイを通して、説明をしていくので歯科医院と患者様との間の思い違いが少なくなり安心できる治療方法です。
歯を正常な位置に微調整して戻すのに、定期的なマウスピースの交換は必要ですが、他の矯正方法に比べて目立ちにくいのが大きな特徴です。
また、食事の時に取り外してお使いいただけるため、食べ物の汚れが詰まりにくいのも虫歯予防に効果的でしょう。
デメリットといえば、食事の時以外はマウスピースを装着しないといけないため、自己管理をきちんとできるかどうかという点です。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、歯にワイヤーとメタルブラケットを付け、力をかけて動かしたい位置に持っていく矯正方法を指します。
金属の装置を歯の表面に付けているため、話したり口を開けた時に目立ってしまったりするのが気になる方もいらっしゃるでしょう。
その場合は、必要に応じて裏側矯正や部分矯正がおすすめです。裏側矯正は、ブラケット同士が表面のワイヤー矯正よりも近くなるため比較的痛みが少ないといわれています。
また、部分矯正は歯並びを根本的に改善したい方や、手術適用の歯並びの方にはおすすめしない場合もあります。しかし、軽度なガチャ歯や出っ歯、すきっ歯の方は適応できる場合もあるでしょう。
それぞれ矯正方法は予算も異なり、部分矯正や裏側矯正の方が費用は、高くなる場合があります。そして、ワイヤー矯正は高度な技術であるため、信頼できる治療経験豊富な歯科医院を選びましょう。
セラミック矯正
セラミックとは非鉄金属材料を焼き固めたものを指し、強度も高い材質です。そして患者様の歯に、セラミックをそのまま被せるといった手法を用いているのが、セラミック矯正といわれています。
前述したマウスピース矯正などと違い、歯を動かすわけではありません。結婚式などのイベントや、人に見られる機会が多い職業の方で、矯正装置を付けずに歯並びを整えたい方が選ばれている矯正方法です。
患者様の歯を削ってセラミックを上から被せるため、土台と歯の隙間に空間ができてしまうことがあります。虫歯や歯周病にならないよう矯正後も定期的に通院が必要です。
ハイブリッド矯正
ハイブリット矯正は治療期間中、複数の矯正方法を使用して行う矯正方法です。例えば前述したマウスピース矯正とセラミック矯正を合わせた治療法があります。
マウスピース矯正では治すのが難しいガチャ歯で大きくずれた歯並びを、まずワイヤー矯正である程度治し、マウスピース矯正で対処できるところからマウスピース矯正に移行します。
ハイブリッド矯正を用いることで、治療期間やワイヤー装置を付ける期間を短縮できるのがメリットです。
ガチャ歯を矯正以外で治す方法はある?
ここまで、ガチャ歯を矯正で治す方法についてお話していきましたが、矯正は費用がかかるので他の方法で治せないのかとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
しかし、ガチャ歯など歯並びの原因は先天的なものや後天的なものである場合がほとんどです。患者様ご自身で全てを治すのは難しいかもしれません。
歯並びを軽度にするためにも、早期から矯正治療を行えば治療期間や費用も抑えられることが多いでしょう。
幼少期からの矯正といえば「床矯正(しょうきょうせい)」を勧められるかもしれません。床矯正とは取り外し可能な装置を用い、お子様の顎の骨を広げていく矯正方法です。
体が発達する時期なので、成長を利用して歯の生えるスペースを確保するのです。ちゃんと取り外しができるか不安な方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、カウンセリング時に患者様がきちんと納得のいくよう説明したり、実際の床矯正の装置を見せたりするので安心できます。ぜひ1度歯科医院に足を運んでみましょう。
ガチャ歯を放置するリスク
ガチャ歯をそのまま放置すると、虫歯以外にさまざまなリスクを起こすのをご存じでしょうか。「体の健康はお口の中から」といわれるように、ご自身の健康を大切にするためにも、以下のポイントに気をつけ、あらかじめ知っておき対処しておきましょう。
見た目がコンプレックスになる
ガチャ歯は歯が重なり合ったり、左右や前後に出ていたりする歯並びなのでコンプレックスをお持ちの方は多いです。
特に学校生活や仕事などでどうしても笑顔を作る際、歯を見せなければいけない機会では、悩ましく思う方もいらっしゃるでしょう。
お話してきたマウスピース矯正でしたら、透明の装置を日中付けておくだけです。口元がほとんど目立ちません。気になる方はぜひ検討してみてください。
虫歯・歯周病のリスクが高い
重なり合った歯は隙間が少なく、普段の歯磨きやフロスでは対処できない場合が多いです。歯磨きができなくなるとプラークと呼ばれる歯石が溜まります。
歯石が長い間付いていると、歯周病の原因にもなってしまいます。加えて、年齢を重ねるにつれ進行しやすいため、歯列矯正するのは大切です。
虫歯や歯周病を防ぐには、歯科医院では3ヶ月を目安に定期検診を受けましょう。歯科衛生士によるお口の中のスケーリングで歯石を取っていきます。
ご自身で磨ききれなかった部分を深針(ししん)という歯科器具で歯の周りの汚れを取ったり、虫歯の発見にも役立ったりします。
噛み合わせの不調による悪影響
ガチャ歯も含め、歯並びが悪いと噛み合わせにも影響が出てきます。重度の場合、顎の形が変わってしまう恐れもあります。
例えば、お口を開けようとすると痛みが出る顎関節症を引き起こし、大きな病院で診てもらわなければならないかもしれません。
口腔外科でレントゲンを撮り原因を探し、矯正だけでは治療が難しい場合は外科的な手術になる場合もあります。また、よく噛めないことにより、食べ物を消化しきれず腸の病気になる可能性もあります。
特に高齢の方は噛む力が弱くなっている上、歯並びが悪いと「噛み切る・すりつぶす」といった本来の歯の役目が果たせません。
さらに、噛む回数が少なることで脳への刺激も減少します。ガチャ歯など噛み合わせが悪いとお口の中だけでなく、体のさまざまな場所が不調になる可能性が高いです。
まとめ
お伝えしてきた通り、ガチャ歯などの歯並びは患者様自身で全てを解消するのは難しいです。幼少期からの指しゃぶりや、歯ぎしりなどは身近な方からの指摘でくせを治すことはできるかもしれません。
しかし、歯並びが悪くなった歯は矯正で正しい位置に戻すのが1番の適切な方法といえます。ガチャ歯でお悩みの方は、まず近くの信頼できる歯医者に行って、カウンセリングを受けてみましょう。
参考文献
- ガチャ歯・ガタガタ歯並びの治し方3選|医療法人真摯会まつもと歯科
- 歯並びが気になる|大阪大学歯学部附属病院
- 歯並び・咬み合わせが悪いとどうなるの|JIO一般社団法人日本橋矯正歯科協会
- 口呼吸になっていませんか?|医療法人社団桜香赤坂総合デンタルオフィス
- マウスピース矯正とは?ほかの治療法との違いやメリット、費用について詳しく解説!|医療法人甦歯会もりかわ歯科
- 裏側・舌側・リンガル矯正は痛い?メリットとデメリット|医療法人真摯会まつもと歯科
- セラミック矯正の治療の流れ|医療法人真摯会まつもと歯科
- 歯列矯正|医療法人社団添田グループ
- マウスピース型矯正治療の適応症例|OPひるま歯科矯正歯科
- 歯周病治療|医療法人徳真会グループ
- かみ合わせと身体の不調の関係|社会福祉法人恩師財団済生会
- お子さんの歯並びを治すため 床矯正という治療を勧められたら|公益社団法人神奈川県歯科医師会